空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

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FC2トラックバックテーマ  第839回「手品できますか?」

FC2トラックバックテーマ  第839回「手品できますか?」


ベル「おぉ!?なんや久しぶりやな、この空間…なになに?「手品出来ますか?」やて?ウチはそんな器用やないからなぁ…」
エリカ「はぁい!エリカちゃん、カードマジックしまキュ~♪」

 突然現れたエリカ…手には既にカードを持っている。

エリカ「では、この中から1枚ひいて、マークと数字をよ~く覚えるでキュ」

ベル「ありがちやけど…まぁええか。ほぃ、覚えたで!?」

エリカ「そうしたらこの中の好きな場所へカードを差し込んでキュださい」

 言われるままに、裏返しのカードを元の山へ戻すベル。

エリカ「アタシはベルが選んだカードは一切見てないでキュよ?…さて、あなたのひいたカードは…えてして、コレでキュ!」

 そう言って大袈裟に1枚のカードを取り出し、ベルへと向ける。

ベル「ぇ…と、ちゃうで?」

エリカ「え?そ…そんなワケないでキュ!…あれ?どこかで間違えたんでキュか…最初にああして…あそこで…裏返しの…」

 後ろを向き、ブツブツと自分のした手品を反芻し続けるエリカ…しかし突然…

エリカ「…ってか、アタシはマジシャンじゃないって言ってるじゃないでキュか!…吸血鬼なんでキュっ!!

(どーん)

ベル「お前が『手品できる』言うたんやないかっ!?ナニ逆ギレしとんねん!」

メアリー「まぁまぁ、ベルさんそんなに怒ると血圧に悪いですよ?」

ベル「お前も突然現れて、ヒトを中年管理職みたいに言うなやっ!!」

メアリー「うふ♪…じゃ、ラムさん…打ち合わせ通りにお願いしますね♪」

 ベルの突っ込みを見事にスルーしたメアリーは、バサっといつものメイド服を脱ぎ捨てると、バニーガールの服装になった。
 すると横から、縦3段に積まれた扉付きの箱をラムが運んで来る。

メアリー「この箱…タネも仕掛けもございません…うふ♪

 箱の扉を開いて、くるりと一周させるメアリー。続いて彼女がその箱に入り、上に空いた穴から顔を、2段目の箱の横からは手を出してふるふると振っている。
 続いてラムが、その箱の扉を下から順に閉じて行くが…

ラム「きゃうっ!?…メアリー、おっぱいが大きすぎて一番上の箱が閉まらないよぉ」

 一生懸命扉を閉じようとしているラムだが、メアリーの弾力ある巨乳に押し戻され、どうしても扉がしまらない。

メアリー「どうやら採寸違いをしてしまったようですねぇ…仕方ないです、このまま続けて下さい♪」

 ラムは頷くと、一度舞台脇へと戻り、キャスター付きのトレーに乗った、沢山の剣を持って来た。

ラム「だらららららぅららら・・・だんっ!」

 ドラムロールを口で表現するラム…途中軽く噛んでしまったようだが、気にせず次々と剣を箱に刺し、反対側へ貫通させて行く。
 最初は足元から…2段目の箱へ数本刺し…やがて扉が開いたままの一番上の箱にも剣が突き刺さる。

ベル「さささ…刺さっとる!リアルに刺さっとるがな!!」

 ベルの突っ込みを気にせず、全ての剣を刺し終えたラムは、一度両手で天を仰ぐように開き、そのままお辞儀をする。

ベル「いやいやいや…そんな場合ちゃうやろ!具体的に刺さっとるって!!」

 続いてラムはそのまま箱の横に立つと、2段目の箱をずるずるとずらし始めた。
 どんどん横へずれて行く箱…もう、どう考えてもメアリーの下半身が収まる隙間は無いように思えた。

(ガタン!)

ラム「きゃうんっ!?…とれちゃった」

 予定よりひっぱり過ぎた箱は、上下の箱から外れ、ガタンと音を立てて床に落ちる。

ベル「もういややぁぁ~~~~~!!!」

ラム「くうぅ~~ん、メアリー…ごめんなさいぃ」

 そう言って、ラムは元の位置に箱を戻す。
 3段の箱が元通りまっすぐに並べられると勢いよく扉が開け放たれ、笑顔のメアリーが大きく両手を振る。

ラム&メアリー『さぁぷらぁ~いず!』

ベル「サプライズどころやないやろっ!?…そんなん手品ちゃうやんか!」

メアリー「一生懸命練習しましたのに…残念です♪…あら?エリカさん、そんな所でお休みになったら、風邪をひきますよ?」

 見ると、エリカが泡を吹いて倒れていた。
 メアリーに揺り動かされ、かすかに意識を取り戻すエリカ…

エリカ「ぅ…う~ん…はっ!?.....Σヾ(;゜□゜)ノギャアアーー!!」

 目を覚ましたエリカの目に映ったのは、剣を頭に貫通させたメアリーであった。

メアリー「あら…冗談ですのに…うふ♪

 そう言って、安物のパーティー・グッズの剣を頭からすぽっと外すメアリー。

ベル「お前、最近エリカ気絶さすのに快感を覚えとるやろ…」


←久しぶりに番外編を書いてみました(*/∇\*)キャ
ちょっとでも笑えましたら…是非♪
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はみぱんTwo ~029~

