空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

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はみぱんTwo ~019~

 やがて道場から外へと続くドアが乱暴に叩かれる音がした。

(ドンドンッ…バタンッ!)

「やっぱりこっちか。おじいちゃん、今日も話し合いにきましたよ」

 そう言って靴のままズカズカと道場へ足を踏み入れて来た二人組…老人にとって【招かれざる客】であることは明白だった。

「相変わらず礼儀を知らん奴らじゃの…道場に出入りする際には【一礼】を忘れるなと言ったじゃろ。まして靴のまま上がり込むなど…」

 老人は怒りをあらわにしてつかつかと二人組へと歩み寄る。

「あぁ、これは失礼しました。まぁサングラスくらいは取らせて頂きますわ。今どきろくな照明も点いてない道場ですしねぇ…」

 黒尽くめのスーツを着て、先程から老人へ話しかけている細身のオールバックの男が、サングラスを外し鋭い視線を老人へと送る。

「エコロジーと言って欲しいのぉ…電気代もバカにならんしの」

「エロジジィの間違いだろ…」

 そう呟いたもう一人の男はスキンヘッドで、やはり同じように真黒なスーツを着ており、先程からふかしていた煙草を道場の床へ投げ捨てた。

「神聖な道場に何をしておる!」

 老人は思わず煙草を投げ捨てた男の襟首を掴む。

「おやおやぁ?暴力ですかぁ…こっちはその方が都合が良いんですがねぇ。
ま…それより今日は、正々堂々と空手の試合を申し込みに来たんですがねぇ…さぁ先生、お願いします」

 その言葉を合図に、大柄な男が道場へと入って来る…ドアをくぐる際、あまりの長身に少し身をかがめる必要があるくらいだった。

「…失礼します」

 先の2人とは異なり、短髪で筋肉質の大男は空手の道着を纏い、道場へ入る際にもそれまで履いていた下駄を脱ぎ、一礼も忘れていない。
 みしりと床をきしませながら大男は道場へ入ると、先程の煙草を拾って自分の掌で火を消し、スーツの男へと手渡した。

「お前さん、時々みかける顔じゃが…」

「ええ。この先の《剛屋道場》の者です。私は彼らの目的に興味はありませんが、『かつて』の《矢神道場》のお噂はかねがね伺っておりまして、一度お手合わせ頂ければ…と、こんな日が来るのを待ち侘びていたんですよ」

(この先の道場って、さっきおじいちゃんが言ってた【フルコン】の道場!?)

 シェリーは道場の隅で成り行きを見つめながら、考えを巡らせていた。

「あぁ、おじいちゃん。予め言っておきますが、彼に遠慮はいりませんよ?…大会で何度も優勝を経験している猛者で、今では《剛屋道場》の実質【ナンバー1】ですから…ククっ」

「この男がナンバーワンとな?まぁ、多少の礼儀は知っとるようじゃが…《剛屋道場》も堕ちたものじゃな。一時(いっとき)は実力も人数もウチと張り合っておったんじゃがのぉ…」

 老人はゆっくりと道場の中央に歩みを進めながら、遠い目で窓の外を見やっている。

バカにするな!貴様の道場なぞ、今では門下生など一人もおらんではないかっ!」

 大男は怒鳴り声と共に老人へ追い突きを繰り出す!


←「ギャグのないはみぱんなんてっ!」…と、お嘆きの方は、応援頂ければどんどん更新しちゃいます(ぅぅ…ストックがそろそろ…><

~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~
LOTTE ACUO イベント…今日が最終日のようですが、何にも出来てない気が…(;^_^A アセアセ・・・ま、いっか♪
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はみぱんTwo ~018~

 場面は再びディジェネの《矢神道場》に変わる…

「【先手なし】って…それじゃあ、こっちからは攻撃を仕掛けられないって事ぉ!?

 驚きというより、落胆の表情でシェリーが老人に詰め寄る。

「がぁっはっは!…まぁ【唐手】を覚えて、やたらと喧嘩をせんようにとの戒めの意味もあるがの。
 基本的には相手の攻撃を【受け】、その瞬間には相手が倒れておる…それがワシの唐手じゃ」

「…どういう事?やっぱりそれじゃ、相手が仕掛けて来なけりゃダメって事じゃない?」

 老人は細い瞳を更に細め…シェリーを見つめる。

「これは言葉で説明しても分からん事だし、練習を重ねて気付かせるものなんじゃが…攻撃を受けると同時に、相手の【軸】をブらす事で相手を倒すんじゃよ…逆に言えば、攻撃をして来ん相手でも【軸】がブれていれば、倒す事は可能って事じゃ」

「???」

 シェリーの頭の上には【クエスチョンマーク】が飛び交っている。

「がぁっはっは!…ではお譲ちゃん。立ってみなさい…よし、そのまましっかりと立っているんじゃぞ?」

 そう言って老人はシェリーの肩に片手を置き、下に向かって力を掛ける。

「今、ワシがお譲ちゃんの肩に手をやり下向きの力を掛けておる。軸もブれておらんから、お譲ちゃんも倒れる事はない…そうじゃな?」

「…うん」

 シェリーの答えに、老人は頷き次の言葉をかける。

「では、これでどうかの?…ふぃっ!

「きゃっ!?」

 老人が空いている方の手を自分の口の前に差し出し指を立て、ふっと息を吹きかけながら左右に数度指を振る。
 刹那、シェリーの膝がかくんと曲がり、その場にへたり込んでしまった。

「な…なに!?…おじいちゃん、今何をしたの!?まさか…魔法じゃ…ないよね?」

「がぁっはっは!ワシには魔法は使えんよ。…なぁに、お譲ちゃんの【軸】をちょいとずらしただけじゃ」

 そう言って高らかに笑いながら、シェリーの手を取り起き上がらせる老人。

「え?…だってボク、ちゃんと立ってたし…軸もぶれてなかったと思うけど…」

「ふむ…確かにお譲ちゃんの軸はブれてはおらんかったがの…ワシから見て、お譲ちゃんの軸をブらしてやったんじゃよ」

 老人の言う意味が全く理解できないシェリー…起き上がってからも納得のいかない表情で先程受けた技を頭の中で思い出そうとしている。

「がぁっはっは!…まぁ、焦らんでもよい。ここでは【体を鍛えよう】とはせず、ひとつひとつの技を【良く考え】ながら、【体に覚えさせる】ことじゃ」

「え?体は鍛えなくていいの?」

 シェリーがそれまで考え、自身で行ってきた【鍛練法】とは異なる内容に驚いて老人に聞き返す。

「うむ…お譲ちゃんは既に良い筋肉を持っておる。無理に【筋力】を付けようとすれば、今ある【良い筋肉】を潰しかねんからの。
 【力】を【力】で制すには限界がある…マンガのようにはいかんのじゃよ。」

「…ふぅ~~ん、そうなんだぁ」

 シェリーは自分の道着の袖をまくると、腕を曲げ不思議そうに力瘤を見つめていた。

「む…お譲ちゃん、ちょっと休憩のようじゃ…少し下がっていなさい」

 何故か突然老人の表情が険しくなった…

←「エロジジィなのにエロくないじゃん」とお嘆きの方は…ぽちを押して心を落ち着けて下さい^^;

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画面右上にある「LOTTE ACUO」のキャンペーンに参加してみたのですが、自分ですっかり忘れてて…思い出した時には締切まで@3日(*ノ▽ノ)イヤン♪
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はみぱんTwo ~017~

「…ぃ…ぉぃ…大丈夫か?」

「はっ!?な…何でキュか…さっきのは?…ここじゃ、ワンちゃんだけじゃなくて幽霊まで飼ってるんでキュか!?」

 数分後、意識を取り戻したエリカの第一声である。

「幽霊はともかく、ラムを【ワンちゃん】言うのは止めてんか?彼女かて元は立派な血筋のダークエルフやってんからな」

 ベルが少し愁いを帯びた表情でラムを見やった。

「そっか!吸血鬼だから、ラムの血を吸ったんだね?けど、ラムの栄養分を取っちゃダメ!」

 突然納得したような表情でラムがぽんと掌の肉球を叩いた後、不器用そうな指でバッテンを作る。

「な…何ぃ!?ラム、吸血鬼に血ぃ吸われたんか!?そらちとヤバイ話しになってくるで!?」

 ラムのセリフに、慌てたベルがパタパタと飛んで来て、彼女の首筋を確認し始める。

「あ…ワンちゃんも吸血鬼になる事を心配してるんでキュか?…それなら大丈夫でキュ。
 アタシにはまだ伝染能力がなくって…それで犬猫を探して練習してたんでキュから…」

「あぁん!?そんな話、聞いた事あらへんな…吸血鬼ってそ~ゆ~モンなんか?」

 ラムの首筋の周りのふさふさとした毛並みをかき分けながらベルが呟く…すると確かに首筋に2つの赤い点が見つかった。

「お兄ちゃんはそう言ってたでキュ…お兄ちゃんは伝染能力もあるし、ちゃんと空も飛べるし…更には吸血鬼一族でも特に稀な能力も持っていて…立派な【闇の王】の資質を持ち合わせてるお兄ちゃんなんでキュよ!」

