空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

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Humming from Pandora’s box ~004

 女性はジンに抱きとめられたまま、一層すがるように懇願する。
それまで事務所の奥で熱心に回復魔法(ヒーリング)をかけていたラムが、垂れていた耳をぴくりと立てると女性に振り向き低く唸る。

「ラム!お客さんにそんな態度したらあかんやろ!?
…ジン、お前もいつまでお客さんを抱きしめとんねん!はよお客さんを中へ通さんかい!」

 口調はまだジンに対しての怒りが収まっていないようだが、仕事(金?)の臭いを嗅ぎつけたベルはジンへの攻撃を中断し、パタパタと応接テーブルへ向かう。

「大丈夫か?…そこのソファーへ座って。
今飲み物を出させるから…お~い、誰か!?」

 疲れ切った様子で、今にも倒れそうな女性を支えながらソファーへと移動したジンは、女性を支えるように彼女と一緒に腰を下ろすと、飲み物を頼むために事務所を見回したが、前回の依頼主(スポンサー)を治療しているラムとシェリーしか見当たらない。

「…他には…そうだ!メアリー、いるんだろメアリー!何か飲み物を出してくれないか?」

「えぇ!?…メ…メアリーがいてるんか?
また心臓に悪い登場の仕方するんちゃうやろな!?
そ…そや、ネイがいるんちゃうか?…ネイ!…ネ~イ!?」

 ジンが口にしたメアリーという名前に、ベルの表情は突然引き攣り、別の名を叫ぶ。
 ちなみにベルが呼んでいるのは、前述したシェリーの姉《ネイ・ラスティール》である。

「・・・・・ご主人様・・・お呼びですか・・・?」

「うっきゃぁ~!その出方はやめい言うたやろぉ!?」

 ベルは、背後に音もなく現れた…胸を強調するようなメイドスタイルに小さな丸眼鏡をかけた薄いピンクのセミロングの小柄な少女《メアリー》にハリセンを振り下ろす。

(スカッ…)

 ハリセンの真芯で捕らえられたはずのメアリーは微動だにしていない…が、振り下ろされたハリセンの勢いにつられたベルは、メアリーの体をすり抜け、勢いよく床に突っ伏した。
 そう、メアリーは所謂(いわゆる)幽霊であり、ベルは自分が妖精であるにもかかわらず幽霊が大の苦手なのだ。

「あら、大丈夫ですか?ベルさん…うふ♪

 透き通るほどの(実際透けているのだが)色白のメアリーは、床に転がったままあとずさるベルの方へしゃがみこむと、手を差し伸べる。

「っぎゃぁ!!お化…おばオバおば…」

「…おばさん?」

「誰がおばさんやぁ!!」

(すかっ)

 またもやベルのハリセンはメアリーをすり抜け、床の埃を舞わせるだけに終わる。

「…もういややぁ~何でこんなんがウチにおるんや?ツっこみすらでけへんやんかぁ…もうやってられへんわ…」

 ぺたりと床に座り込み、ベルは半べそ状態になってしまった。

「メアリー、お茶を淹れてくれないか?」

「あ、はい。すぐに…うふ♪

 先程ベルから受けた仕打ちの腹癒せか、ジンは彼女が玩ばれているのを一通り眺めてからメアリーにお茶を頼んだ。

「はっ!?そや、お客さんがいたんやった!」

 我に返ったベルがぱたぱたと応接テーブルへと飛ぶ。

「…で、助けてくれってどういうことや?
物取りや暴漢の類なら、街中にも兵士が見回っとるやんか?
何故わざわざこんな町外れの事務所まで…」

 女性ははだけた胸元に手をやり、呼吸を落ち着かせるとゆっくり話を始めた。

「はぁ…はぁ…え…と、何から話してよいのか…まず、私は街中ではなく、【スピリッツ・マウンテン】の麓に住む増田雅広の妻で《美沙》と申します…」

「スピリッツ?…ストーン・ゴーレムなんかを作る時に必要な鉱石が多く採れる、所謂【魂の山】っちゅうトコやな?
 しかも増田って、今話題のディジェネの科学者やないか…さっきもTVのニュースで取り上げられてたで?」

 ベルがメモ帳を取り出し、ちびた鉛筆(といっても、それすら彼女には大きすぎるのだが…)で走り書きをしながら呟く。

「ええ…夫は一日のほとんどが山へ採掘に行くか研究室にこもるかで、最近は私と顔を会わせない日もある位で…先程も私一人でしたので、町よりも近くにあるこちらへ駆け込んだ次第です…」

(ガッシャァ~ン!)