「いきなりこんなトコへ連れて来られて…何か飲めってもなぁ…おい、お前は何飲む?」

「あ…俺っスか!?」

「オレンジスカッシュでございますね?かしこまりました」

 仲居が頭を下げ、メモを取り始める。

「いやいや、『オレっスカ』って…オレンジスカッシュを省略して言ったワケじゃないし…ってか、そんなメニューあんスか?」

「あんこスカッシュにご変更ですか?」

 至って真面目にメモに横線を引き、聞き直す仲居…どうやらディジェネの飲食事情が歪んで伝わっているようだった。

「いやいやいやいや…それだけは勘弁してぇ!あんこをスカッシュされた日にゃ…もう、オレンジスカッシュでいいスから」

 ベースの男は諦め顔で仲居に言う…が、仲居のボケはとどまるところを知らず…

「イイスカとは…【イイダコ・スカッシュ】の事でしょうか?」

「…もういいっス…お冷下さい」

 ようやく不毛な会話が終わり、仲居は深々と頭を下げると、廊下へと出て行った。

「はあっはっは…まあゆっくりして行くと良い。しかし、イイダコスカッシュなるもの…俺も一度試してみるとするか」

いや、ナニに食いついてるんスか!?…絶対止めた方がいいと思うっス!」

 王のセリフに、慌てて手を振り否定するベーシストの男。
 しかし元々興味のない話に口を合わせただけのようで、リドル王はすぐに別の話題を切り出す。

「しかし天晴れな演奏であった。よく来てくれたな?褒美を取らせるので、帰りには皆宝物庫から持てるだけの金塊を持って行くが良い」

「ちょ、ちょっと殿!…大雑把な性格にも程がありますぞ!」

 それまで広間の隅でその存在すら気付かせなかった老中が、慌てて口を開いた。

「よいではないか…わざわざディジェネの高校から楽器まで持って来てくれたのだ。金塊の一つや二つ…」

「…殿…」

 左目に大きな傷痕を生々しく残し、恰幅が良いが肥満ではなく…老人とは到底思えない様な隆々とした筋肉を持った隻眼の老人が、静かにリドル王を見つめる。

「元々税金をギリギリまで下げ…何とかやりくりしている我が国の大切な財宝…軽々しく浪費するようなら、如何に私とは申せ…到底黙っているわけには…」

「分かった分かった…まったくお前は冗句(ジョーク)の分からん奴だな…お前を怒らせたら命がいくつあっても足らんからな?」

 リドル王は冗談めかして身震いをするが、老中にはその冗談すら通じなかったようだ。

「このランディ・B・ウェイン…殿との果たし合いに惨敗したあの日、殿の情けに心打たれ…この命を捧げた身。何があろうと殿に銃口を向ける真似などは二度と致しません」

「つまらん話はするな…酔いが醒めてしまうではないか。まあ、お前に任せる…ただ、大切な客人なのだ。相応の褒美を用意しておけ」

 リドル王は一瞬愁いを帯びた表情を浮かべたが、すぐに杯を手にし、仲居へと向ける。

「つまらん話を聞かせてしまったな…それより、お前達の事は何と呼べば良いのだ?…レースをするのは【レーサー】、マヨネーズをかけまくる者は【マヨラー】と聞く…音楽をやっているお前達は【オンガキャー】で良いのか?」

(ぶふっ!?)

 一斉に口にしていた水を噴き出すメンバー。

「…えーと、先程からこちらでは【日本】の情報が誤って伝わっているようなので、お教えしますが…出来たら私達は【ミュージシャン】か【アーティスト】でお願いできますか?」

「それと、高級住宅街に住むマヨラーは【マヨネーゼ】でお願いしまっス!」

 どさくさに紛れて適当な事を言うベーシスト。

「そうか、すまぬな…これからも文化交流の為に色々と勉強せんといかんな。まずは【オンガク】だな…ディジェネでは音楽を封じておく鏡があると言う…とりあえずはそれを取り寄せるとしよう」

「CDの事っスね?…それなら丁度、何枚か持ってきてるので、良かったらどうぞ…」

 そう言ってステージ脇へ戻りごそごそとバッグを探ると、数枚のCDと持ってくるベーシスト。

「おお!…ありがたい。なになに…エスジーテー…むぅ、何と読むのだ?これは」

「サージェントペッパーズロンリーハーツクラブバンドっス…後はビートボーイズとキュートビートクラブバンドっスね」

 古いにしても、あまり聞いた事のない名前のバンド名ばかりを連ねたCD…慌ててキーボードの女性が別のCDをリドル王へ手渡す。

「あんた、相変わらず【まがい物】好きねぇ…殿様、こちらの方がまだ一般的かと思います」

 そう言って手渡したのは【GLAY】のCD…こちらも少々古そうだったが、前者よりはマシだと思ったのか、他のメンバーからの突っ込みはなかったようだ。

「ナニ言ってんスか!Sgt.Pepper’sLonely…もごっ!?」

 リーダー格のドラマーが、ベーシストの口を塞ぐ。

「はあっはっは…揉め事はよくないぞ?…どちらもありがたく受け取るとしよう。近いうちにリドルでもオンガキャーを集め、【ぐるうぷさうんず】でも組ませようではないか…今宵は楽しい宴になった!
 お前達、好きなだけ飲んで行くが良い…なんなら【イイダコ・スカッシュ】を作らせるが…」

 バンドのメンバーは仲居へ向け手を叩こうとするリドル王の腕を慌てて掴み、ぶんぶんと勢い良く首を振った…


←「殿様!CDプレイヤーは持ってるんですかっ!?」と、心配になった方は…

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はみぱんTwo ~028~

「戦闘を前提に…か。確かに奴らと行動を共にするのであれば、必要な物かもしれんな。その分必要なデータの収集もより多く出来るだろうが…」

《ベルモット探偵事務所》で一人になった増田雅広は、目の前に全裸で横たわるロボット《ルシータ》を見つめながら腕を組み、ずっと考えを巡らせていた。

「しかし、コンパクト化・軽量化を突き詰めて来たこの筺体に…武器を仕込む隙間など…そうだ!腹部にミサイルを装備させて…いやいや、その分腹が膨れてしまう…妊婦バージョンのルシータなど見たくはないな…むぅ、どうしたものか…」

 電源が落とされ横たわったままぴくりとも動かないルシータ…精巧に作られ、十代半ばくらいの女性にしか見えない彼女…その腹部をさすりながら呟く増田は、傍から見ると犯罪者にしか見えない。

「ん?…まてよ、何もミサイルを内蔵させるだけが脳ではないか…とすれば…ふむ…」

 胸ポケットからやおらサインペンを取り出し、増田は何やら複雑な計算式を書き始めた…そこがルシータの腹部である事にも気付かずに。

「くくっ…ふふふ…出来た、出来たぞ!これならルシータのスタイルを損なわずに戦闘モードに仕上げる事も可能だ!…はあっはっはっはぁ~~!」

 サインペンのキャップをぱちりと嵌めると、増田は満足そうな高笑いをしながら自分の書いた計算式に再び目をやる。

「よし、これで…はっ!?ルシータの身体に落書きがっ!?…一体誰がこんな事を…いや、俺か。それより一刻も早く消さなくては!…何ぃ!?これは…油性だとぉ!?

 布巾に唾を付け、ルシータの下腹部から胸にかけてを後悔の念に駆られながらゴシゴシと擦り続ける増田。


 一方リドルランドでは…

「はあっはっは…やはり宴は楽しいのぅ…ほれ、お前ももう一杯どうだ?」

 初老にして引き締まった体躯を持つリドル王が、杯とお猪口を顔をほてらせて壁へとしな垂れている女性に差し出す。

「光栄です…しかし殿様、私もう…お酒は…」

 綺麗な着物を纏ったその女性は既に胸元がはだけ、過ぎた酒に胸元まで紅潮させている

「そうか…まあ無理に飲んでも楽しくはなかろう…ではそろそろ本日の余興と行こうか!」

(ぱんぱんっ!)