 エリカの言葉に一層熱が入る…相当兄を慕っているだろう事は、その場にいる全員が理解した。

「ホンマにラムは大丈夫なんやろな?…で?兄思いのエリカちゃんが、何でここにおるんや?」

 ベルのセリフに、はっと思い出したような表情をするエリカ。

「そ、そうでキュ!…このワンちゃん…え~と、ラム?ちゃんが『お兄ちゃんを探してくれる』って言うから、仕方なくついて来たんでキュ…」

「きゅぅん。そうだった!…シェリーが『この子をディジェネで一人にはさせておけないから』って…ラム達でお兄ちゃんを探してあげようって」

 肩の上に乗っていたベルを摘まみ上げて懇願するラム。

「あたた…ちょっ…苦し…ラム、ちょぃ待ちぃや。ウチらはボランティアやないんやで?…この子に依頼料払えるんか?」

 苦しそうな表情で現実的な話を切り出すベル…彼女達は【その仕事】で生活をしているのだから、当然と言えば当然なのだが…

「その前にちょっと良いかしら?…ねぇラム。シェリーはどうしたの?あなたを迎えに行ったはずなのよ…話を聞いていると、入れ違いになったわけではないようだけど…」

 先程からの会話を一歩後ろで聞いていたネイだったが、《シェリー》の言葉を聞いた彼女が、ラムに問いかける。

「え~とね、シェリーは『ボク、ディジェネで一流のパティシエになる!』って…暫く戻らないって言ってたよ?」

「はぁ!?シェリーがディジェネでお菓子作りに目覚めたんか!?…ラム、ホンマに【パティシエ】言うてたんか?」

 ベルが驚きの表情でラムに詰め寄る。

「くぅ~ん…そんな問い詰められると自信ないけど…もしかしたら【ソムリエ】だったかなぁ…」

 ラムは自信なさげに耳を垂らし、思い出すように人差指を顎に当てて答えた。

「ワンちゃんの耳…どうやったら【武道家】がパティシエやソムリエに聞えるんでキュか?やっぱり頼りないでキュ」

「そう…【武道家】だったのね?…なら分からないでもないわ。シェリーがそう言うのなら、彼女の意思に任せましょう」

 ネイはちらりと安堵の表情を見せ、ソファーに腰を掛ける。

「全く、ラムと一緒に【伝言ゲーム】はでけへんな…全部食いモンの話しになってまう。
 …で、そのエリカはきっちり依頼料払えるんかいな?」

「アタイ…お金なんか持ってないでキュ!」

 シェリー達との会話では出て来なかった金銭的な話題に、少々焦りとイラつきの表情でエリカが答える。

「ほな依頼は受けられへんな…可哀想やけど、ウチらもこれでおまんま食ってんねん…せやから…」

じゃあ、ラムが一人で探してくるよ!…お兄さんとずっと離ればなれなんて、可哀想!」

「ちょ、ちょっと待てよラム。…ベルもちょっと堅すぎるんじゃん?何かうまい方法を…」

「みなさん、麦茶のお代わりは如何ですかぁ?…うふ♪

 ベルとラムの言い合いにジンも入った上にメアリーのKYさが加わり、事務所が喧騒に包まれる。

もういいでキュ!…やっぱり自分で探しまキュから、ディジェネへ帰してキュださい!
 お兄ちゃんと《ミスティ》が一緒にいるのは分かってるんでキュから、どっちかを探せばいいだけでキュからね!」

『何だって!?』

 ジン達の驚きの声がシンクロして響く。


←とうとう【リドル最凶の魔女】の名前が!?…それよりラムの聴力が心配な方は…

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はみぱんTwo ~016~

「ほれ、あそこがウチらの事務所や」

 ベルが指を指し、増田に声をかけた瞬間、事務所の電気が点いた。

「ん?電気が…あぁ、丁度ラムが帰ったのかな?」

(ッバタン!)

 ジンがそう呟いた瞬間、裏口のドアが壊れるほど勢い良く開き、黒い影が辺りをかけずり回っている。

「ジィ~~~ン!…ベェ~~~ルゥ~~~!!」

 影はやはりラムだった。
 ラムはくんくんと鼻を空へ向けてヒクつかせると、何かに気付き、まっしぐらにこちらへ向かって走って来る。

「ベェ~~ル~~。もう!ラムを置いて、ゴチソウを食べに行っちゃったのかと思ったよ!」

「そんな恐ろしい事するわけないやろ。ラムを置いて飯なんか行ってもうたら…おぉ怖っ!恐ろしくて想像もでけへんて」

 ベルは冗談交じりに、半分笑顔で身震いするジェスチャーをした。

「きゅぅん…じゃ、ご飯行こ!…ごっはっん~~♪

「はは…そうせくなや。ウチらもちょっと一仕事して来てんから、着替えくらいさせてぇな」

 ラムは残念そうに肩を落とす…直後、見知らぬ人間に気付いて怪訝そうな顔で臭いを嗅ぐ。

「あぁ…ラム。覚えてるかどうか分からんけど、そいつは以前の依頼人の家族だったヤツや。暫く事務所に住む事になったから、宜しく頼むわ」

 記憶を辿るような仕草で臭いを嗅いでいたラム。
 思い当たる臭いに、一瞬眉間に皺を寄せ低い唸り声を上げたが、踵を返すと【食事の舞い】らしきものを踊りながら意気揚々と事務所へと入って行った。

「うぅ…もごもごぉ!?…まだ開けてくれないんでキュか!?」

 ラムを先頭に、全員が事務所へと入ると…何やら大きめのスポーツバッグがもぞもぞと動いていた。

「何やソレ!?…また何かややこしい拾いモンでもしてきたんちゃうやろな?」

きゃうっ!?忘れてたぁ…ラムもお客さんがいるんだった!」

 慌てて不器用そうな手でバッグのジッパーを開けるラム。

「っぷはっ!」

 そこから勢い良く飛び出してきたのは、黒いマントにシルクハット…まるでマジシャンの様な格好をした、どうみても小学生くらいの女の子であった。

「ふぅ…疲れたでキュ!…ここがワンちゃんの言う事務所でキュか…なんだか冴えないところでキュねぇ」

 大きく伸びをした後、ラジオ体操の様に数回ストレッチをしながら辺りを見回す少女。
 口からはみ出した八重歯がキラリと光る。

「出て来るなり、御挨拶なセリフを吐く子やな…そのナリみると…手品師ってトコか?」

「はい、それじゃまずはこの中から好きなカードを1枚取って、よーく覚えておいて下さい…って、違いまキュ!!
 吸血鬼(バンパイア)一族をバカにしちゃダメでキュ~!」

何処から出したのか、手際良くカードをシャッフルして見せた少女だが、慌ててカードを投げ捨てるとベルに向かって怒りを露わにする。

「あの子、幼そうな割に【ノリ突っ込み】が出来るぞ!?…ってか、吸血鬼(バンパイア)一族ぅ?」

 一同が驚きの声を上げる…その態度に気を良くしたのか、黒衣の少女は全員を一度に見回せる位置へ移動すると、キリリとした表情でマントを翻す。
「あははっ♪…そうでキュ。アタシは【闇の王】の末裔《エリカ》ちゃんでキュッ!闇の中で生まれ、闇と共に生き…人々が古の昔から闇に恐怖と畏怖の念を抱くのは、我々の存在故…そう、それが吸血鬼(バンパイア)一族でキュー!」

 エリカは自らのセリフと決めポーズに酔いしれたかのような表情で目をつぶっている。
 それを…リドル切っての【くノ一】、二重人格の【魔法剣士】、黄金の毛並みを持つ【合成獣】、関西弁を自在に操る【妖精】達が茫然と見つめていた。

「あ…あら?…そんなに驚いてないでキュね?【闇の王】の末裔…《エリカ》ちゃんでキュよ?」

「あ…あぁ…おぅ…」

(パチ…パチパチ…)

 事務所にまばらな拍手が起こる…それは彼女の【生まれ】云々に対してではなく、彼女の切った【見栄】に対する僅かな賞賛に対するものだった。

「エリカ言うたか…そら、ディジェネでやった方が効果があると思うで?…ウチら【妖精】やなんかを相手に【吸血鬼だ】言われても…はいそうですかとしか言えへんし…」

 そう言うベルの横を、突然カタカタと音を鳴らしながら、飲み物の乗ったトレーがひとりでにテーブルに運ばれて来た。

「いらっしゃいませ。…今日はお客さんが大勢いるんですね…うふ♪

 誰もいないテーブル付近で女性の声が聞こえる。

「メアリー!消えたまま配膳するのはやめぇ言うとろうが!」

「あら…すみません。忘れてました♪」

(すぅっ)

 ベルの眼前で突然メアリーが姿を現したものだから、ベルは反射的に彼女の顔面にハリセンを打ち込む。

(バシィッ!!)

「きゃんっ!?」

 ゆっくりと首だけを回し、エリカへ向かって血まみれでほほ笑むメアリー。

「ささ…冷たいうちに麦茶でもお飲み下さいな♪」

(…にやり)

「…き…きぃぃ~~~ゃああぁぁ~~~~!!」

 泡を吹いて卒倒するエリカ。
 彼女が周りにしてほしかった反応を…奇しくも彼女自身で行ってしまったようである。


←少しでもエリカに同情して頂けたなら…

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はみぱんTwo ~015~

「じゃあ、本当にお前達は《菅平》のスパイではなかったのだな?」

「ひつこいわ!…むしろスパイは美沙や言うとろうが!こっちはヤツに散々踊らされてんねやで!?それより、そっちこそホンマに美沙の居場所は知らんのやろな…彼女をかくまってたら承知せぇへんで?」

 事件現場からベルモット探偵事務所へ帰る道中、増田とベルはずっと言い争いをしていた。

「何度言わせるんだ!私が知りたいくらいだと言って…うおぉ~~~ん!美沙ぁ~~~!

