空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

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Humming from Pandora’s box ~019

「ふう…今回だけは助かったわ…メアリー。
けど国境を通る時には見えへんかったけど、どこ行ってたんや?」

「ずっと一緒にいましたよ?持ち物検査が面倒なので、ちょっぴり消えてましたけど…うふ♪
 あ…そうそう、時間がなかったので残り物で作ったんですが、サンドウィッチでも食べませんか?」

 メアリーは膝の上でバスケットを開けるとタッパーウェアからサンドウィッチを差し出した。

「いや、すまんな。ちょうど小腹が減ってたトコや…うん、結構いけるで…って、ちょっと待て、お前密入国したんか!?

 口にしたサンドウィッチを吹き出しながらメアリーの胸座に掴みかかるベル。

「そんな大それた事…ちょっと入国手続きを省略しただけですよ…うふ♪」

「それを密入国って言うんや!…全く、ウチの事務所から密入国者が出るなんて…」

 ベルは真っ赤な顔でメアリーに詰め寄る。

「そんなに怒らなくても…どちらにしろ私、リドルランドの住民登録はとっくに抹消されてますし…」

 当然、幽霊であるメアリーにはリドルランドの国民である事を証明する書類はない。
故に彼女には国境を越える術はないのである。

「そっか…そやな。
幽霊やったらしゃあないか…って、納得するわけないやろ!だったら事務所でいつものように留守番しとき!」

「えぇ!?けど、ご主人様が憑いて…いえ、ついて来いって…」

 悲しそうな表情でジンの方を振り向くメアリー。

「ジン、お前か!全くアホちゃうか!
何でメアリーなんか連れて来んねん!?」

 矛先をジンに替え、彼の肩に飛び乗ると耳を引っ張り怒鳴りつけるベル。

「だ、だって今回の相手はゴーレムだし、人手は多い方がいいだろ?
それに、メアリーはいつも留守番ばかりだからたまには外の空気を吸うのも健康にいいかな~って…」

幽霊が健康になってどうすんねや!

 ベルは両手でジンの耳を大きく広げ、自分の顔を突っ込むようにして怒鳴る。

「~うっさいな!もう入国しちゃったんだからしょうがないじゃんか!
ほら、もう駅に着くってさ!?」

 車内にアナウンスが流れ、やがて電車が緩やかに減速を始める。

「しゃあないな…とりあえず仕事が先や。みんな、降りるで?」

「え~っ!?もう電車終わりぃ?ラムもっと乗りたい!」

 駄々をこねるラムを引きずるようにして、ジン達は電車を降りる。
 その後一向は増田助教授を探す為、鬼押出し園付近のホテルを、バスなどを乗り継いで回った。

「きゅ~ん…ラム、もう疲れたよぉ~。」

 捜索したホテルは2件目だったが、途中で目に付いたペンションまで入れると5件以上は回っており、ラムはホテルのロビーで座り込んでしまった。

「しゃあないな…もうすぐ日も暮れてくるやろうし、ゴーレムがまだ完成せん事を祈って今日の所はここへ世話になるか?」

 ラムのバッグから顔を覗かせながら、ベルが小声で皆に相談する。

「賛成!今日はもうこれ以上電車やバスには乗りたくねぇし…」

 普段乗り慣れない交通手段に疲れ切ったジンがロビーのソファーへ身を投げる。

「ここのホテルは露天風呂が自慢らしいですね?…うふ。」

 皆から一歩下がった位置でメアリーがパンフレットを開いている。

何ぃ!?よし、ジン。はよ手続きしてき!フロ行くで!フロ!

 手続き中、住所欄にリドルランドの地名を書いた事により、ひと悶着あったが宿泊費を全額前払いする事により宿泊拒否はされずに済んだ。

うぉらぁ!フロはどこや!露天風呂ぉ!!