そう言ってリドル王が数度手のひらを鳴らすと、何処からともなく黒子がやって来て部屋の奥の襖を素早く開け放った。
 そこには、様々な楽器と共に数人の男女が立っている。

「さぁ、ディジェネから招いたお客さんだ!…本来はプロを呼び寄せたかったのだが、俺はいつも思い立つと我慢できん性格でな?…スケジュールが合ったのは、【文化祭】なるものを控えた彼らのみであったのだ」

「あれは…以前に殿がディジェネから取り寄せた…えれきぎたぁ…?」

 それまで宴に興じていた女性達が一斉に奥の部屋を注視する…と、突然…

(♪ぎゃぁ~~ん)

「きゃっ!」

 演奏が始まった途端…その音量に思わず耳を塞ぐ女性達。
 黒いジーンズに各自赤いワンポイントを纏った彼らは、お構いなしに演奏を続け…やがて中央に立つ男性がスタンドマイクに顔を近づける。

       時計のいらないSunday’s morning     お前のkissで目覚める
       少し少し焦げ付いたham-egg         寝ぼけ眼でblunch
       二日酔いの頭に                 Orange-Juiceが沁みる
       消された昨日の記憶              空のbottleが床に転がる
       俺を見つめて微笑むお前は          何をたくらんでいるの?
       よそ行きの服がdoorを開ける         そんな約束…したっけ?

            Pony-Tailが風に靡いてふと振り返るお前の笑顔
            時の流れが止まる
            二人で聞こうぜ風の詩
            飛ばすぜこの道何処までも
            Far-away far-away ずっと遠く
            お前と駆け抜ける道は果てしない

 …演奏が終わると、儀式的ともとれる拍手がまばらに起こる。聴いていた女性の殆どは、彼らの演奏を【騒音】としか取れなかったようである。

「はあっはっは!…天晴れ天晴れ。やはりディジェネの【えれき】は良い音を出すのぉ。どうだ、お前達もこちらへ来て一杯やらぬか?」

 満足そうに手を叩いたリドル王は、演奏を終えた男女に手招きをする。

「いえ、俺達はまだ未成年っスから…」

 男がベースをスタンドに置くと、リドル王に軽く会釈をしながら言った。

「そうか…向こうでは二十歳にならんと酒は飲めないんだったな…ならジュースで構わん、折角の宴だ…楽しんで行ってくれ。
…誰か、この者たちの所望する飲み物を!」

 リドル王が手を叩くと、仲居が客人の所へやって来る。

「お飲物をお持ち致しますので、お好きな物を仰って下さい。こちらではディジェネの飲み物も多数ご用意できるかと思いますので、なんなりと…」

 演奏を終えた男女はリドル王に勧められるまま、彼の間近に座りながら小声で相談を始める…


←「殿様のシーンはいつも宴会中…どんだけ宴好き?」と呆れてしまった方は…

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はみぱんTwo ~027~

リドルランドの城下町に、ひと際目立つ煉瓦造りの建築物…それは幾つもの魔法の炎で照らし出され、幻想的に揺らめき建っていた。
門の脇には、リドル語で【ダイアナ】と書かれているが、ディジェネの観光客用なのか、横に漢字で【大穴】と書かれた看板も見受けられる。

「久しぶりに来たけど、やっぱりこの店はディナーに限るなぁ…めちゃくちゃ綺麗じゃん?」

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました…お席をご用意しておりますので、こちらへどうぞ」

 ジン達が建物を見上げながら店内へ入ると、ギャルソンらしい服を着た…【タコ】が出迎える。

「うわっ!?…タ…タ…コ?」

 深々と礼をしている巨大なタコは…黒いスーツ姿で襟からまん丸い頭を出し、スーツの両足から各2本…足を出して立っており、上半身はベストを着用してはいるものの、何故か半袖のシャツを着て袖からはうねうねと数本の足を覗かせている。
それでも一応二足歩行しているタコは…遠目には【禿げたギャルソン】に見えなくも…いや、見えないであろう。

「さ…上着などをお預かりいたしましょう」

 手慣れた手つきでメアリーのバッグなどを吸盤に吸いつけて預かって行くタコ…一同は戸惑いながらも恐る恐る携帯品などを預ける。

「ま…まぁ、この店で働いているタコなんだから…大丈夫だろう」

「せ…せやな。ここで雇ってもらうのは、相当な経験と実力が必要やて聞いた事あるしな」

 ジンとベルは小声で話していたのだが、タコには聞えてしまっていたようだった。

「申し訳ございません。…私、エド前で寿司屋をやっていた頃から、『いつかここで働きたい』 というのが夢だったのです…もしもお客様が不快な思いをされるのでしたら、担当を別の者と代わりますが…」

 タコは『またか』といった落胆の表情で、ジンを窺っている。

「え?…ぁ、いやいや、ちょっとびっくりしちゃっただけで、そんな…代わるコトなんかないってば!」

「せやせや!…エ、エド前ゆ~たらリドルランドでも【ビッグ・エド】の時代から寿司で有名やないか…余計ディナーが楽しみになってきたわ」

 ジンとベルは慌てて両手をぷるぷると振る。

「ありがとうございます!…しかし私はまだ厨房には立たせて頂けないので、寿司はお出しできないと思いますが…あ、申し遅れました、私ギャルソンの《ナナ》と申します。今宵は皆様がご満足頂けるようなひと時をご提供できるよう、お手伝いをさせて頂きます」

 交代の必要がなくなった喜びからか、ナナの表情は明るくなり、言葉数も増えたように感じた。

「…どうぞ」

 ナナの勧めで一同が席に着くと、先程からずっとナナを見つめていたメアリーが口を開く。

「ひとつお聞きしてもよろしいですかぁ?…ナナさん、足の数が足りないように見えますが…」

 メアリーのセリフに、一同はナナに注目する。
 ナナはスーツのズボンから各2本ずつ、上着の袖から各2…いや、左袖からは足が1本しか出ていない。

「ホンマや…ひぃ、ふぅ、みぃ…7本。1本足らんくないか?」

 するとナナは愁いを帯びた表情で俯き、ゆっくりと口を開く。

「そうですか…気付いてしまいましたか…私は常連さんの髪の毛が5~6本抜けていても気付かないのに…」

そらそやろっ!…髪ぃ数本と腕1本じゃ、えらい違いや!」

 思わずベルが立ち上がって突っ込みを入れた。

「…お客様が聞きたいと仰るのなら、申し上げますが…」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。これから飯食うのに、あまり重い話なら…変なコト聞いたのは謝るし…」