 果てなく続く言い争いの中で、増田は《美沙》の名前が出る度に号泣する。
 いつまでも事件現場にいては厄介なことになると、ベル達は早々に事務所へ戻る事にしたのだが、【言葉では言い尽くせないくらいの恨みつらみ】がある《美沙》と繋がっていた増田から彼女の居所を聞き出せればと、増田をも引き連れて来ていた。
しかし、どうやらやはり本当に増田は彼女に捨てられたようだった。

「男がいつまでもウジウジ泣くなや!ホンマに居場所は知らんようやし…もう美沙の話は聞かんから、とにかくついてき!」

「…とりあえず、ジェム達にはモンスターの奇襲だったと言っておくように指示しておいたから、私達も…あなたにも捜査の手が及ぶ事はないと思うけど、あんな危険な物を作って…あなたは何をしようとしていたの?」

 会話を諦めたベルに代わって、ネイがジンの背負っているSMチックなアンドロイドを指差しながら増田に問いかけた。

「危険な物?…ぐしゅん…彼女は【obot perating ystem n pretty girl ― ype 】…略して《ルシータ》だ。
 決して危険な物ではない。今回は実験中に熱暴走を起こしてしまったが、元はと言えば私がハード部分を…美沙がソフト部分を開発し、介護などの平和利用の目的の為…おろろぉ~~ん、美沙ぁぁ~~~~~

 自ら発した《美沙》のセリフに再び号泣する増田…呆れながらもネイが質問を続ける。

「それじゃあ、今回の一件はあくまで事故なのね?研究の結果が概ね良好ならば、ディジェネへ戻り成果を発表しようとしていたってところなのかしら?」

「ぐす…すん…いや、私はもう人間関係に疲れた。
 こっちの世界で、ルシータと共にひっそりと暮らしていこうと…ぐしゅ…」

 知らんぷりを決めようとしていたベルだったが、再び増田へパタパタと近寄ってくる。

「女に振られた揚句、玩具(おもちゃ)と一緒に隠居かいっ!?…ホンっマ、情けないのぉ!!
 研究者やったら、ドカンと一発当てて《美沙》を見返すくらいの気持ちがなくてどうすんねや!」

 俯きながらぽつぽつと言葉を口にしていた増田が、頭上に飛んでいるベルを縋るような瞳で見上げる。

「そうか…この研究が成功すれば、また美沙が戻って来てくれるかも…」

 増田はそう言うと、自分の掌を見つめた後、拳を握りしめて立ち上がった。

「どうしても美沙がええんやなぁ…(ま、こっちはその方が好都合やし)
 …んで、住むトコ無くしてもうたんなら、暫くウチの事務所を貸したるさかい、存分に研究しぃや。
 但し、タダで場所を貸すんやから、留守番くらいはしてもらうけどな!?」

「全く構わん。むしろ研究中に外出する事は殆どないからな。
 そうだ!…ルシータのベータテストもやってくれないか?環境さえ整えば、すぐに稼働が可能になるはずだから…お前達と行動を共にすれば、通常以上の経験を吸収できるだろう」

 増田の瞳には光が戻っており、ベルの話を拡張してどんどん話を進めている。
 そのやりとりを見ていたジンが、ルシータを背負ったまま訝しげな表情でベルに近づいてくる。

「ベル…どういうことだよ。ただでさえ狭い事務所で研究なんか…まして【タダで】ってベルらしくないじゃん」

「ええねや、ジン。良く考えてみぃ…一度は消えた美沙も、ヤツがまた金になりそうな研究をしとると気づいたら、きっと接触してくる。
 わざわざ美沙を探すコストを考えたら、諦めざるを得んと思っとったけど…向こうから来てくれるなら話は別や。
 ウチかて美沙には晴らしても晴らし切れん程の恨みがあるんやで!?ウチらが受けた仕打ちの分は、キッチリ耳を揃えて支払ってもらわなあかんやろ」

 ベルの耳打ちにジンは身震いした…【金を追う女同士】故の予想だろうか…いずれにせよベルの計算高さと《美沙》に対する執念にはただならぬものがあるようだった。

←ベルの執念にガクブル来ちゃった方は…

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はみぱんTwo ~014~

「がぁっはっは!やっぱり来たか、お譲ちゃん。ささ…遠慮なくお上がり」

 今どき珍しい、木製の塀で囲まれた屋敷の中庭から小柄な老人が顔をのぞかせた。

「あ!…おじいちゃん。【五つの教え】を教わりに来たよっ!とりあえず数日間は住み込みでみっちり教わるつもりだから、バシバシ鍛えてよねっ!?」

「ほぅ…住み込みとは、やる気は十分のようじゃな。幸いワシの部屋の布団はサイズが少し大きめじゃ…がふっ!?

 シェリーのアッパーが老人を捉える。

「こんなエロジジィと布団を共にする気はないから!」

「じょ…冗談じゃ。昔の門下生が使ってた部屋がいくつか空いとるから、好きなところを使うが良い」

 そう言って老人はカラリと引き戸を開け、土間へと入って行った。
 物珍しそうに周りをきょろきょろと見回しながら、シェリーも後へ続く。

「へぇ~。ディジェネにもこんな建築物があったんだぁ…ボクはビルディングが基本で、後はそれが建てられない人が小さな家に住んでるもんだと思ってたよ」

「がぁっはっは…貧乏という意味では否定はしないが、ウチは単に古いだけじゃよ。昔は門下生などが沢山おって煩いくらいじゃったが…今、ワシ一人になってからはここは広すぎるのかも知れんのぉ…」

 長い廊下を歩きながら、老人は窓の外の景色を少し寂しそうに見つめる。
 見つめた先の中庭には…きっと道着を洗う者や干している者…時折起こる門下生同士の小競り合いなどの情景を瞳の奥で思い起こしているのであろう。

「おじい…ちゃ…ん?」

「いやすまんすまん。少し湿っぽくなってしまった…歳をとると、増えすぎた思い出に耐え切れなくなる事があるんじゃよ…心配せんでいい。ただその平らな胸で少しだけ泣かせてくれぇ~~い!」

 項垂れていた老人が突然振り向き、シェリーの胸に顔をうずめる。

(ガスッ!)

【平ら】は余計だぁ~~~っ!!はぁ…はぁ…」

 シェリーの怒りの鉄拳が老人を捉えた…大きく肩で息をする彼女だが、衣服の胸の辺りが僅かに湿っていた。

「さ、ここが門下生の宿泊部屋じゃ、突当たりが道場になっておるから、落ち着いたら顔を出すといい」

「いや、変わり身が早いなぁ。って言うかボク、荷物なんかないし…生活に必要な物は後で買ってくるから、早速道場へ行きたい!」

 そう言って道場へ向かい駆け出すシェリー…老人は目を細めながら、ゆっくりと後を追う。

ひゃっほ~!おっじゃましまぁ…!?」

 勢い良く道場へ飛びこんだシェリーだったが、入った途端にピリっとした空気に動きが止まる…一瞬だけ、真剣な眼差しで大汗をかきながら稽古をする大勢の門下生の姿が…見えた…気がした。

「がぁっはっは…お譲ちゃん、道場へ入る時には【一礼】を必ずするんじゃよ。勿論、出る時も…の」

 そう言うと老人は道場へ入る一歩手前で軽く頭を下げる。
 慌ててシェリーも一度廊下へ出て、同じように頭を下げた。
 改めて道場へ足を踏み入れて辺りを見回すシェリー…壁や天井など道場全体にかなり経年劣化が進んでいるようだったが、床だけは念入りに手入れをされているのか、年数を経てむしろ風格さえ感じさせるものだった。

「ほら、これに着替えなさい」

 シェリーが振り返ると、いつの間にか老人が道着を用意していた。

「あ…ありがとう。…え~と、何処で着替えたら…」

 物陰になりそうな場所をきょろきょろと探すシェリー。

うむ!ここで構わん。…この《矢神源一郎》、お譲ちゃんの生着替え…しかと見届けよう!がふぅっ!?

「仁王立ちでどんだけエロぃセリフを吐いてるのっ!?」

 シェリーは一度廊下へ出て、引き戸をぴしゃりと閉めると、大急ぎで着替えを行う。
それから二人は十分な時間をかけて準備運動を行った。

「さて、そろそろ本題に入るとするかの」

「ぷふぅ…ボク、準備運動だけで汗だくだよぉ」

 シェリーが道着の襟をぱたぱたと扇ぎながら呟いた。

「そうか…ならそこへ座りながらで構わんので聞きなさい。まず最初に言っておく事は…」

 老人の向かいに座ったシェリーがごくりと唾を飲み込み、次の言葉を待つ。

「…【唐手に先手なし!】」

「えぇっ!?」

←「シェリー!そんなエロジジィのトコに泊まり込んじゃダメぇ~!」と思いましたら…

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はみぱんTwo ~013~

(キィィン…)

「ぇ?…切れない!?」

 クナイを繋ぐ鋼線は、リザードの首をすっぱりと切り落とすほど鋭利なものである。
だが、それは少女の華奢そうな左手首に深々とめり込んではいるが、それを切り落とすには至っていないのだ。

『きゃぁっ!?』

 バランスを崩した二人は、集落の中を流れる小川に落ちてしまった。

(ドッボーン!)