 部屋に通されたベルは、荷物を置くのももどかしく仲居さんの挨拶もそこそこに廊下へと飛び出して行く。

「おいベル!ここはリドルじゃないんだから、あまり目立つなって!」

 ジン達がタオルを持ち、ベルの後を追う。

「お!こっちや!」

 ベルが【女湯】と書かれた暖簾を見つけると、羽を唸らせて飛び込んで行った。

「仕方ねぇな…メアリー、見た目はお前が一番ディジェネらしいんだから、ベルとラムを頼んだぞ?
あまり騒ぎにならないようにな?」

 ジンはそう言ってもう一方の暖簾をくぐって行く。
 メアリーがジンを見送り、ラムを連れて脱衣所へ入ると、ベルが裸でガラス戸を開けようともがいていた。
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Humming from Pandora’s box ~018~

 シェリーは慌てて外へ飛び出そうとしたが、突然真っ暗な天井裏で何かが一斉に動き出す。

(シュルシュルッ!)

はっ!?これはあの蔓植物!

 姉に勝るとも劣らない俊敏性を誇るシェリーも、暗闇の上に狭すぎる屋根裏ではその力を発揮できない。

「うっ…くぅ…」

 彼女はあっという間に身動きが取れなくなってしまった。

「あら?てっきりネイさんだと思っていたけど、ちがったのね?まあ私は誰でも構わないんだけど、今回の実験に使うマウスにしちゃちょっぴり若すぎるかしら?」

 天井の板を外して屋根裏を覗き込み、懐中電灯でシェリーを照らす美沙。

その表情には怪しい笑みが浮かんでいた。


   ★  ★  ★


「早いはや~い!」

 電車内のシートで外に向かって【おすわり】の格好で過ぎ行く景色を見ているラム。

「こら、もうちょっと人間らしくしてへんと、変装の意味がないやろ!」

 ベルがラムの耳をぐいっと引っ張る。

「そう言うお前もちゃんと人形のフリしてなきゃダメじゃんか!」

 ジンがベルをがしっと掴み、ラムの持つバッグに押し込む。

「こ、こら!苦しいやんか!」

「しかたないじゃんか!
こっちじゃまだエルフだって物珍しく見られちゃうんだから…まして合成獣(キメラ)や妖精なんか見つかったらすぐに人だかりができちゃうぞ。」

 まだお互いの世界を行き来するには厳しい審査が必要で、ごく一部の人間及び亜人間(デミヒューマン)しか通行を許されていない現状では、その存在が知れ渡っているとは言えエルフですら人目を惹いてしまうのだ。

 法整備が整う以前に紛れ込んだ人型モンスターの一部が人間界に紛れ込んでいる事もあるようだが、それもまた極めて稀な話である。

「そうですよ。気を付けて下さいね…うふ♪」

 ジンの真横の席から突然女性の声がする。

「お前は…メ、メメ…

「…メ、メンデレビウム?」

 大きなバスケットを膝の上に置き、笑顔でそう聞き返したのはメアリーであった。

ちゃうわ!なんのこっちゃ。」

「あ、メンデレビウムはですね…元素記号Mdの超ウラン元素で、名前の由来はロシアの化学者【メンデレーフ】に敬意を表して付けられ…」

「そんな説明誰も聞いとらんわっ!」

(バシッ!)

「うきゃん!…痛いですぅ~。」

 飄々とした顔でメンデレビウムなる物の説明をしていたメアリーに、初めてベルのハリセンがヒットした。
 思いがけぬクリーンヒットに、ベルは一瞬驚きの表情を見せ、やがてその場にうずくまると肩をわなわなと震わせる。

や、やったで!ついにやったで!!…ジン、見たか?ついにメアリーにツっ込みくれたったでぇ!

 握り締めた拳を振り上げ、やおら立ち上がるとその周りをぱたぱたと飛び回り、ベルはその喜びを体中で表した。
 しかしその騒がしさに周りの人間がジン達の方を気にし始め、飛び回る妖精を見つけると女子高生らしき女性が黄色い声を上げる。

きゃ~っ!妖精じゃない!?

うっそぉ、どこどこ?