「いえ、聞いて下さい…実は…」

 勿体ぶったナナの口調に、話を止めようとしたジンも思わずゴクリと喉を鳴らす。
 話を振った当の本人《メアリー》は、既に興味がなくなったのか、ボールで手を洗っている。
 ちなみにその横ではラムがボールに入った水をぺろぺろと飲み始めた。

「そそ…そんなに体を乗り出してまで聞いて頂くような話じゃないです!
 ただ、少し前に予約のお客様で【タコス】をご所望の方がいらっしゃいまして…私の手違いで厨房へそれを伝え忘れていたのです。
 それで、『材料が足りない』と騒ぎになりまして…責任を感じた私が『タコならこれをお使い下さい』と…厨房にあった包丁で腕をばっさりと…きゃ~!すみません、こんな話をしてしまって…もう、壺があったら入りたいですぅ!」

「それは生まれついての習性やろっ!」

 ナナは一瞬吸盤の付いた腕で顔を覆って照れていたが、やがて左肩を慈しむような瞳で眺めながら、それをさすりだす。
後悔よりも、むしろその時の自分の行動に誇りを感じているようだった。
 それを見ていたベル達は、尊敬と憐れみの入り混じった表情でナナを見つめていた…が、やがて一つの疑問が生じる…

「ちょっ…ちょい待ちぃ…え~と…タコスは、タコスやんな?…タコ酢ちゃうやんな?」

「私もかつては板前だった女ですよ?…タコスがどういう物かは知りませんでしたが、タコ酢じゃない事はご予約の時点でちゃんと確認していました」

 ジンとベルは気まずそうな表情で顔を見合わせる。

(なぁ…タコスにタコって入ってたっけ?)

(いや…ウチの知る限り、そんなん見た事ないわ)

(彼女…もしかしてメアリーを凌ぐ天然なのか?)

(せやな…むしろ行動が熱い分、余計性質(タチ)が悪いかも知れんな)


「あっ!?お客様、ソレは飲む為のものではございません!」

 やっとラムの行動に気付いたナナが、彼女へ丁寧に説明を始める…その口調に全く嫌味はなく、ラムも素直に耳を傾けている。

(ま…タコスの件はこれ以上触れんとこ…事実を知ったら、とんでもない事になるで?)

(うんうん…そうだな。しかし、彼女…なんでここで働けているんだろうな?)

 ベルがジンの肩の上に乗り、お互いに耳打ちを続けている。

(せやなぁ…余程料理の腕前を見込まれてるんちゃうか?)

「お客様、どうなさいました?」

 ナナを見つめながら話しこんでいるジンとベルの様子に気付いた彼女は、笑顔でジン達へ問いかける。

「あ!…いやいや、何でもないねん。そそそ…それより、食事の方を進めてくれへんか?ウチらもうハラペコやねん…あ、あははっ♪」

「申し訳ありませんでした。では、早速コースの方をお持ち致します」

 そう言ってナナは一旦下がって行った。
 何とかごまかす事が出来たベル達は大きくため息をつくと、気を取り直し久しぶりのごちそうを待つことにした。


←「ギャルソンって男じゃ?」など、突っ込みどころ満載の今回は…コース料理を口にする機会が皆無な作者故です><
【選択肢⇒1.rumにディナーをごちそうする。 2.ぽちで我慢させておく。】

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はみぱんTwo ~026~

「ぅ…五月蠅い!回路の配線などを考えたら、自然とそうなっただけだ!…さぁ、ネイ…これで前回の戦闘に関してのデータは消去出来たぞ」

 顔を真っ赤にしながら早く話題を変えようと、増田がネイに声をかけた。

「そう…ありがとう。ちなみにさっきの画像って、もう見れないのかしら…」

 増田のすぐ横に顔を持って来て、ノートパソコンを覗き込みながらネイが呟く。
「なっ!?…ごっ、ゴホン…コンピュータという物は、一度消去した記憶は2度と復旧出来ん。正確には正しい言い方ではないが、ルシータのように常に常駐プログラムや何かで上書きを繰り返している場合は尚更だ」

 自分のすぐ数センチ横にネイの顔が近付き、取りみだしながら説明をする増田。

「そう…確かめたい事があったんだけど…残念ね」

「そっ…それより、私が割り込んでしまったが…何か話していたんじゃないのか?」

 赤らんだ顔を隠すようにノートパソコンへ向き直る増田。

「あ…そうだったわね。みんな、ちょっと聞いてくれるかしら?…今、ちょっと人探しをしていてね…」

 ネイはくノ一達に、現在ある吸血鬼を探しており、その吸血鬼は《ミスティ》と手を組んでディジェネに潜伏しているだろう事を説明した…するとカレンがネイにすり寄り、甘く囁く。

「それならネイ様ぁ…やはり今すぐご褒美を頂けませんか?ネイ様のご依頼…既に解決済みですわ♪」

「カレン…それはどういうことなの?」

 ネイがすり寄るカレンをやや押し戻しながら聞く。

「あぁん…私達が先程までしていた任務なんですが、『キトゥニッシュ達がなにやら騒いでいる』という噂で、その実情を調べて来たのですが…どうやら彼女達もミスティを追っていたらしいのです。
 そして、珍しくミスティが【誰か】と組んでおり、その【誰か】がディジェネのS高校と言う学校に潜伏しているらしいという事までは調べがついたらしいのですが、調査中の数人が行方を消したとか何とかで騒いでいたようで…」

「そうだったの…ありがとう。しかし、キトゥニッシュ…彼女達とバッティングすると、ちょっとやっかいになるわね…」

 事務所の片隅を見るとはなしに見つめ、呟くネイ。

「あ…けどネイ様、行方知れずになったキトゥニッシュは彼女達の中でも比較的精鋭部隊だったようで…捜索するにも、体勢を立て直すのに数日はかかるかと…」

「そう…ならこちらが先手を打たせてもらいましょう。増田さん、聞いてたわね?私もメモを残しておくけど、ベル達に今の話をしてあげてくれるかしら?
…それとそのロボットだけれど、今後ベル達と行動を共にするのなら多少は戦闘を前提とした改良を考えた方が良いかもしれないわね?
後は、一度リドルランドの殿様にお目通ししておくと良いわ…今後の行動が楽になるはずよ?ジェム達にその段取りはさせておくから、修理が出来次第そうなさい」