「っぷはっ!…あなたは一体…?」

「〔コンピュータが真水にさらされている可能性があります〕がはっ…がふっ…」

 ネイがSM少女の方を見ると、額に赤い盾の様な模様が浮き出ており、ネイの攻撃を受けた左手首からは時折火花が起きていた。

(パチッ…ジジ…パチッ…)

「…もしかして、あなた…」

「ほ~ほっほjふぁsdっほkjふぁsdkjfヵ;gdl…」

 慌てた様子で水から上がるSM少女…彼女が発する言葉は、既に言葉ではなくなっている。

「サイボーグ…アンドロイド…いずれにせよ、人間ではないのね?…なら…ジン!手伝ってちょうだい」

 ネイに呼ばれたジンは、いまだしゃがみ込んで地面に【の】の字を書き続けていた。

いつまでいじけとんじゃい!…ほれ、おネイ様のご指名や。行って男を見せてこんかぁい!!」

(がすっ!)

 パタパタと飛んできたベルに頭を足蹴にされ、ようやく我に帰るジン。

「はっ!?…ようやっと俺が活躍できるのか?よし…ネイ、手伝うぜっ!」

 すっくと立ち上がると、背に背負った大きな剣を抜きSM少女へと突進するジン…先程までの反動なのか、必要以上にテンションが高い。

「〔データ検索中…25…68…100%該当者《ジン・ジュニパー》…怨恨指数99.97%〕排joしまkgrはkd…」

 ジンを視界に捉えたSM少女は、何故か突然怒りの表情で彼に向って突進を始めた。

「っよっしゃぁ~~~!瞬間最大視聴率は、俺が頂きぃ~~!」

「ジン、ダメ!瞬間最大云々の意味は分からないけど…剣は効かないだろうから、魔法で!!

 ネイが叫ぶが、一歩遅く…ジンはSM少女へ向かって剣を振り下ろす。

(ッキィィ~~~ン)

 両腕を頭上でクロスして大剣を受けるSM少女…ほんの少し血しぶきの様なものが上がりジンの顔にかかった。

「ん?…血じゃない…これは、機械油??」

 ほんの刹那の油断を、SM少女は見逃さない。

(ドムッ!)

「…っがはっ!?」

 ジンの鳩尾に見事な前蹴りが決まり、後方へ吹き飛ばされる。

「ほ~っほdslkdlj…ここde会っtrjpg(^_-)v100year。覚go^死ナpsy!」

 言葉にならない言葉を発しながら、SM少女は吹き飛んだジン目がけて素早く駆け寄ると、馬なりになり拳の連打を浴びせ始める。

「ぐぅっ!?…がっ!…がふぅっ!?…なんて重い拳…」

ルシータ!?…何をしている!もう止めろっ!!」

 突然半壊した民家の脇から叫ぶ声が聞こえる…ベル達はその声の主を確認して声を上げた。

「そのチリチリ頭は、ま…増田教授ぅ!?

 そこにいたのは、以前の事件で2度ほど顔を会わせた事のある《増田雅広》であった。
 恐らく彼は今まで気絶していたのであろう…黒縁の眼鏡はグラス部分が見事に割れ、体中痣や傷だらけでようやく立っているといった状態だった。

「なんでお前がここにおるんや!?…美沙はどこやっ!!」

 ぶるんと羽を唸らせ、増田に飛び付いたベルが彼の襟首を掴み上げ、怒号を浴びせる。

「なっ!?…お前はあの時のスパイ!?いや、それよりもまずはルシータを止めなければ…彼女は熱暴走を起こしているんだ…これ以上CPUに熱を持ったら、彼女が壊れてしまう」

 そう言い終えるや否や、増田はベルを振り払い、彼がルシータと呼んだSM少女へ向かい駆け出す。

「痛ってえ…ってば!…いい加減にしろ…炎掌(パーム・ボム)!」

(ズバンッ!)

 ジンが手のひらに生んだ光の球がルシータに触れた瞬間、大きな爆発が起こり彼女が吹き飛ぶ。

「そして、行っけぇぇ…最大級の火玉(ファイア・ボール)!」

(ヴォムッ!)

 ルシータに球状の炎がぶつかり、破裂した。

「〔WARNING!!WARNING!!〕ぎゃjlksiあhdlsあぁfj…」

「火はだめだ!火は止めてくれぇ~~~!」

 ルシータに駆け寄った増田は、叫びながら火だるまになった彼女を抱きしめ、川へと飛び込む。

「ルシィィタァァ~~~!!」

←「水もダメじゃん!」と増田教授に突っ込みを入れたい方は…

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はみぱんTwo ~012~

「危ない!ネイ…上やっ!!」

(ガッシャァ~~ン)

 突然真上から落ちて来た瓦がネイのいた場所で粉々に砕け散る。
 ネイは寸でのところで後ろへ跳び、数回のバック転をして後方へ着地した。

「ベル…来たのね?ありがとう。私への直接攻撃はフェイク…むしろ予め投げ上げておいた瓦の着弾点への誘導も兼ねていたのね…その計算力、大したものだわ」

 ネイはベルの方を見やる事はなく、SM少女から瞳を逸らさずに言う。

「すまんな、遅れてもうて…ウチらはネイ程早く走れんからな。…で、あれが問題の少女ってワケかいな…うっわ、めっさSMチックやん!ま…ちょいと行って、眠ってもろとくか」

 そう言ってパタパタとSM少女の方へ飛び立ち、胸元から【眠りの粉】を取り出したベル。

「ベル!…迂闊に近寄ったら…」

 ネイがベルを呼びとめようとするが、その前にベルに気付くSM少女。

「〔データ検索中…30…70…100%該当者《ベルモット》…怨恨指数83%〕っあんたは…ベルモット!こんなところで会えるとは…超蚊音階(モスキートーン)!」

「ん?…なんや?…なんかしとるんか?」

 確実にSM少女の攻撃はベルにヒットしているはずなのだが、彼女は耳をふさぐ事もせずきょとんとしている。

「ベル!…彼女が発している、その不快な音が聞こえないの?」

 耳を押さえながらネイが叫ぶが、ベルにはさっぱり意味がわかっていないようだった。

「人間の可聴域でも、特に高周波数の部分は加齢と共に聞こえなくなってくるんですって…うふ♪

 ネイの背後に、いつの間にかメアリーがいる。

「~ん誰がおばちゃんじゃぃっ!!」

「この距離でよく私の声が聞こえましたね?…所謂地獄耳?」

 ベルは眠りの粉をハリセンに持ち替え、メアリーのところへ飛んで行きたかったが、状況を考えてそれは後回しにした。

「要は、今…ウチは音波攻撃を受けてるってこっちゃな?…ならこっちも音波で行くで!周りはみんな耳ぃ塞いどくんやで?…精神衰弱音(ヴァリ・ゾーゴン)!

(ヴァ~~~ン…ヴァ~~~ン…ヴゥ~~~ン…)

 SM少女のものとは違い、極低音がベルの口から発せられる。
 それはその音を聞く者全ての心に直接響き、大きな精神的ダメージを生じさせた。

「うぅ…生まれてきてごめんなさい」

 くノ一達が涙をこぼしながら天を仰いでいる。

「俺なんか…主役なのに全然目立たなくて…今だって全然活躍してないし…」

 ジンがしゃがみ込んで両手で地面を何度も叩く。

「私なんかいつもドジばっかりで…いっそ死んでしまいたいです…」

「お前は既に死んどるやろがぁ!…ってか、耳ぃ塞いどき言うたやろぉ!!」

 攻撃を止めたベルがメアリーにつっこみを入れる。

「高音が比較的指向性があるのに対し、低音は周りに広がりますからね…うふ♪

 元々の楽天的性質のせいか、メアリーの精神は既に回復し、冷静な状況判断をしていた。
 結局、ベルの音波攻撃を避けられたのはネイだけ…いや、SM少女も耳を塞いでいないにも関わらず微動だにしていない。

「ベル、ありがとう…もういいわ。後は私がなんとかするから」

 そう言ってネイはSM少女へと飛んだ。

(キィーン…ザッ…シュバッ…)

 接近戦でのネイの猛攻が始まる…SM少女もそれをかわしつつ、時折蹴りなどを入れるが…次第に分が悪くなってきているように見える。

「〔WARNING!!攻撃に対する処理能力を超えます〕くうっ!?」

 たまらず屋根の上から飛ぶSM少女…それを追いネイも跳躍した。

「…ごめんなさい。命までは取るつもりはないけど、過ぎたおイタの代償としてその腕…一本頂くわね」

(シュルッ)

 ハート形のクナイ2つが鋼線で繋がっているものを取り出したネイは、跳躍中のSM少女の左手首に巻き付けると2つのクナイを思い切り開いた。

←「ジン…そろそろ活躍せんかい!」とお嘆きの方は…応援ぽち願います^^;

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はみぱんTwo ~011~

ほぉ~~~っほっほっほ!