 美沙の話が途切れたと同時に奥から大きな物音がした。

「…まぁただよ。メアリー、キチンとドアを使えって言ってるじゃんか!?」

 奥の給湯室へと繋がるドアの前に、今まで何かを持っていたような体勢で立ち尽くすメアリーがいた。

「す…すみません。すぐに淹れ直してきますので。」

 幽霊であるメアリーには壁をすり抜ける能力があるのだが、メアリーの持っていたトレイはそうもいかなかったようだ…恐らく壁の向こうでコーヒーカップは無残な姿を晒しているのであろう。
 きびすを返したメアリーは、閉じたドアに向かい、すうっと消え…なかった。

(ガツッ!!)

「い痛っ!…あ、あれ?ききき…消えるの忘れてましたぁ…てへっ♪

 取り繕うように振り返ったメアリーの顔面からは鮮血が滴っている。

「幽霊が血ぃどばどば流すなや!!」

 思わず【+1ハリセン】を手に立ち上がったベルだが、唇を噛み締めハリセンを持った手をわなわなと震わせながら依頼主(スポンサー)に向き直る。
 一つも二つも抜けている彼女は、この事務所で雇われているメイドというわけではない。
以前、依頼で訪れたリドルランドの隣国にある洋館を調査している最中、廃屋のはずの屋敷内で彼女と出会ったのだが、メアリーは何故かジンを気に入ってしまい【ご主人様】と呼んで、そのまま事務所までついて(憑いて?)来てしまったのである。
 その姿で分かるように、生前はメイドをしていたらしく、どんな頼まれ事にも従順かつ献身的に働くのだが、大抵はどこかで失敗し常に生傷が絶えない…そんな彼女はいつしか皆から【ブラディー・メアリー】と呼ばれるようになった。

「だからキチンとドアを使えってば。
ほら、早く鼻血を拭いて、代わりを持ってきてくれよ?」

「は、はい…てへっ♪

 照れ隠しに肩をすくめて笑顔を作るメアリー…しかしその顔は血まみれである。

「あの…話を続けても…!?」

 一向に話を進めることのできない美沙は作り笑いで問いかけるが、額に浮かんだ血管は隠せなかった。

「あ…ああ、ゴメンゴメン。それで、一体どうしたって?」

 思うようなツっこみが出来ずに歯軋りをしているベルに代わって、ジンが聞いた。

「ええ…先程も申しましたとおり、普段は私一人でいることが多いもので、最近《ガーデニング》を始めまして、それで気を紛らわせるようにしているんです。
 今日もいつものように、お庭で雑草を取ったりお水をあげたりしていたのですが…倉庫の裏のお花にお水をあげようとしたら…」

 そこまで話すと、美沙は何かを思い出したように下を向いてしまった。

「…誰かに襲われたんやな?
よっしゃ、ウチらに任せとき!きっと犯人は捕まえたる!!
 ほなら、犯人の特徴から教えてくれんか?」

 依頼内容から儲かると判断したのか、ベルは俄然やる気を出し、美沙に詰め寄る。

「は…はぁ。え…と、突然細くて長い物が後ろから私を羽交い絞めにして…」

 鼻息を荒げているベルに気押されながらも美沙は少しずつ話を続ける。

「後ろからロープでってことは、犯人の顔を見てないっちゅうこっちゃな?…そうすると犯人探しは難航するかも知れへんな…」

 ベルが腕組みをして天井を見上げる。

「あ…いえ。犯人というか…それはまだあそこにいると思います。」

「はぁ~!?」

・・・と、ベル。

「…そ、それ?」

・・・と、ジン。

 思いもかけない美沙の言葉に、ジンとベルは顔を見合わせて固まる。
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

はみぱん | コメント:2 | トラックバック:0 |
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この記事のコメント

どうも♪
はみぱん読みました☆
初めに読んだ時の印象なんですけど、回復魔法(ヒーリング)とか、技??の名前がカッコいいですね!!れもん☆は、そういうの考えるのが苦手なので尊敬いたします(・∀・)

また来ます♪
2009-09-28 Mon 19:42 | URL | れもん☆ [ 編集]
もしかして、第1巻からお読み頂けてるんですかっ!?Σ
…ありがた過ぎるどばーっ (┬┬_┬┬)

魔法の名前は、初級程度のモノは一般的な名前を引用し、それ以上のものに関しては頭を抱えて捻り出しました(;^_^A

ま…読んで笑って頂けるのが一番だと思い、書いていますので、お気軽に読んで頂き…また感想など頂けたら嬉しいです<(_ _)>
2009-09-28 Mon 22:30 | URL | rum_bulion [ 編集]

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