 たちまちジン達の席の周りには人だかりが出来上がる。
 それに気付いたベルが動きを止め、人形のように固まってみるが時は既に遅かったようだ。

きゃ~、ちょっとだけ触らせて!

写メ撮っても良いですか?

サイン下さい!

そそそ…それ僕に売って下さい。

 ドサクサに紛れワケの分からない事を言う人間も現れ、収拾がつかなくなってしまった。

「サインは一列に並んで順番にお願いします…写真は心霊写真になりますがよろしいですか?…うふ♪

 メアリーはそう言うと、首だけを180度回転させ、人だかりの方へと振り向く。
 その顔は先程のツっ込みのせいで眼鏡が割れ、鼻血を吹いて血の気の引いた青白い顔をしている。

っきゃぁ~!

うわぁ!ゆ、幽霊だぁ!

 血まみれのメアリーに驚愕し、人だかりは蜘蛛の子を散らすようにあっという間に霧散していった。

「あら?どうしたんでしょう…うふ♪

 とぼけた顔で辺りを見回すメアリー。
その車両にはジン達を残して誰もいなくなってしまった。

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Humming from Pandora’s box ~017

「美沙さんの家はとっくに通り過ぎているのに…どこに行くんだろう?」

 林道沿いに立つ木々を音も立てずに飛び移りながら、シェリーが一人呟く。
 やや前方の道には、時折後ろを気にしながら早足で歩く美沙が見える。

「お姉ちゃんは美沙さんを見張っておけって言ったけど、どういう意味だろう…あの蔓植物の原因は旦那の方だったって分かったはずなのに…」

 ぶつぶつと独り言を言いながらも、シェリーは美沙との距離を保ちながら木から木へと飛び移って行く。
 美沙の自宅を通り過ぎてから更に数キロ…突然立ち止まった美沙は、それまで以上に辺りを気にし始める。

「うん?…どうしたんだろう。こんな森の中で…」

 最後に飛び移った木の枝に潜み、シェリーは美沙の行動をじっと見つめている。
 幾度となく四方を見渡し、誰もいないことを確認する美沙…やがて満足したのか、道を外れて森の中へと消えて行った。

「何だろう…こんな何もない所で…おしっこかな?」

 ガサガサと草を掻き分け、どんどん森の奥へと分け入って行く美沙…シェリーも見失わない程度の距離を保ちながら、木々を伝って後を追う。

「えぇっ!?」

 思わず声を出してしまうシェリー。
突然森が開けたかと思うと、そこには長い間使われていなかったであろう、古びた木造の小屋が建っていた。

「何でこんな森の中に小屋が…」

 小屋の古さからして、美沙の建てた物ではなさそうだったが、彼女は当たり前のようにドアのカギを開け、中へと進もうとしている。

(グルルルゥ…)

 と、そこへ人の臭いを嗅ぎつけたのか、森の奥から獣の唸り声が聞こえる。
 茂みの間から現れたのは、目を血走らせた狼であった。

(危ない!)

 シェリーは美沙を助けに飛び出そうとしたが、美沙は全く動じていない。

(シュルシュルッ!)

 突然狼の足元の蔓がうねり始めたかと思うと、瞬く間に狼を雁字搦めにしてしまった。

「ふふ…私を餌だと思ったの?…残念ね。餌はあなたの方よ?」

 美沙はそういい残すと小屋の中へと消えて行った。

「どういうこと?…あ、あれは例の蔓植物!?…ち、ちがう。フランシーヌ!?