 ベル達が向かっている、異空間ゲート付近の小さな村…普段はひっそりとした小さなその集落で、女性の高らかな笑い声が木霊する。
 半壊した民家の屋根上に立ち、ラテックス素材と思われる黒いブラとタイトな超ミニを着、膝上まであるブーツ・肘まであるロンググローブを纏ったSMチックな少女がリドルランドのくノ一《ジェム》を目で追っている。

「〔リドルランド…くノ一《ジェム》…認識…10…30…70…100%〕さぁ…私の前に跪きなさい!」

 SM少女はそう叫ぶと【鴉の濡れ羽色】の様に吸い込まれるような漆黒の長髪をバッと広げ、ジェムへ向かい大きく口を開く。

「超蚊音階(モスキートーン)!」

「うあぁっ!?なに…この不快な音っ!?」

 ジェムは思わず両手で耳を押さえ、その場にうずくまってしまった。

「ほ~~っほっほっほ!そう、私の前では常にそうやって跪きなさい!」

「うぅぅ…頭が割れる様に痛っ…」

(シュッ!)

 頭を抱えて倒れこんでしまったジェムが突然その場から姿を消す。

「大丈夫?ジェム…そこで少し休んでなさい」

「…はっ!?…ネイ様!!」

 大きな木の枝の上で、ジェムはネイに抱きかかえられていた。
 ネイがふと見回すと、《ウララ》も傷だらけで別の木の根元にうずくまっている。
 そっとジェムを下ろしたネイは、凛とした表情をSM少女へ向け、跳躍する。

(…スタッ)

「確かにリドルじゃ見かけない子ね…私の仲間を傷つけた償いはしてもらうわよ?」

 SM少女と同じ屋根に降り立ったネイは、静かにそう言い放った。

「〔データ検索中…50…90%…該当者なし〕私と同じ目線で話をするなんて…あんた何者っ?」

「ふふ…【元】リドルランド・くノ一部隊【パープルローズ】部隊長《ネイ・ラスティール》…名刺代わりにどうぞ!」

(シュッ!)

 そう言ってネイはハート形の手裏剣を一枚、SM少女へ向かい投げつけた。

「〔飛来物確認…排除〕ほ~っほっほっほ…いらないわ、こんなもの!」

(パシッ)

 平手打ちのような仕草で容易にネイの手裏剣をはじくSM少女。

「さぁ、次はこちらから行くわよ?元・ネイラスティール!…超蚊音階(モスキートーン)!!」

「【元】なのは名前じゃなくて所属なんだけど…まぁ好きに呼びなさい」

 再びSM少女の口が開かれ、脳に直接響くような不快な音がネイに降り注ぐ。

「さぁ!あんたも私の前に跪くのよっ!」

「・・・残念ね。…あれはただの残像なの」

 いつの間にかSM少女の背後にネイが立ち、凍るような笑みを浮かべていた。

「私の画像処理能力を超える…ですって!?生意気な!」

(ドスッ!)

 背後にいたネイへSM少女が蹴りを繰り出した。
 それは通常の人間ではありえない様な角度で発せられた蹴りであったため、虚を突かれたネイが吹き飛ぶ。

「くっ…なに?今の蹴りは…はっ!?」

 着地したネイへ向け、足元から剥がした屋根瓦を次々に投げつけるSM少女。

(ドガッ…ドガッ…バリンッ…)

「避けられないスピードじゃないけど、ちょっと尋常じゃない肩の強さね…とても少女とは思えない」

「〔ターゲット・落下地点へ到着〕ほ~~っほっほっほ!」

 SM少女は瓦を投げるのを止め、手の甲を口元へ添えると高らかに笑いだした…その時を逃さず、攻撃へ転じようとしたネイだが…

←ネイの活躍シーンに(ノ´▽`)ノオオオオッ♪っとなった方は…

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はみぱんTwo ~010~

「ただいもぐもぐぁ…スティンもがぁ、いるぅ~?」

 ここは異空間ゲートをすっぽりと収める様に建てられた、所謂【関所】のディジェネ側である。
 大きなバッグを担いだラムが一人…口いっぱいになにかを頬張りながらそこへ入ってきた。

「手続きがありますので、そちらでお待ち下さい」

 窓口の向こうで事務的な対応をする眼鏡の男性。

やだぁ!今日は『ごちそう』が食べられるんだから、早く…モグモグ…帰るの!」

「『ごちそう』って…今、なにかものすごい勢いで食べてるじゃないですか。それよりここは飲食禁止ですよ。それと、その大きなバッグも所持品検査しますので、所定のところへ置いておいて下さい」

 ラムの我儘な言い草に、無表情だった事務員も眼鏡の位置を直しながら言い方を少々強くする。

「だめぇ!ラムのおやつ、取っちゃダメぇ~!!」

「誰も他人の食べ物なんて取りはしませんよ…いいからバッグをそこへ」

 事務員の男性と押し問答になるラム…やがて事務所奥の【職員専用ゲート】が開き《スティンガー》が顔を見せた。

「やぁラムさん!おかえりなさい…あれ?シェリーさんが迎えに行ったようなんですが、入れ違いになっちゃったんですかね?」

「ううん…モグモグ…シェリーは別の用事で、何日かは向こうになるからスティンガーに滞在日数を延ばしてもらっておいてって言われ…モグモ…たの」

 スティンガーとの会話中も、食べることをやめないラム。

「本人がいないのに、そんな事ができるわけが…あっ!

 事務員が否定する間もなくスティンガーは鼻歌交じりで書類を探すと、素早くシェリーの名前を探し当て、滞在日数の欄を
ボールペンで書き換えた。

「ちょ、ちょっとセンパ…」

 慌てる事務員に有無を言わせぬような力のある一瞥を投げ、スティンガーはすぐにラムへ向き直る。

「それじゃラムさんもすぐにお通ししますので、バッグの中身だけ見せて頂けますか?」

「いいけど、お菓子しか入ってないよ?…スティンガーも食べる?」

 そう言ってラムは大きなスポーツバッグのジッパーを十数センチ開けると、お菓子を取ろうと手を突っ込んだ。

「ゃぁ…えっち!」

 バッグの中から小さな声が漏れる。

『…えっち?』

 スティンガーと事務員は、聞こえた言葉を繰り返した。

「う…ううん。え…えっち…じゃなくて【えっちゃん】…違う。え~と…そう!『【エッサン】で安売りをしてたから…沢山お菓子を買ってきたの』って…ほら!」

 明らかに慌てた様子で、ラムがバッグから数個のお菓子を取り出し、カウンターへ置く。

「なんだ、そうだったんですか。ではお気をつけてお帰り下さい」

「ありがとう。それじゃ、またねぇ~♪」

 大きなバッグを抱えたラムは、ゲートの中へと消えて行った。

「ちょっと、スティンガー先輩!さすがに今のはマズいんじゃないですか!?明らかにバッグの中には誰かをかくまってましたし、【エッサン】って家具屋じゃなかったでしたっけ?」

「いいか、フィズ…リドルとディジェネ…治安を考えたら問題なのは【リドル】から【ディジェネ】へ危険物を持ち込む事だ。それに、《ベルモット探偵事務所》の関係者は基本的にフリーパスで構わないとのお達しが【リドルの殿様】から出ているんだよ」

 男性事務員《フィズ》は驚きの表情を見せながらも食い下がる。

「それじゃ、私達がしている仕事って一体…」

「勿論、お互いの世界に安心できる相互関係を築く事であり、危険な物や人物が行き来する事を水際で防止するのが我々の役目だ…しかし、リドル王云々以前に彼女達が危険因子だとは私には思えない。
 さっきもきっと誰かを守ろうと必死だったんだろう…なぜなら、普通ならラムさんは絶対に他人に食べ物など分け与えはしない!

「・・・それ、拳を握って力説するところですか?」

←「スティンガー…いくらなんでもユル過ぎるだろう」と、憤りを感じられた方は( ┰_┰)

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はみぱんTwo ~009~

「はぁ~~~ぅあ!ヒマやなぁ…早よラム達帰ってけぇへんかな~。もうレストランの予約、取ってもうたんやで?」

 ベルが欠伸をしながら、テーブルの上に置いてある【子供用の人形遊び】に使うようなサイズのソファーで大きく伸びをする。

「そうですねぇ…じゃ、暇つぶしに【かくれんぼ】でもしますか?…うふ♪」

「アホかぃっ!【くノ一】や【幽霊】相手にかくれんぼなんかさせられた日にゃ、死ぬまで【オニ】人生を全うするコトになってまうやろぉっ!!