 ネイの言葉に増田が振り向くと、そこには既に忍び装束に着替え髪を結い直している彼女の姿があった…彼女からは静かなオーラが漂っている。

「あ…あぁ、分かった」

「それじゃあ私は一足先にディジェネへ向うから、ジェム達は…今言ったロボットの件、宜しくね」

ネイ様!…あの、御褒美…」

 髪留めを咥え、濃い紫色の長髪を櫛で綺麗に纏め終え、今にも飛び立ちそうなネイをカレンが呼び止めた。

「もう…仕方ないわね…じゃあ、少しだけよ…」

 そう言ってネイはカレンに覆いかぶさる。


ぁ…ぁん♪…きゃっ…きゃはっ…」

 突然始まった女性二人の絡み合いに、顔を真っ赤にしながら慌ててノートパソコンに向き直る増田。

「…くっ…くふぅっ!?…あっはぁ…」

 しかし、彼も男であり…やがてどうにも我慢できなくなり、そーっと後ろを振り向く。

「ご褒美って…くすぐりっこかよっ!?」

 増田の眼に映ったのは、ネイがカレンの脇などをこちょこちょとくすぐっている姿だった。

「あぅっ!…きゃはんっ♪あぁあぁ~~ネイ様ぁ~~~!」


←ネイのご褒美…「私も欲しいっ」という方は…(ぇ^^;

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はみぱんTwo ~025~

「ふぅ…ん、良く見ると可愛い顔してる…」

「ちょっとぉ…私より胸、大きくない?」

「あら?…さっきまでは黒髪だったよねぇ…?」

 最初は恐る恐るだったウララ達だが、今ではルシータを覗き込んで色々と観察している。

「黒髪は私の好みだったんだが、熱を吸収してしまうのでシルバーに変えた。髪の毛がラジエターに繋がっているため放熱効果を考えての事だ」

「へぇ~…これは、魔法じゃなくて…【カラクリ】で動いてるんですの?」

 それまでじっとルシータの関節や顔の表情の動きをまじまじと観察していた《エル》が問いかける。

「うむ…【N∞O】(エヌ・アンフィニ・オー)というCPUを3つ搭載している。1つが行動全般、1つが言語関連…そしてそれぞれのCPUを統括しているメインのCPUの3つだ。
 メモリーに関してもそれぞれのCPUに専用のメモリを用意しているが、状況に応じて比率を変える事でオーバーフローを緩和している。
 記憶装置に関しては、利用頻度の少ない情報から順に圧縮する機能が付いており、これもオーバーフロー防止のため自己で不要と判断されたデータは逐次消去出来る仕組みになっている。まあ、行動内容にもよるが、通常は1日に1回バックアップを取っておくのが賢明だな…更に筺体も軽量化と強度を同時に実現させる為、窒化させた鋼材を要所に使用する事で…」

 エルの迂闊な質問に、増田は水を得た魚のように滔々(とうとう)と喋り始め、とどまるところを知らない。

「あぅわぅ…さっきのロボの技よりも頭が痛いですぅ」

「その忌まわしき呪文を止めて下さいぃ~!」

 ウララをはじめ、くノ一達が頭を抱える…するとネイがするりと話題を別のものに変える。

「それでさっきは手首を切り落とす事が気出来なかったってわけね…ところで、さっきの戦いで彼女、ベルと…特にジンを見た時に異常な闘争心で向かってきたように見えたけど、それは何故なのかしら?」

「あぁ…それは、自身を傷つけられた記憶がメモリーに残っていて、人物認識の際にその部分がヒットしたからだろう…そうか、今後行動を共にするのだから、その部分のメモリはデリートしておかなければな…」

 そう言って増田は何かを思い出したように再びノートパソコンに向かい、何やらキー操作を始める。

どういう事!?あの…ロボット、ベルとジンとは初対面じゃなかったの?」

 ネイが背を向けてごそごそとパソコンを弄っている増田に問いかける。

「…ん?…あぁ、例の鬼押出しの一件があったろう。あの時も私の勘違いで彼女達に迷惑を掛けてしまったようだが、私も大火傷を負ってしばらく入院するはめになったわけだし、互いにもう何も言うまい…それはさておき、当時あのゴーレムにはルシータ開発へ向けての【データ取り用モニター】を取りつけてあったのだ。そういう意味ではあの二人とは初対面ではないのかもしれんが…」

「ふぅ…ん…」

 増田は説明をしながら、当時の動画映像をノートパソコンに映し出す。
 画面の片隅には当時の戦闘シーンが流れている。

!?…ちょっと待っ…」

「こら!…勝手にルシータに触るんじゃない!そこはポインティングデバイスも兼ねているんだ!!」

 突然画像がバラバラと切り替わり始め、それを見た増田がルシータの身体を弄っていたくノ一達を怒鳴りつけた。

「え?…なんですの?ボイン…ティン…ぐぅ?」

 ハトが豆鉄砲を喰らったような表情で増田へ振り向くエル…彼女の指先は、ルシータの右胸の先端をつついている。

「と、とにかくルシータの胸を弄るのは止めろ!…データがめちゃめちゃになる!」

 エルは、増田の語調に慌てて手を引っ込める。

「…つまり、ここ…で、ロボットを操作できるって事ですの?」

 淡いピンク色をしたボタン…状の物をしげしげと見つめる一同。

「常にパソコンと接続しておけるわけではないからな。…通常は両耳に仕込まれているマイクで命令を受けるようになっているが、その他にも物理的に操作する事が可能になっている。まぁ、通常は直接操作モードはオフにしているが…
 ちなみに左胸は電源ボタンになっており、そこを2秒以上深く押し続ける事で強制終了が出来る様になっている」

「なんだかエッチな操作ボタンですぅ…」

「そうよね~。何もソコで操作する事ないと思うわ」

「とんでもないエロ博士ですね」

 くノ一達が増田に冷ややかな視線を注ぐ。


←ちょっとだけ「私もルシータを強制終了してみたいっ♪」と思ってしまった方は(*ノノ)キャ

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はみぱんTwo ~024~

 《ベルモット探偵事務所》…入口にそう書かれた建物の中で、紫色の髪をざっくりと束ねてポニーテールにしているネイがいる。
 その前には片膝をついた忍び装束の女性が5人…そのうち《ジェム》と《ウララ》は、事務所の片隅でなにやらごそごそと作業をしている増田…いや、彼が修理をしているロボットをしきりに気にしていた。

