空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

Humming from Pandora’s box ~016

「・・・な、何でラムがここにいるんや!?余計な経費が掛かるだけやろ!」

 ここは日本とリドルランドを繋ぐ国境の、リドルランド側である。
国境といっても、それぞれの世界を繋ぐのは直径わずか数メートルのぽっかりと開いた時空の穴であり、警備や出入国管理の為それを覆うようにビルが建てられている為、一見しただけではそこが異世界へと繋がっていると気付く人間はいないだろう。
 そこでジン達が出国の手続きを始めた時にベルが目を覚ましたのだ。

「やっと目が覚めたか…大丈夫、美沙さんには了解を取ってあるから。
それにメアリーの分も…あ、あれ?…メアリー?」

 ふとメアリーがいない事に気付き、辺りを見回すジン。

「何やて?メアリーも来てんのか?ピクニックちゃうんやぞ。」

「いや、さっきまではいたんだけど…」

 書きかけの書類の上にペンを置き、ジンはきょろきょろとメアリーを探す。

「おい、ジン。いないならいない方がええって…きっと途中で迷子にでもなったんやろ。ええからほっとき。」

 ベルに促されたジンが、書類の残りを書き始めたところへ、カウンターの奥から声が掛かった。

「あれ?【ベルモット探偵事務所】の方々じゃないですか!?お久しぶりです。」

 それまで他の書類に目を通していた男がベルに気付き、それまで事務的な対応をしていた担当者を押しのけてカウンターから顔を出した。

「おお!え~と、スティンガーやったか?…どや、元気にしとるんか?」

 ベルがぱたぱたとカウンターへと飛んで行き、男の目の前に降り立つ。

「勿論ですよ。本当にあの時はありがとうございました!…で、今日は仕事で?」

「ああ。ちょっとヤボ用でな?
急いでるねんけど…」

 それを聞いた男は、ジンの手元から書きかけの書類を取り上げると、にこやかに頷いた。

「ああ、これだけ書いてあれば大丈夫ですよ。リドル王からの連絡も入ってますので、そのまま荷物検査の方へお進み下さい。」

「チ…チーフ…」

 最初に対応していた、少々無愛想な眼鏡の男がスティンガーを見上げるが、彼はそれを無視して扉からベル達の方へ出てくると、隣の部屋に案内する。

「すみませんね。奴はまだ新人なもので…さ、どうぞこちらへ…荷物は全て出しておいて下さいね?」

「面倒やな…まあ、大したモンは持ってないからええけど…」

 ベル達はぶつぶつ言いながらも手荷物をテーブルへと並べ始めた。

「まあ、こればっかりは省略するわけにもいかないんで…あ、ジンさん。剣は置いて行って貰えますか?それと魔力抑制リングも付けて下さいね?」

「えぇ!?これはダメなのか?」

 スティンガーは笑顔のままジンの剣を受け取り、代わりに魔力を抑えるリングを手渡した。

「ええ、すみません。以前よりチェックが厳しくなりまして…緊急時ならともかく、基本的には向こうの法律を遵守しなければならないもので… 魔力抑制リングについてはいつものことですからお分かりですよね?」

「ああ…けど、今回の仕事を考えると、出来れば嵌めたくないなぁ…」

 ぶつぶつぼやきながらも、ジンは魔力抑制リングを左手に嵌める。
 魔力抑制リングとは、魔法文化の無い日本で攻撃魔法を乱用する事を抑制するための物で、リングを嵌めると魔法による攻撃力が半減してしまうのである。

「帰りに封印が解かれていると大変な事になりますので、くれぐれもそのリングは外さないようにして下さいね?
そうそう、最近はエルフの方々も向こうへ行かれるようになりましたが、ラムさんの場合は何か変装していった方が良いかと思いますが…」

 ラムはその体が毛皮で覆われており、普段から暑がって比較的露出の高い洋服しか着用しない為、ひと目で異世界の住人だと分かってしまうのだ。
 荷物を全く持っていなかったラムは、それまでくんくんと辺りの臭いを嗅ぐような仕草をしていたが、スティンガーの言葉に気付くと彼の方へ駈け寄ってくる。

ねえねえ、この前のお洋服ある!?

「あ…はいはい。あれは確か…ロッカーにお預かりしたままだと…」

 はしゃぐラムに気圧されながら、スティンガーがロッカーから何かを取り出した。
 がっつくようにそれに飛びついたラムは、それと格闘するように転げまわる。

へへ♪どう、ジン?ラムまたこれ着るぅ!

 どうやらラムは、布切れと格闘していたのではなかったようで、器用にもいつの間にかそれを着ている。
 学校の制服に白いセーターとぶかぶかのルーズソックス…その姿は紛れも無く数年前の【コギャル】であった。

「…う~ん。いいんじゃないか?」

 答えたジンの頬には、大きな冷や汗が流れていた。
 その場の誰もが違和感を抱いていたが、唯一ラムの毛並みが茶髪のギャルに見えなくもないと言えば見えなくもなかった。

「きゃう~ん!ケータイの充電が切れてるぅ~!」

 制服と一緒に預けてあった小さめのボストンバッグから電池式の携帯のおもちゃを取り出したラムが騒ぐ。

「当たり前やろ!それは元々おもちゃなんやし、ほっときゃ使えんようになるわ!」

「くぅ~んくぅ~ん…ベルぅ…」

 女子高生の格好をしたゴールデンレトリバーが、甘えたような声で上目遣いにラムに擦り寄る。

「わぁったわぁった!向こう行ったら電池替えたるから…」

「くぅ~ん…バリ3?」

いや、意味分からんわ!
どこでそんな言葉覚えてくんねん!」

 やがて所持品検査も終わり、一向は少し大きめの、がらんとした部屋へと通される。
 他の部屋と比べ天井が高いその空間には何も置かれておらず、入り口の向かいの壁に大きく近未来的なドアがあるだけだった。

「ここだけは何回来ても緊張するなぁ。」

(…ヴゥン)

 静かな機械音と共にドアがスライドし、異次元への入り口が開かれた。

「では、お気をつけて!」

 一行は必要以上に明るいスティンガーの声を後に、その中へと進んで行った。
スポンサーサイト

テーマ:自作連載ファンタジー小説 - ジャンル:小説・文学

はみぱん | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<Humming from Pandora’s box ~017 | HOME | Humming from Pandora’s box ~015>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。