 ベルがメアリーを怒鳴りつける。

「えぇ~、時間をつぶすには良い案だと思ったんですけど…」

つぶし過ぎやっ!ウチは【かくれんぼ】に一生を捧げる気は毛頭ないわぁ!!」

 ジンの横に座り、ベルとメアリーのやりとりを見ながらクスクスと笑っていたネイが、突然何かの気配に気付く。

「あぁ…あなた達ね。出てきて良いわよ」

 ネイ以外、誰一人としてその気配に気付く者はいなかった為、一同は突然のネイのセリフに意味が分からず、ぽかんと口をあけてネイを見つめる。

(シュタッ)

 事務所の中へ突如現れた忍装束の女性が二人。
 二人はネイへ向かい頭を下げ、片膝を付き微動だにしない。

「《カレン》に《ソノラ》、久しぶりね…今日は人数が少ないんじゃない?《エル》や《ウララ》達はどうしたの?」

「はい、《ウララ》は《ジェム》と一緒に戦闘中です。《エル》はリドル城に応援を依頼に…」

 ジン達は突然始まった【忍者映画】のようなやりとりに茫然としている。

「何か、事は急ぐようね…要旨だけをかいつまんで話してくれるかしら?」

「申し訳ありません、ネイ様。実は【異空間ゲート】から北へ向かった小さな町で、ディジェネの少女らしき者が暴れているのを見つけまして…別の任務から戻る途中だった私達で食い止めようとしたのですが、思いの外手強い為…応援をと思い《エル》をリドル城に向かわせたのです。
しかし、リドル城までは距離があるため…ゲートに近いこちらにいらっしゃいますネイ様にお力をお貸し頂ければ…と」

 ようやくその場の雰囲気に慣れてきたのか、ベルがパタパタと飛んできてネイの肩にとまった。

「ちょ、ちょお…待ちぃ。ネイ、お前抜け忍ちゃうんかったんか?…なんでリドルのくノ一とまだ繋がっとるんや?」

「そうねぇ…説明はまた今度でも良いかしら?…聞いての通り、面倒な事が起きてるみたいなのよね」

 腕を組み左手を軽く顎に添え、何かを考えながらネイが言う。

「わ…私達はいつまでもネイ様の部下です!…【あの時】もネイ様とご一緒させて頂いており事情も把握しております。
ネイ様が【破門】になる理由などないんです」

【破門】やて?…ウチんトコへ来た時には、シェリー連れて『忍びを抜けて来たので暫くかくまって欲しい』言うてたやないか…その割に最近はまたリドル王んトコへ出入りしとるようやし…一体どういうこっちゃ」

 《ソノラ》と呼ばれたくノ一のセリフにベルが反応し、ネイへ詰め寄る。

「え~と…正確にはどちらも正しくはないのよね…それよりベル、ここでその【ディジェネの少女】を取り押さえる事が出来たら、また昔みたいに【報奨金】が貰えるんじゃないかしら?」

(カタカタカタ…チーン♪)

突然ベルの瞳が【¥マーク】に変わる。

「そ…そか!せ、せやな!…よしゃっ、ジン!行くで!!」

「あ…あぁ…ぉぅ」

 元々いまいち話に乗れなかったのとベルのあまりの変わり身の早さに、ジンはとりあえず応えるので精いっぱいだった。

「いけません!ディジェネの者とはいえ私達くノ一ですら苦戦するような相手を、素人のあなた達でどうにかしようなんて…無茶にも程があります!」

「ふふ…ソノラ?あなた、相変わらず人の技量を見抜く力が足りないわね。ジン達はこう見えて【やる時はやる】のよ?
むしろ、私達くノ一は…所詮【女】でしょう…男性の力にはかなわないわ。
ねぇ…ん♪ジン。あなたならディジェネの少女なんてイチコロよねぇ?」

 ジンの肩にもたれかかるようにすり寄り、首筋から顎へとすらりとした指先を進めるネイ。

「ぇ…ぁ…っうんうん」

 顔を真っ赤にして直立したまま、ジンは頷く事しかできなかった。

「お前が女性にイチコロにされとるやないけ!」

 結局ソノラ達はネイだけでなく、《ベルモット探偵事務所》一行までを引き連れて事件現場へ向かうこととなった。


←「私もネイにイチコロにされたいっ♪」という方は…是非^^;

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はみぱんTwo ~008~

「エロジジ…あ、違う、おじいちゃん。やっぱりボクに【五つの教え】を教えて!」

「ふむ…お譲ちゃんは瞬発力のある筋肉を持っておるのぉ。確かに【素質】は持っていそうじゃ…じゃがお譲ちゃん…追いかけっこはもう終わりなのかいの?…向こうでなにやら取っ組み合いが始まっているようじゃが…」

 エロジ…いや、老人のセリフにはっと我に返り、振り向くとエリカとラムが絡み合ってゴロゴロと転がっていた。

「あぁっ!?…そうだった!っおじいちゃん、ちょっとだけここで待っててくれない?」

 そう言って駆け出そうとしたシェリーに老人が笑いながら声をかける。

「がぁっはっは!…お譲ちゃんがもしその気なら、この先にある【矢神道場】へ来なさい。ワシはもう少し散歩をしたら戻るからの」

 老人はそう言うと踵を返し、背中を丸めゆっくりと歩き出した。

「あの姿を見る限り、強そうには見えないんだけどなぁ…はっ!ラム!!」

 僅かの間老人の後ろ姿を目で追っていたシェリーだが、思い出したように振り返るとラムたちの方へ向かい跳躍する。

「もうやめてキュださいっ…エリカはお兄ちゃんを探さないとっ…」

「だからラム達で探してあげるから…」

 二人は組み合ったまま上になり下になり…ゴロゴロと路上を転がっている。

「ラム!…大丈夫!?」

 追いついたシェリーが二人の手前で止まり、ラムへ声をかける…が、二人ともそれに気付かず、彼女の方へ向って更に加速して転がってきた。

「えぇ!?ちょ、ちょっと止まってよ…よぉし、さっきのおじいちゃんの技を真似てみよう」

 先程の出来事を思い出しながら、重心を落とし身構えるシェリー。
 そこへラムとエリカが団子状態でまっすぐに転がってくる。

「え~と…え~と…どうだったっけ…?」

(っどっしぃ~~ん!)

 …出来るわけなどなかった…あの時シェリー自身何をされたのか分かっていなかったのだから。
 勢い良く衝突した3人はクローバーのように三方に大の字になって倒れている。
 3人とも頭の上で星や小鳥がくるくると回っていた。
 やがて気を取り戻したシェリーが、まだ朦朧としているエリカの肩を揺する。

「大丈夫?けど、もう逃げなくて良いからね。ボク達がお兄さんを探してあげる…信じて!」

「ぅ…ぅぅん。はっ!?そんなの信じられないでキュ。一度リドルに戻っちゃったら、もう簡単にはこっちに来れないじゃないでキュか!お兄ちゃんは『リドルにはもう戻らない』って言ってたんでキュ!だからアタイだけが先に戻るわけにはいかないんでキュー!」

 ジタバタするエリカを抑えつけながら、シェリーが考えを巡らせている。

「ん~~~。そうだ!いい方法があるよ。どうせこっちに来る時は密入国だったんだから、戻る時も、もう一回密入国しちゃえばいいんだよ」

「バカ言わないでキュださい!こっちへ来た時とは違って、今はそう簡単に密入国なんて出来ないでキュ!それくらいアタイだって知ってるでキュよ!?」

 エリカのセリフに、シェリーはくすっと笑う。

「大丈夫。何故かボク達は元々セキュリティーが甘いし、ラムが手伝ってくれれば…きっと大丈夫!」

 そう言ってシェリーがラムの方を振り向く…が、ラムは未だに頭上に星や鳥達をくるくるとまわしており、『う~ん、もう焼き鳥は食べられないよ』などとテンプレートなうわ言を呟いていた。

「あの子…そんなに頼りになるとは思えないんでキュが…」

 エリカがもっともな事を言うが、シェリーは胸を張り自信に満ちた表情で言葉を返す。

「大丈夫!…ラムの食欲はギガトン級なんだからっ!」

「その言葉の中に、アタイを安心させる材料が見当たらないんでキュが…」


←「エリカの台詞に同意します><」という方は…是非♪

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はみぱんTwo ~007~

 平坦な直線を駆けるだけなら、シェリーやネイにも引けを取らないラム…慌ててシェリーも逃げるエリカを追い、跳躍する。
 凄まじい勢いで人影が、ビルが、街並みが背後へと飛んで行く…エリカの俊敏性も然る事ながら、トップスピードに乗ったシェリーとラムはじりじりとその距離を縮めて行った。

「きゃっ!?」

 シェリーが着地し、次の跳躍をしようとした瞬間…建物の陰から老人がひょいと飛び出してきた。

「ダメ!間に合わないっ!!おじいちゃんゴメン…肩だけ借りるっ…っはぅっ!??