「ジェム、ウララ…あのアンドロイドは…」

ルシータ!…ロボットだ

 口を開いたネイのセリフを遮り、修正を促す増田。

「ごめんなさい…あのロボット、さっきは故障をしていて暴走しちゃったみたいだけど、今は電源も落ちてるし修理中だから気にしなくても大丈夫よ?
 それに他のみんなも、そんな堅苦しい恰好はやめて同じソファーに座りましょうよ。あなた達はずっと変わらず私の仲間だけれど、今はもう【部下】ではないでしょう?」

「はい!姉さま♪」

「こら!姉さまじゃないでしょう、ウララ!あんたはわざとなのか舌っ足らずなのか昔から…もう、ちゃんとネイ様とお呼びしなさい」

 ジェムが隣にいる部隊最年少のウララを叱りつける。

「ふふ…懐かしいわね、その呼ばれ方…ウララ、少し大きくなったんじゃない?」

「はい!姉さま…あ、ネイ…様」

「ふふっ…」

 事務所に小さな笑い声が生まれた…しかし5人はその姿勢を崩さない。

「もう…あなた達がそのつもりなら、一度だけ元部隊長として命令させてもらうわね?…みんな、ソファーに腰掛けてもっとリラックスなさい」

 5人は互いの顔を見合わせてモジモジとしている…が、ウララ一人が元気の良い返事をしてソファーに身を投げ出した。
 他の4人は目を丸くしてそれを見ていたが、ネイが慈しむような表情でウララの髪を撫でやっているのを見ると、おずおずとソファーへと移動し始める。

「ネイ様ぁ…私にも♪」

「私も、言いつけ通り『ネイ様達やロボットの事』は口にしませんでした。是非、昔の様なご褒美を…」

 カレンが頬を赤らめ、潤んだ瞳でネイに縋る。

「ふふ…ダメよぉ…こんなトコで…それより、お願いばかりで悪いんだけど…ちょっと調べ物をして貰いたい事があるの…勿論、他に任務がなければ…で良いんだけど」

「姉さまのお願いなら、ウララがやるぅ!」

「ウララ!さっきからあなたばかりズルぃわよ!…私だって」

「私も!」

「私だって!」

「なら私はその間、ネイ様のお傍で…きゃっ♪」

 ウララよりもカレンの方が抜け駆けをしようとしているようだが、概ね全員がネイの依頼を受けたがっているようだった。

「…ネイと言ったか…良い部下を持っているんだな…あぁ、すまん…話に割り込んでしまって。
 だが、先に謝らせてもらえるか?…先刻は暴走したルシータが迷惑をかけたようで、すまなかった…私は暴走した彼女に一撃を喰らってしまい気絶していて、彼女がどのような事をしたのかよく分かっていなかったのだが、修理をしながら映像メモリを見ていて、どれだけ迷惑をかけたのかが分かった…」

 一同が振り返ると、増田がバツの悪そうな表情でネイの傍らに立っていた。
 ルシータの修理もひと段落が着いたのか、数本のコードがルシータとノートパソコンを繋いでいたが、静かな機械音と共にゆっくりと上体を起こした。

「!!」

 再び動き出したロボットを見るなり、ジェムとウララは慌てて耳を塞ぐ。

「そんなに身構えないでくれ…今はきちんと制御出来ているし、セーフモードで立ち上げているから彼女ができる行動はかなり制限されている。ほら…お前も謝りなさい」

 そう言うと、増田はノートパソコンのキーを軽く叩いた。

(ウィーン…)

「先程ハ、申シ訳アリマセンデシタ」

 足を投げ出し、上体だけを起こしたルシータがモーター音と共に頭を下げる。

「何だか『言わされてる』って感じだけど、ロボットだから仕方ないのかしらね…ふふっ。
 いずれにしろ、悪意があったわけではないのでしょうし、お互いもう済んだ事としましょう」

「そう言ってもらえるとありがたい」

 元々、人に頭を下げるという行為自体をあまりした事がないのだろう…増田は少し顔を赤らめ、もう一度だけ小さく頭を下げた。


←セーフモードのルシータをみて【腹話術の人形】を連想してしまった方は…

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はみぱんTwo ~023~

「な!…だ、誰だっ!?…いつの間に!」

 不意の声に二人が後ろを振り向くと、そこには漆黒のマントを羽織った長身の男性が足を組み、大きく背もたれにもたれかかっている姿があった。

「なぁに…ほんのちょっとの間さ。処女の生き血を、少しだけ吸わせてくれればそれで良い」

 長身の男は背もたれからゆっくりと体を起こすと、真っ白なグローブを嵌めたしなやかな指で、助手席にいる女性の顎を上げさせる。
 そうして、あらゆる色素が抜け落ちたような白い肌をした顔を女性へと近づけると、キラリと輝く牙を見せて小さくほほ笑んだ。
 女性も抵抗するよりむしろ…潤ませた瞳に銀髪の男性を映し、うっとりとした表情をしている。

「ちょちょっ…お前!彼女に何を!?」

 男は慌ててブレーキを踏もうとする。

「ん?…あぁ…またか。…いや、すまなかった。私が欲しているのは【処女の血】なのだ…それでは失礼する」

 そう言い終えた時には、細身の男は走行中の車からひらりと身を投げ出し、再び闇夜へと羽ばたいて行った。

(キキィ…プスン)

 停止した車内でしばし呆然としていた二人だが、男が何かに気付いたように口を開く。

「一体なんだったんだ、今の?…ん?ちょっと待って…という事は愛さん…もしかして処女じゃ…な…」

「え?…あはっ…あはははっ…なんのコトかしら?」

 女性はごまかすように作り笑顔を見せる。

「そりゃ今どき俺だってそんな事にはこだわるつもりはないけど、さっきは『男の人と食事に行った事すらない』って」

 肩を掴みしつこく詰め寄る男性に、女性はとうとう逆切れを始める。

あぁあ、はいはい!言いました!誕生日に『ちゃんこ入沢』なんて連れてく男なんて初めてよっ!わたしを太らせて食べちゃう気だったの!?まぁ別の意味で食べられそうになっちゃったけどね!あなた、明日から『ち○こエロ沢くん』って呼んであげるわ!
 あんなトコで不味いカクテルなんか飲ませて…あたしにジントニを飲ませるなら、ゴードンかせめてギルビージンをベースにしなさいって話よ!」