 飛び出すタイミングを失い、捕らえられた狼を呆然と見つめるシェリー。
 やがて身動きの取れない狼の鼻先にフランシーヌの蕾が現れ、ぽんっという音と共に破裂し何かを撒き散らした。

(ガッ…ガフッ…)

 狼は数回咽たかと思うとそのまま動かなくなってしまった。

「あの蔓はあの時の…けど、花はまるでフランシーヌ…あ!とにかく美沙さんを見張らなきゃ。」

 ネイの言葉を思い出したシェリーは、樹上からふわりと跳ぶと、蔓植物を飛び越してそのまま音も立てずに小屋の中へと忍び込む。

「…随分大きくなったわね。これで私の計画もほぼ完了ってところね…ふふふ。」

 屋根裏に忍び込み、光の漏れてくる部屋を覗き込んだシェリーが美沙の姿を見つける。

「…あ、あれは…」

 その光景に小さく驚きの声を上げてしまうシェリー。
その瞳に飛び込んできたのは、鉢植えの花を大切そうに抱える美沙の姿…しかもその花は、紛れも無いマカツァーヴァであった。
…が、通常のそれとは少々様子が違い、紫色の蕾がまるで子犬のように美沙に擦り寄りうねうねと蠢いている。

「な…何?あれ…」

 しばらく美沙の胸元に擦り寄っていたマカツァーヴァの蕾だが、やがてつるんと彼女の衣服の隙間から胸の中へと入って行く。

「…あん、待ちなさいって。研究の成果を試すにはもっと相応しい相手がいるんだから…そう、屋根裏のネズミがね!?」

 そう言い終えると同時に、美沙が振り向きシェリーの潜む天井を見上げる。

しまった!見つかった!?

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Humming from Pandora’s box ~016

「・・・な、何でラムがここにいるんや!?余計な経費が掛かるだけやろ!」

 ここは日本とリドルランドを繋ぐ国境の、リドルランド側である。
国境といっても、それぞれの世界を繋ぐのは直径わずか数メートルのぽっかりと開いた時空の穴であり、警備や出入国管理の為それを覆うようにビルが建てられている為、一見しただけではそこが異世界へと繋がっていると気付く人間はいないだろう。
 そこでジン達が出国の手続きを始めた時にベルが目を覚ましたのだ。

「やっと目が覚めたか…大丈夫、美沙さんには了解を取ってあるから。
それにメアリーの分も…あ、あれ?…メアリー?」

 ふとメアリーがいない事に気付き、辺りを見回すジン。

「何やて?メアリーも来てんのか?ピクニックちゃうんやぞ。」

「いや、さっきまではいたんだけど…」

 書きかけの書類の上にペンを置き、ジンはきょろきょろとメアリーを探す。

「おい、ジン。いないならいない方がええって…きっと途中で迷子にでもなったんやろ。ええからほっとき。」

 ベルに促されたジンが、書類の残りを書き始めたところへ、カウンターの奥から声が掛かった。

「あれ?【ベルモット探偵事務所】の方々じゃないですか!?お久しぶりです。」

 それまで他の書類に目を通していた男がベルに気付き、それまで事務的な対応をしていた担当者を押しのけてカウンターから顔を出した。

「おお!え~と、スティンガーやったか?…どや、元気にしとるんか?」

 ベルがぱたぱたとカウンターへと飛んで行き、男の目の前に降り立つ。

「勿論ですよ。本当にあの時はありがとうございました!…で、今日は仕事で?」

「ああ。ちょっとヤボ用でな?
急いでるねんけど…」

 それを聞いた男は、ジンの手元から書きかけの書類を取り上げると、にこやかに頷いた。

「ああ、これだけ書いてあれば大丈夫ですよ。リドル王からの連絡も入ってますので、そのまま荷物検査の方へお進み下さい。」

「チ…チーフ…」

 最初に対応していた、少々無愛想な眼鏡の男がスティンガーを見上げるが、彼はそれを無視して扉からベル達の方へ出てくると、隣の部屋に案内する。

「すみませんね。奴はまだ新人なもので…さ、どうぞこちらへ…荷物は全て出しておいて下さいね?」

「面倒やな…まあ、大したモンは持ってないからええけど…」

 ベル達はぶつぶつ言いながらも手荷物をテーブルへと並べ始めた。

「まあ、こればっかりは省略するわけにもいかないんで…あ、ジンさん。剣は置いて行って貰えますか?それと魔力抑制リングも付けて下さいね?」

「えぇ!?これはダメなのか?」

 スティンガーは笑顔のままジンの剣を受け取り、代わりに魔力を抑えるリングを手渡した。

「ええ、すみません。以前よりチェックが厳しくなりまして…緊急時ならともかく、基本的には向こうの法律を遵守しなければならないもので… 魔力抑制リングについてはいつものことですからお分かりですよね?」