(っずったぁ~ん)

 完全に避ける事が出来ないと判断したシェリーが、老人の肩を借りて跳躍をしようとした刹那、彼女は勢い良く路上に体を叩き付けた。

「痛っったぁぁ~~!な…なに?」

 突如背中に走る激痛…一瞬の出来事に、彼女は上下の感覚もなくなる程だった。
 気付くとシェリーは右手を老人に掴まれたまま、仰向けの状態で路上に寝ころんでいた。

「今どき元気な子じゃな…しかし鬼ごっこも気をつけてやらんと…今も、ワシが手を掴んでおらんかったら…ほら、向こうの電柱へストライクってトコじゃったのぉ」

 思い起こせば確かに…激痛が走った瞬間、手を強く握られていたような気もする。
 シェリーは老人の視線の先を追い、考えを巡らせていた…その時の勢いを考えれば、確かにあの電柱へ激突していたのかもしれなかった。

「今のは…柔道…ううん。もしかして、合気道ってヤツ?」

 老人に手をひかれゆっくりと立ち上がったシェリーは、以前ベルが買ってきたディジェネの武道についての書籍を思い出し、呟いた。
 シェリーが立ってみると、老人は彼女とそう変わらない身長で、体型もほっそりとしており、お世辞にも強そうな感じには見えなかった…が、彼女は【何か】をはっきりと老人から感じていた。

「がぁっはっは!いぃ~や…どちらとも違う。唐手じゃよ…と言っても、ワシがやっとるのはかなり古いものだがの」

 顎に蓄えた真っ白な髭を弄りながら、老人は豪快に笑う。

「か…ら…て。ねぇおじいちゃん、さっきの技は?」

 シェリーは、自分の俊敏性を持ってしても、どんな技を掛けられたのかわからず…老人に…いや、老人の技に興味が沸いていたようだった。

「さっきのはのぉ…【五つの教え】の中のひとつじゃな」

「【五つの教え】!?おじいちゃん、ソレ…ボクに教えてくれない!?」

 今すべき事も忘れ、シェリーは老人の両腕を掴み、瞳を輝かせながら訴える。

「ほぉ~…お譲ちゃん、何故この老いぼれの技などに興味を持つ?」

強くなりたいのっ!…ボク、もっともっと強くなりたいんだ」

 必死で訴えるシェリーの眼差し…老人は、まるでその奥を見透かすように彼女を凝視していた。

「ほぅ…強く…か、ならすぐ近くに全国的に有名なフルコンタクトの空手を教える道場がある。そこの門を叩くがいい」

「ううん、違う。ボク、ディジェネの空手には興味ないんだ…ものの本で読んだけど、フルコンって言っても【当たったら止める】のが癖になっていて、【撃ち抜く】事が出来ないって!ボクは喧嘩が強くなりたいんじゃない。モンスターを倒す力が欲しいのっ…もうお姉ちゃんの足手まといになりたくないのっ!」

 老人は線のように細かった眼を一瞬だけ開くと、小さく頷いた。

「そうか、あんたは最近話題の【リドルランド】の住人じゃったか…もうワシの代で途絶えさせようと思っていたワシの唐手じゃが…別世界で伝わるのも面白いかもしれんの。どれ、ちょっと腕を見せてみぃ」

 そう言って老人はシェリーの腕を取り、手首…腕…肩…まるで何かを確かめる様に揉んだりさすったりし始めた。

「ぇ…何…きゃっ!?」

「ふむ…確かに良い筋肉はしとる…それに発展途上じゃが、良い乳を持っとるのぉ…がふっ!?

 シェリーの手からだんだんと上に登って行った老人の手は、最後に彼女の胸を揉んでいたのだが、数秒後、我に返ったシェリーの回し蹴りが老人に炸裂した。

「お、お譲ちゃん…もう十分強いんじゃないか?」

 打たれた場所をさすりながら老人が呟く。
 しかしシェリーには分かっていた…老人は彼女の蹴りを受ける寸前に彼女へ寄り、力が最大となるポイントよりも以前でわざと蹴りを受けていた事を…

←「羨ましいぞエロジジィ」と思った方は…^^;

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はみぱんTwo ~006~

「きゃうんっ!?…はっ…はっ…はうっ…何でラムを追いかけてくるのぉ?」

 場面は変わり、ここはディジェネ側の街中にある路地裏…建物の隙間にしゃがみ込んだ《ラム=バリオン》が息を切らしながら呟く。

「あははっ♪見ぃ~つけたっ!…さぁワンちゃん、大人しくアタシの練習台になるんでキュー!」

 頭上からふいに響いた笑い声に、ラムは咄嗟に上を見上げる。
 そこには、この季節…真夏にはあまりにも不似合いな、真黒なマントにシルクハットをかぶった、10歳を少し過ぎたくらいの女の子が建物の屋上からこちらを覗き込んでいた。

「ヒト違いだよ!…ラム、ナボナは好きだけど『世界のホームラン王』じゃないもん!」

「っ誰もあなたを見て往年のスラッガーだなんて思わないでキュっ!…そんなコトより、そこを動かないでじっとしてるんでキュよ?」

 黒衣の少女は、そう言うとひらりと体を宙に投げ出し、トントンっと両側のビルの壁を蹴りながら藤色のカールがかった長い髪をたなびかせて急降下してくる。

「きゃうっ!…まだ来るのぉ!?早くおうちに帰りたいのにぃ!」

 ラムは慌てて路地へ飛び出し、黄昏時…いや、逢魔ヶ時の街を必死で逃げ回る。
 薄暗くなった街並みの、更に影を縫うようにラムを追いかける黒衣の少女…まわりにはそこそこの人影があったが、ラムに気付く人間はいても、彼女に気付く者はいないようだった。

「きゃ?かわい~♪あれ、チャウチャウちゃう?」

「ちゃうちゃう!チャウチャウちゃうよぉ?」

「ちゃうって!あれ、絶対チャウチャウやわ。だってチャウチャウって茶っこい色しとるやろ?」

 関西弁の二人組が必死で逃げ回っているラムを指差してあれやこれや話している。
 ラムはすれ違いざまに二人組に声をかける。

「アタシ、チャウチャウじゃないから!ゴールデンレトリバー…ううん、エルフだもんっ!

 ドップラー効果に乗せたラムのセリフが、彼女達に最後まで聞こえたかどうか…しかしそんな余計なセリフを口にしたせいか、黒衣の少女が一層ラムに迫る!

「あははっ♪もう追いつくでキュっ」

 逃げまどうラムの数m手前で大きく地面を蹴った黒衣の少女。
その直後、ラムとの距離はぐんと縮まり、にやりと笑う少女の八重歯がキラリと光った。

「うきゃんっ!?」

 ラムに追いついた黒衣の少女は、彼女の首筋に勢いよく八重歯を立てる。

「痛ったぁ~~~い!ジン~、ベルぅぅ~~~!!」

 夕闇せまる街に、ラムの叫び声が木霊した。

「ラムっ!?…どこにいるのっ!?」

 どこからか聞きなれた声がラムを呼ぶ…

「その声は…シェリー!?きゅう~~ん、シェリー!助けてぇ~」

 その間にも黒衣の少女はラムの首筋に噛み付いたまま、あふれて来る血を啜っている。

「何をしてるのっ!?ラムを離せっ!!」

 別の路地から素早く現れた細身の影…シェリーであった。
 八重歯をラムから離し、振り向いた黒衣の少女がシェリーに気付くと残念そうに呟く。

「ちぇっ…なんだ、飼い主さんがいたんでキュか…なら一時退散でキュ」

 そう言うと、身軽にひらりとラムから離れる黒衣の少女。

「ちょっとまってよ!…あんた、エボルでしょう!?滞在証明を見せなさい!」

 身を翻し、ビルの陰へ向かい跳躍をしようとしている少女をシェリーが呼び止める。
 【エボル】とはリドルランド側の住人の事を指し、それらが大手を振って双方の世界を行き来するには【滞在証明】が必要なのである。
 もし、それを持っていないということは、密入国者か【異次元戦争時代】のどさくさに紛れて入国したまま滞在手続きをしていない者か…いずれにせよ不法滞在者とみなされ、捕まれば強制送還されてしまうのだ。
 更にディジェネ側へ危険を及ぼす存在であることが認められると【懸賞金】を掛けられて、所謂「お尋ね者」になって警察は勿論、ハンター達にも追われる事になる。

「そんな物、持ってないでキュっ!だけどアタイはお兄ちゃんを見つけるまでは、リドルランドに戻されるワケにはいかないんでキュよっ!」

 じりじりと後ずさりながら、黒衣の少女が言い放つ。

「くぅ~ん。お兄ちゃんと離ればなれになっちゃったの?ラム達探偵屋さんなんだけど、お手伝いしようか?」

 少女の言葉に反応したラムが、彼女の方へ一歩足を踏み出して問いかけた。

「ぇ…ぁ…っ…ううん。そんな言葉に騙されるエリカちゃんじゃないでキュ!それじゃ、バイバイキュゥ~」

「あぁっ!逃げたっ!!…ラム、追いかけるよっ?」

 《エリカ》と名乗った黒衣の少女を追って、シェリーがいち早く駆け出す。

「きゅぅ~ん…けど、あの子…お兄ちゃんを探してるって…」

 ラムのセリフにシェリーは足を止めた。
兄弟姉妹の話題には彼女もまた敏感だからであろう…しかし、大きくかぶりを振り、ラムの肩に手を置くシェリー。

「いい?ラム。あの子はラムを襲ってたんだよ?あのままディジェネに放って帰るわけには行かないでしょ?そうしたら、また別の人を襲うかもしれない…どっちにしろすぐに捕まっちゃう。
 だったら、一度リドルへ帰してあげて、ボク達でお兄さんを探してあげようよ」

 それまで力なく耳を垂らしていたラムだったが、シェリーのセリフを聞き終えると、耳としっぽをぴんと立てて大きく頷いた。
 しっぽを立てた事でスカートがめくれ上がってしまったが、彼女には全く気にする気配はない。

「そうだね!…じゃ、早く追いかけよう!」

 言い終える前にラムは四足歩行モードで脱兎の如く駆け出していた。

←今日のラムは何色でしょう?
(いや、クリックしても答えが分かるわけではありませんが、是非…(;^_^A アセアセ

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はみぱんTwo ~005~

「だからぁ~!もっとちゃんと下調べしてから依頼を請け負ってって言ってるの!ボクもお姉ちゃんも大変な事になるトコだったんだよっ?」

「だから、それは悪かったって言っとるやんか!…けどウチの事務所は元々護衛やモンスター退治がメインでやってきとるんやから、どんな依頼でも多少の戦闘は覚悟しときっていつも言うとろうが」