 先程までのしおらしさを消し去った女性は、まるで海千山千の女狐さながらの様相でまくしたて、停まった車からさっさと降り、一人歩き始めた。
 それを見ながら闇夜を滑空していた細身の男は、背に生えた羽を一度だけばさりと羽ばたかせて体勢を変え、再び体育館の上に降り立つ。


「まったく…昔は【タヌキ】や【キツネ】が人を化かすと聞いていたが…今じゃ人間同士が化かし合いをする世の中になったのか…」


←出張中に最低でも5話分のストックをと思っていたrum…帰ってみたらせいぜい2話分しか書けてなかったという彼を憐れんで頂けたら…( ┰_┰)

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はみぱんTwo ~022~

 ディジェネの街に浮かぶ、闇夜に生まれた【女神の爪痕】の様に細く、しかしどこか甘美な三日月を横切る人影が一つ…その影は、ひと際大きな建造物…とある高校の校舎の上に、音もなく降り立つ。
 その影は落ちゆく三日月を背に、すらりとした細身でまっすぐに立ち、上空で獲物を探す鷹の様な鋭い瞳で眼下を見渡している。

(ブロロロ・・・)

「あ…えと…食事は如何でした?…やま…いえ、愛さん」

「えぇ、もうおなかいっぱい。わたし、男の人と二人っきりで夕食なんか食べに行く事ってなかったし…それにお酒も強くないから…なんだかさっきから身体がポッポポッポしてきちゃって…少し酔っちゃったみたい」

 後方へと過ぎて行く街明かりを虚ろな瞳で追いながら、女性は洋服の襟首を左手で少しだけ広げ、右手でひらひらと扇ぐ仕草をしている。
 町はずれの県道を走るオープンカー…恥じらいながらの会話を手助けするかのように【テブクロ】の曲が車内を包んでいた。

「じじじじゃぁ、ハト子ちゃ…いや、愛さん!どどどど…どこかで少し休んでった方が良いんじゃ?」

 声を裏返し、汗だくで握っているハンドルに力を入れる男性。

「え~?…そうした方が良いと思う?…誠さん」

 ほんのりと頬を赤らめた女性は、少しだけ悪戯っぽく男性に問いかける…男性は背もたれにも寄り掛からず、身体を固めてただ前を見ながら大きく頷き続けていた。
 女性はタイミングを見計っていたかのように視線を前に移すと、ある建物を指差す。

「あら?…綺麗な建物…なんて書いてあるのかしら…ホ・テ・・・」

「ホテル・上四方固め!」

 男は、早く話を着けてしまわないと通り過ぎてしまうとばかりに早口でネオンを読み上げた…心なしかアクセルも先程よりも戻し気味である。

「きゃ…ホテルだったの?…けど、綺麗な建物ねぇ。…ふぅ…何だかどんどん酔いが回って来て…さっきより身体が火照って来ちゃった…」

「ほ!…ほてっ!?…ホテッ…ホテ…!!!」

 鶏のように喚き散らす男性の横で、女性はあくまで自ら『入る』とは口にせず、【男性から誘われた】という事実を手にしたいようだった。

「じゃじゃじゃ…じゃぁ、あそあそアソこで…きききゅ~け、きゅぅけぇ…」

 女性の誤算は、男性が想像以上に【オクテ】であった事だった…普段ならとっくに「じゃあ少しだけ休んで行きなよ。俺もシャワーくらいは浴びたいと思ってたところだしね」なんてセリフを聞いているはずなのだが…そしてしびれを切らした女性は最後のセリフを口にする。

「ねぇ…なにも…しない?」

(ちゅどぉ~~~ん!)

 男の中で何かが破裂した…彼は首をがっくんがっくんと大きく縦に振り、ゆっくりとアクセルから足を離し、ウインカーに手を添えた。

「そうか…何もしないのなら、少しだけ彼女を貸して頂けるかな?」

 二人だけのはずの車内…突然その声は後部座席から聞えた…


←「お前、オクテにもほどがあるだろう!」と地団駄を踏んでしまった方は…

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はみぱんTwo ~021~

「え…と、エリカ言うたな?…え~と…ウチの聞き間違いやと思うんやけど…今《ミスティ》言うたんか?
 ウチもちょっと前にディジェネの…確か【静岡】言うトコで《ミス・ティー》ってお茶を販売するキャンペンガールを見たんやけど…それとちゃうんか?」

(ばしぃっ!)

「そ、そんなワケないじゃろやんけぇ~!…うふ♪

 どこからかハリセンを取り出したメアリーが、野球のアッパースイングのような格好でベルを撃ち抜く…その体格差ゆえ、ベルは吹き飛ばされて天井に突き刺さった。

「たまには私が突っ込んでみようかと…いわゆる【攻守交替】ですねっ♪」

「なぁにが攻守交替やぁっ!?こっちは【生身の妖精】なんじゃい!…ちったぁ体格差を考えた突っ込みを入れんかいぃ!」

 天井に突き刺さった頭をずぼっと抜き、顔中傷だらけのベルが怒鳴る。

「ショートコントはおいといて、ねえエリカちゃん?…どうして《ミスティ》が絡んでいるって分かったの?彼女はとっても危険な【魔女】なのよ?…迂闊に近寄ったりしたら、それこそどうなるか…」

 ネイがエリカの前に屈みこんで、優しい口調で問いかける。

「おばちゃん、吸血鬼のステルス能力を知らないんでキュか?アタシ達、吸血鬼が闇に紛れたら…誰にも見つける事は不可能でキュ!
 あの時だって、ミスティが何かお兄ちゃんに入れ知恵してるのを窓の外から覗いてたけど、気付かれなかったんでキュよ!?」

「お…おばちゃ…」

 エリカの『おばちゃん』発言にショックを受け、茫然と立ち尽くすネイ…頭の中では『おばちゃん』が木霊している。
 しかし、確かに魔法や道具を一切使わずに【暗闇で平然と活動できる知的種族】は、【吸血鬼族】と【キトゥニッシュ族】くらいのものであろう…相当訓練を積んだ【忍者】や【くノ一】でも、この2種属には到底及ばない。
 【吸血鬼族】については説明不要かと思われるが、【キトゥニッシュ族】とは猫科に属する亜人間(デミヒューマン)で、その【暗視能力】や【身軽さ】に特筆すべき点がある。
また、吸血鬼は誰かに従う事はほぼないが、キトゥニッシュ族は吸血鬼程自尊心が高い種族ではないため【スパイ】や【暗殺者】として雇われる事も多いと聞く。