「ああ…けど、今回の仕事を考えると、出来れば嵌めたくないなぁ…」

 ぶつぶつぼやきながらも、ジンは魔力抑制リングを左手に嵌める。
 魔力抑制リングとは、魔法文化の無い日本で攻撃魔法を乱用する事を抑制するための物で、リングを嵌めると魔法による攻撃力が半減してしまうのである。

「帰りに封印が解かれていると大変な事になりますので、くれぐれもそのリングは外さないようにして下さいね?
そうそう、最近はエルフの方々も向こうへ行かれるようになりましたが、ラムさんの場合は何か変装していった方が良いかと思いますが…」

 ラムはその体が毛皮で覆われており、普段から暑がって比較的露出の高い洋服しか着用しない為、ひと目で異世界の住人だと分かってしまうのだ。
 荷物を全く持っていなかったラムは、それまでくんくんと辺りの臭いを嗅ぐような仕草をしていたが、スティンガーの言葉に気付くと彼の方へ駈け寄ってくる。

ねえねえ、この前のお洋服ある!?

「あ…はいはい。あれは確か…ロッカーにお預かりしたままだと…」

 はしゃぐラムに気圧されながら、スティンガーがロッカーから何かを取り出した。
 がっつくようにそれに飛びついたラムは、それと格闘するように転げまわる。

へへ♪どう、ジン?ラムまたこれ着るぅ!

 どうやらラムは、布切れと格闘していたのではなかったようで、器用にもいつの間にかそれを着ている。
 学校の制服に白いセーターとぶかぶかのルーズソックス…その姿は紛れも無く数年前の【コギャル】であった。

「…う~ん。いいんじゃないか?」

 答えたジンの頬には、大きな冷や汗が流れていた。
 その場の誰もが違和感を抱いていたが、唯一ラムの毛並みが茶髪のギャルに見えなくもないと言えば見えなくもなかった。

「きゃう~ん!ケータイの充電が切れてるぅ~!」

 制服と一緒に預けてあった小さめのボストンバッグから電池式の携帯のおもちゃを取り出したラムが騒ぐ。

「当たり前やろ!それは元々おもちゃなんやし、ほっときゃ使えんようになるわ!」

「くぅ~んくぅ~ん…ベルぅ…」

 女子高生の格好をしたゴールデンレトリバーが、甘えたような声で上目遣いにラムに擦り寄る。

「わぁったわぁった!向こう行ったら電池替えたるから…」

「くぅ~ん…バリ3?」

いや、意味分からんわ!
どこでそんな言葉覚えてくんねん!」

 やがて所持品検査も終わり、一向は少し大きめの、がらんとした部屋へと通される。
 他の部屋と比べ天井が高いその空間には何も置かれておらず、入り口の向かいの壁に大きく近未来的なドアがあるだけだった。

「ここだけは何回来ても緊張するなぁ。」

(…ヴゥン)

 静かな機械音と共にドアがスライドし、異次元への入り口が開かれた。

「では、お気をつけて!」

 一行は必要以上に明るいスティンガーの声を後に、その中へと進んで行った。

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Humming from Pandora’s box ~015