 失意のジンが風呂からあがると、シェリーとベルの言い争いが聞こえて来る。
 確かに、ここ【リドルランド】と異世界【ディジェネ】を繋ぐ異空間ゲート付近にベルが事務所を構えたのは、数年前…何らかの原因でゲートが突然開いた直後に起きた【異空間戦争】を収束させる事に現金の臭いを嗅ぎ取ったからである。
 ちなみにベル達の住む【リドルランド】は、所謂「剣と魔法の世界」であり、異空間ゲートの繋がった先…彼女達が【ディジェネ】と呼んでいる世界とは…我々の住む「日本のとある場所」なのだ。

「そりゃあそうかもしれないけどさ!…ベルも最初は『今回の仕事はきっと悪戯好きのコボルド達の悪戯やから、ちょいと懲らしめてくればOKや』なんて言ってたじゃないか!」

 シェリーが更にベルへ食ってかかる。

「そらそうやけどやな…だったらシェリー、お前も多少の事に動じないくらい強くなりぃや」

 ベルの言葉には深い意味はなかった…だが、シェリーにとっては自身の胸にぐさりと刺さる言葉だった。

「うぅ…ボク…ボク…強くなるモンっ!もっともっと強くなって、お姉ちゃんの足手まといにならないように…お姉ちゃんと一緒にくノ一が出来る様にぃ…」

 シェリーはソファーへ顔を伏せてしまい、最後の方のセリフは聞き取ることができなかった。それを見たジンがベルをたしなめる。

「ベル…そんな言い方することないじゃん。シェリーはネイに追いつこうと必死で頑張ってるんだから」

「あ…あぁ…すまんかった。ウチもちょっと熱くなってもうたな…」

 テーブルにしゃがみ込み、羽と耳をしゅんとうなだれる様に垂らすベル…事務所の空気が重くなった瞬間…

「さぁ!お風呂上がりにキンキンに冷えた麦茶は如何ですかぁ?…うふっ♪

 場の空気をちっとも読まず、むしろその空気を弾き飛ばすかのようにすっとんきょーな登場の仕方をするメアリー。
手にしたトレーには麦茶であろうモノが入ったポットと、氷らしきものが落とされた数個のグラスが乗っている。

「さ…どうぞ♪」

 メアリーはテーブルにトレーを置くと、ポットからグラスへと麦茶を注ごうとしている。
 一度は麦茶をかぶる羽目になるものと思い身構えていた一同は、ほっと胸をなでおろすとソファーへと座った。

(こぽこぽこぽ…しゅううぅぅぅ~~~)

 コップへと麦茶が注がれた瞬間、なにやら白い霧状の気体がグラスからあふれ出し、テーブルへ広がる。

「なんやこれ!…もしかして氷やなくてドライアイスかぃっ!?」

「えぇ♪今夜も熱帯夜になりそうなので…より冷たい方が良いかとドライアイスを用意してみましたぁ。ちょっとはしたないですが、私も一口…ぱくっ♪」

 そう言ってメアリーがドライアイスの欠片を一つ、自分の小さな口へと放り込んだ。

「きゃっ!冷たっ…いぇ、熱っ…むしろ、痛たたたた!し…舌に、舌に張り付いて…離れまひぇん…」

(べりっ!)

無理に舌からドライアイスを引き剥がしたメアリー。口から血を垂らし、今度は指に張り付いたそれを引き剥がそうと必死になっているが、触れる場所全てがドライアイスにくっついて離れない。
やがて血まみれになり、ドライアイスの煙の中に佇むメアリーは、まさにお化け屋敷のワンシーンのようであった。

あ…ありがとう、十分涼しくなったよ、メアリー

 少々顔をひきつらせながらも、グラスのドライアイスを捨てて改めて麦茶を注いだジンが呟く。

「それにしても、少し遅すぎますねぇ…ラムさん」

 ジンのセリフに満足したかのように、メアリーは既に何事もなかったかのように麦茶を飲んでいる。

「あぁ…せやなぁ、今日はごちそうや言うて喜んでたから早よ帰ってくると思ってたんやけど…ラムのことやから、もしかしたら迷子になっとるかも知れんな…ジン、ちょっと見て来てくれへんか?」

「えぇ!俺が!?…風呂上がりでまだ髪も乾かしてないし…もうちょっと待ってくれよ」

 そう言ってジンはトランクス一枚の姿でタオルを頭へ被せるとガシャガシャとかきむしる様に手を動かした。

「あ…だったらボクが行くからジンはゆっくりしててよ。ボクも丁度良い運動になるし…ね!」

 落ち込んだ気持ちを紛らわせるつもりもあったのだろう…シェリーは既に出かけるつもりで、法被の様な上着に腕を通すところだった。
 下には腿上まである黒いスパッツを履いている。

「そうか…頼んだで?帰ったら久しぶりにリドルの高級レストランへ行くさかい、ラムを見つけたら早よ帰ってきぃや」

「えぇ!?そうなの?…よーし、急いで行ってくるねっ!…あ、けどボク、ゲートすぐに通れるかなぁ?」

 当初はぽっかりと空間の狭間が開いていただけのリドルランドとディジェネを繋ぐ異空間ゲートだが、治安維持のため今は周りを頑強な建物に囲まれ、通常は厳しい審査をパスしないとそこを通る事は許されないのだ。

「あぁ、《スティンガー》がおれば大丈夫やろ。ちょっと前まではウチのモンはフリーパスやったし、シェリーは魔法使えへんから、事情を話せば今でもきっと通してくれるはずや。」

 ベルの言葉に頷いたシェリーは、ベルがラムたちと別れた場所を聞くと、勢いよく事務所から飛び出して行った。


←「押して頂けたら、麦茶を差し上げますよ?…うふ♪

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はみぱんTwo ~004~

こらぁ!…メアリー、どこ行ったんやぁ!…全く、出て来んでええ時にはホイホイ顔を出しおるクセして…」

 先程から事務所内の何処とは無しに向かい、ぱたぱたと飛び回りながらわめき散らしているベル。
 ソファーに体を投げ出したままのジンが一瞥をくれ、うんざりとした表情でベルを呼びとめる。

「もう金ラムの事はいいじゃんか…今回の依頼料は高額だったんだろ?ベルがあまりにしつこいからメアリーも姿を消してるんだって。
 むしろ、メアリーの機転があったからみんなが無事だったんだし、それでいいじゃん?」

 前回の依頼時の副産物として手に入れた【金製のラム】を、メアリーのせいで泉に落としてしまった事が許せずに、ベルはどこかへ消えた彼女に向かいずっとわめき散らしているのだ。

「いぃ~や、折角タダで手に入れたお宝をフイにしよったんやで?これが『あぁせやね』で済むワケないやろ!
 おぉ~い、メアリー!姿を消してどっかその辺におるんやろ!?出て来ぉ~い!」

 そう…メアリーは幽霊であり、その姿を自由に消したり現わしたりすることが出来るのである。恐らくジンの言う通り、事務所のどこかで姿を消しているに違いなかった。

「もう、うるさいったらないわね…事務所の外からもわめき声が聞こえたわ。
ちなみにこっちの依頼は解決したわよ?…ちょっと予定外な事はあったけど、もう橋が壊される事はないと思うわ」

 突然事務所の天井裏から女性の声が聞こえた。
 ベルはその声の方へ振り向くと、指をぱちんと鳴らす。

よっしゃ!よくやったで!!なんや今月は潤っとるなぁ…せや、シェリーもおるんやろ?二人でゆっくり休んどきや?」

 パチパチと【こども銀行】と書かれた小さなそろばんを鳴らしながら、ベルが天井裏に向かい声をかける。

「ありがとう…とりあえず、二人でお風呂を借りるわね…ジンも、良かったら後からいらっしゃい♪

「はぁうっ!?…ぇ…あ…が…」

 唐突な誘いに、ジンは固まったまま対応ができずにいた。奥にある風呂場からは既に水音が聞こえ、より一層ジンの妄想を掻き立てる。

「ほらジン、ネイがお誘いやで?…行って男になってきぃや!」

 機嫌の良くなったベルは玩具のそろばんを片付けながら、ジンに悪戯っぽい笑みを浮かべている。どうやら、金ラムの事は既に頭から離れたようである。

「おと…オト…オットットコ…アァ、ハィソウデスネ…」

 思考回路のメーターが振り切れたのか、ジンはおずおずと衣服を脱ぎ始めた。
 そうして最後の一枚を脱ぎ棄て、タオルを腰に巻いたジンがごくりと唾を飲み込み、意を決して風呂場へと続く廊下の扉を開こうとした瞬間…

(ガラッ)

「あら、ジン…遅かったからもう出ちゃったわ」

「あ!ジンもお風呂?…今、丁度良い湯加減だよっ!」

 勢いよく扉が開いたかと思うと、バスローブを身にまとったネイとバスタオルを胸に巻き付けたシェリーが事務所へ戻ってきた。

「相変わらず【カラスの行水】やなぁ…ほらジン、湯が冷めてまうと光熱費がかかるから、早よ次入ってき」

 ベルにとっては予想通りの展開だったのであろう…からかうような口調交じりで、ジンを風呂へ促す。

「ぅ…ぁぅ…はぃ…」

 がっくりと肩を落としたジンは、すごすごと廊下の奥へと消えて行った。


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