「う~ん…ミスティが絡んでるってのは、間違いやないやろな?…よしゃ、エリカ!今回の依頼…タダで請け負ったる!」

えぇっ!?さっきまでは『依頼料が払えなきゃダメ』って言ってたじゃないでキュか!」

 エリカが信じられないと言った表情でベルに詰め寄った。

「そそ…そんなに顔を近づけんなや。《ミスティ》が絡んでるなら、話は別なんや。
 エリカを連れて来た、ラムやけどな?…さっきも言うたが、ホンマは【ダークエルフ】なんやけど、到底そうは見えへんやろ?
 ラムはミスティにあんな姿にされて、家族からも見放されてもうたんや…だからウチらはミスティを探し出して、ラムを元の姿に戻してやりたいって、ずっと思っとんのや…」

 あまり他人には話したくはない事なのであろう…ベルは目を伏せながら、そっと囁くようにエリカへ話しかける。

「…そうなんでキュか…どうりでワンちゃんにしてはお話が上手だと…あ、ごめんでキュ『ラムちゃん』だったでキュね?」

 そう言ってエリカがラムのいる方を見やると、ラムは長話に疲れたのか足拭きマットの上で丸まっている。

「ん?…お話…終わったの?」

(ぐきゅるるるぅぅ~~~)

 自分が話題にされている事に気付いたラムが顔を上げて振り向いた途端、彼女のお腹から大きな音が鳴り響いた。

「きゅぅん…ラム、もう限界を通り越しちゃったみたい。ごちそう食べに行きたかったけど…もう動けないぃ…ベル、ごちそうさん達に会ったら伝えておいて…『ひと目、会いたかった』と…

 力ない言葉を言い終えると同時に、再び顔をマットの上に横たえ、静かに目を閉じるラム。

「すまんすまん!そんな芝居はせんでも…ラム、やっとごちそうにありつけるで!?…ほな、エリカも付いてき。シェリーの分が余っとるさかいな…あ、そや!増田教授もおるんやったな…どないしょ…」

 すぐさま出かけるつもりで立ち上がったベルだったが、予定外の人数にどう対処しようかと頭をひねる。

「あぁ…俺は構わん。出来る範囲でルシータのリカバリもしておきたいし、帰りに何か買って来てくれれば…あ、それと俺は大学は辞めて来たから、もう【教授】ではない」

 先程からずっと、ノートPCとルシータ本体を交互に弄りまわしていた増田が、そのまま振り向きもせず言う。

「そ…そうか?ホンマにええんやな?…なら、行ってくるわ。さ、みんな出掛けるで!」

 予定外の出費が不必要になった事に安心したベルは早口でそう言うと、パタパタと事務所の出入り口の方へと羽ばたく。

「あ…ベル。私はジェム達の帰りを待って、彼女達に下調べをするようにお願いしておくわ。後から合流するから、先に行っててくれるかしら?」

 事務所を出ようとしていたベルを、ネイが呼び止めた。

「そうか?…そらええけど、早く来ぃへんとラムがお前の分まで食べてまうで?」

「ふふ…まあ、覚悟はしておくわ」

 そう言ってほほ笑むネイを後に、ベル達はリドルの城下町にあるレストランへと出掛けて行った。


←「ネイの分は確実にラムの胃袋に収まるな」とお思いの方は…

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はみぱんTwo ~020~

「早いっ!?」

 思わずシェリーが声を上げる…が、老人はまるでワルツでも踊っているかのような足捌きで、全ての攻撃を紙一重でかわしていた。

「がぁっはっは!…お前さんも本性が出て来たようじゃな」

 シェリーは老人の動きを見続け…何かに気付く。
(おじいちゃんの動き…全ての攻撃を横や後ろに下がって避けているんじゃない!…全部攻撃する側へ踏み込みながら僅かに横へずれてるんだ!)

「ぬうっ!?…何故攻撃をして来ん!」

「【唐手に先手なし】…《剛屋道場》では教わらんかったかいの?」

 大男は更に攻撃の手数を増やす。

「何を言っている!?【先手必勝】…攻撃無くして勝利などあり得ん!」

「がぁっはっは!…そうかの?ならワシはお前さんに一度も攻撃を加えず、お前さんを倒してみようかのぉ」

 老人の言葉に、怒りの頂点を通り越した大男が、凄まじい勢いの前蹴りを繰り出す。

「ふざけるな!そんな事が出来…!?」

(フワッ)

 老人に前蹴りが炸裂したと思った刹那、大男の体が宙を舞い、そのまま壁に激突した。

「がはっ!?…な…何だ?…払い技…か?」

 大男は何が起こったかも分からず、ぶんぶんと痛む頭を振り、再び老人へ襲いかかる。
 もはや空手の型でも何でもない、怒りにまかせ凶器と化した拳を老人へ突き刺す!

「やれやれ。怒りに我を忘れたら…負けじゃよ」

 そう言って老人は、腰を落として初めて空手らしき構えをとった。

「我が剛屋流空手は世界一ぃぃ~~~!!」

「あれは、ボクが受けた技!?…けど、手を握ってない!」

(ッズッダァ~~ン!!)

 激しい音と共に、大男が道場の壁へぶち当たる。
 数秒後、しんと静まり返った道場で、老人が静かに言葉を発す。

「…ほらの。ワシはお前さんの攻撃を【受け】ただけ…ワシからは一切攻撃はしとらんよ。」

 しかし脳震盪を起こし倒れたままの大男からは、何の返事も返っては来なかった。

「くっそぉ!…バカにすんのも大概にせぇや!?」

「バカ、待て!それは使っちゃ…」

(パンッ!)

 細身の男が止める間もなく、スキンヘッドの男が構えた拳銃から渇いた音が鳴り響いた。

「銃弾白刃取りぃっ!」

 刹那、小さな影が老人の前に現れ、叫び声と共に両手で銃弾を受けとめる。

何ィ!?…そ、そんなバカな…」

 シェリーの両掌から少量の煙が立ち昇る。

「お兄さん達…事情は分からないけど、ボクの修行の邪魔をしないでくれる?」

 静かにそう言い放ったシェリーからは怒りのオーラが溢れ出ている。
そして彼女は、手の中の弾丸をポイとスキンヘッドの男の方へと投げやった。

(カラン…コロコロ…)

「っ…うわぁ~~!…お、覚えてろっ!」

 男達は腰を抜かしたまま、這うようにして道場を飛び出して行った。

「ボクは覚えてるけど…きっとあいつらはこの一方的な敗北を忘れて、また数日後にのこのこ現れるんだろうなぁ…」


←ぽち頂ければ、次回はギャグから始まります(ぇ

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