・・・ 元々リドル王直属のくノ一であった彼女は表向き【抜け忍】である。

しかし特に追っ手も無く、むしろ現在もリドル王とも繋がっているようなのだが、その実際は誰も知らない。

「何やと?今回の相手はゴーレムなんやで?
そんなん相手に出来るんは、ジンとネイしかおらんやないか!」


 ベルがネイに詰め寄るが、彼女はそ知らぬ顔でジンに擦り寄る。

「あら、強力な魔法のかかったゴーレムならまだしも、ディジェネの作ったゴーレムなんかあなた一人で大丈夫よねぇ…ジン?」

「あ…お、おう。」

 耳元で囁かれたジンはたじろぎながら頷く。

「全く、いつもながらホンマ自分勝手な女やな。
この前は頼みもせえへんのにのこのこついて来たっちゅうのに…」

「ならベル、あなたが国王に『ウチの仕事があるからそちらへは行かせません』って伝えてくれるなら、そっちに付き合ってもいいけど?」

 ベルは独り言のように呟いていたのだが、それを聞き逃さなかったネイがベルに妖しく微笑みかける。

そんな事できるかぁ!もう分かったから、好きにしぃ。
 しゃあない、ジン行くで!?」

 その言葉にジンが立ち上がり、ベルも彼の肩の上に乗る。

「くう~ん、ラムもディジェネの国に行きたいぃ!」

 出かけようとしたジンの足元に、ラムが擦り寄ってくる。

「あの~…私もお供してよろしいでしょうか?」

「うぎゃぁ~!!」

 背後から聞こえた、か細い声にジン達が振り向くと、開けたままになっていた窓のすき間から、先程のボケによって…まさにブラディー(血まみれになった)・メアリーがじっとこちらを見つめていた。

 幽霊としてはあまりにも相応しいシチュエーションに、さすがのベルも泡を吹いて失神してしまう。

「メアリー、勘弁してくれよ…ベルが失神しちゃったじゃないか。まあ今回は相手が相手だし、ネイがいないとなると、一人でも多い方が頼もしいもんな。
…美沙さん、いいかな?」

 肩の上で失神してしまっているベルが落ちないように気を付けながら、ジンが美沙に問いかける。

「はい、それで夫を無事に連れ帰って頂けるのなら…」

「よし、じゃあ行くか!…あ、シェリー、お前はどうする?」

 突然話を振られたシェリーは、少し考えるような仕草を見せていたが、その答えを待たずにネイが口を開く。

「シェリー、あなたにはちょっと頼みごとがあるんだけど、いいかしら?」

「あ…うん!お姉ちゃんの頼みならボク何でもするよ!?」

 姉を慕っているシェリーが、ネイの頼みを聞かないわけはなかった。

「そっか…じゃあラム、メアリー、行くぞ!」

「くぅ~ん、ディジェネ♪ディジェネ♪」

…うふ♪

 ジン達と一緒に美沙も事務所を出る。

「では、くれぐれもお願い致します。私は自宅の方でお待ちしておりますので…」

 そう言って深々と頭を下げると、美沙はスピリッツ山の方へと帰って行った。

 残されたネイとシェリー…ネイは皆が出て行ったのを確認すると、そっとシェリーに耳打ちを始めた。

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Humming from Pandora’s box ~014

「あの後、私なりにどうしてあんな植物が発生したのかを考えていたのですが…夫の日記を読んで、鉱石を粉砕した日と私が襲われた日がほぼ一致するので…恐らく排気口から漏れ出した粉塵が土壌に染み込み、偶然そこに生えていた蔓植物がその養分を摂り込んでモンスター化したのでは…と。」

 ジン達は口々に感嘆の声を上げていたが、ベルは一人、腕組みをして唸っている。

「…けど納得いかへんな。そんなんやったらスピリッツ山の植物は、みんなああなってまうんやないか?」

「そっかぁ~、それもそうだよね!?」

 シェリーがうんうんと大袈裟に頷く。

「いえ、スピリッツ山の植物には耐性があることを発見しました。

それに鉱石のままの状態ではそのような事象が起こる確率は限りなくゼロに近付きます。」

「ほぅ…さすが、昔ご主人の助手をしていただけはあるなぁ。
美沙さんも結構研究熱心なんやなぁ…」

 ベルのセリフに美沙は驚きの表情を見せる。

え!?わ…私、助手をしていたなんて事言いましたっけ?

「ん?…いや、聞いてへんけど、ネイが美沙さんの家でご主人と二人で白衣を着た写真を見た言うてたからな?」

「あ…そ、そうなんですか?
…別に隠していたわけではないんですが、私が言った記憶が無かったもので少々驚きました…ネイさんは洞察力がよろしいんですね?
 あの…ところで、依頼の方は…」

 蔓植物の説明が一通り終わった所で、美沙は本来の目的に話を戻した。

「あぁ…せやな。しかし、前回みたいな事が万が一にもあると嫌やからな…幾つか確認させて貰うで?
 まず、この日記帳を残してご主人がいなくなり…日記の内容からは、以前から恨みのあった【菅平】に対し自分の研究の成果であるストーン・ゴーレムを使って何かしらの復讐をしようと、日本へ戻り鬼押出しに潜伏している。
…ここまでは間違えあらへんな?」

「はい、夫の心の中までは分かりませんが、恐らく間違いありません。」

 美沙はベルを見つめて、しっかりと頷く。

「そこで第一の質問や。
何故ご主人が鬼押出しにいるっちゅうのが分かるんや?」

「それには幾つかの根拠があります…
 一つは夫が以前勤めていた研究所…つまり【菅平教授】の居場所…が軽井沢にあり、そこから近いという事。
 また鬼押出し園は結婚前に夫とよく行った、所謂デートコースでした…そして職業柄か夫は、その地形や岩にかなり関心を持っているようでした。
 そうしてそこは、その名の通り【鬼】を連想するようなごつごつとした岩が溢れていますので、ゴーレムを作るなら恐らくそこしかないと…」

 バッグから地図を取り出した美沙はそれをテーブルの上に広げ、ベルやジン達に分かるようボールペンで鬼押出し園に印をつけながら説明する。

「ウチらはリドルの者(もん)やから、その【鬼押出し園】っちゅうのがどんな所かは分からへんけど、まあ納得の行く根拠はあるようやな…
ほな次の質問や…今回の依頼はご主人の作ったストーン・ゴーレムを破壊しろって事やけど、ストーンゴーレムはリドル(こっち)じゃ比較的【手強い】部類に入るモンスターで、そう簡単には倒せへん代物や。
 弱点はあるにはあるが、それは術者…つまりこの場合ご主人やな…を気絶させるか眠らせるなどして、意識をなくさせる事なんや。
 そうすればコントロールする者がいなくなり、ゴーレムは動けへんようになるんやが…」

 ベルの話のトーンが落ちる…当然、自分の夫が傷付けられるのを承諾する妻はいないだろう。
 話の内容を理解した美沙も俯き、少しの沈黙が生まれた。

「…けれど、夫が犯罪者になるのを防げるのなら…多少の事は仕方ないと…でも、出来るだけそれは…」

「分かっとる…それはほんまに最後の手段や
…ウチの【眠りの粉】で上手く眠らせる事が出来ればそれに越した事ないんやが…万一それに失敗した場合は、ある程度の事には目をつぶってもらわんとあかんようになるで?」

 美沙は唇を噛み締めて下を向いていたが、やがて小さく頷く。

「…か、構いません。お願い致します。」

「そか…なら最後に聞くが、もしも依頼を受けるとなったら、当然ウチ等が日本へ出向くことになるわけや。
向こうはリドルに比べて物価が高いから依頼料も割高になるけど…ええか?」

 ベルはそう言いながらいつものプラスチック製のそろばんを取り出そうとするが、それより美沙の返事の方が早かった。

「お金に関してはいくらでも構いません。とにかく一刻も早く夫を…」

「よっしゃ、分かった。ならすぐに行こか?ジン・ネイ!仕事やで!?はよ支度せい!」

「お…おう!」

 ベルなりに納得が行ったのか金のせいかは分からないが、彼女は先程までの疑心暗鬼な態度をころっと変えて、ジン達を促した。
ジンは彼女に気圧されたように間の抜けた返事をする。

「あたしは今回パスするわ。リドル国王の所へ行く用事があるし…まあ、ついでにあなた達が日本へ渡る手続きは速やかに出来るようお願いしておいてあげてもいいけど…」

 それまで誰もいなかったはずのソファーにネイが腰掛けている。

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