空想【はみぱん】小説(o^-')b

ファンタジー(?)小説をゆっくりまったりアップして行く予定です(;^_^A

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Humming from Pandora’s box ~009

はぁ…はぁ…いったい何だっちゅうねん!女ばかり襲ってからに…そ、そや!ラムを戻さな…解呪(アンティマ)!」

 ベルの投げかけた呪文に反応し、ラムは再び淡い光に包まれ元の姿に戻ってゆく。

「お待たせしまし…きゃっ!火事!?」

 家から出てきた美沙が自分の敷地に上がっている炎に驚き、慌てて水道に飛びつき、普段ガーデニングに使用しているであろう散水用のホースで水をかける。

「あぁっ!消しちゃだめ!」

 シェリーが慌てて美沙を止めようとするが、ジンがそれを制止した。

「いや…大丈夫だろ。
もうほとんど灰になってる…」

   ・
   ・
   ・

 時は少し流れ、一同は増田家のリビングに移動していた。

一体何なんや、アレは!
こんな話聞いてへんで!?もうちょっとでウチらみんな、大変なことになるとこだったんやで!?
こりゃあ追加料金もらわんと割にあわへんで!」


 ベルが応接テーブルの上でハンカチに包まりわめき散らす。
 ネイを初め、他の女性達は美沙に借りたバスローブやバスタオルをまとい、ソファーへ腰掛けている。
ただ、ラムは落ち着かない様子で、鼻をひくひくとさせながら、辺りをきょろきょろと見回していた。

「はぁ…すみません、必要ならお支払いいたします。
けど、私は庭でお待ち頂く様に言ったかと思うのですが…そこできちんと説明してからなら別の対処方法があったのでは…」

何言っとんねん!
だいたい、電気一つ点けるのにどんだけ時間がかかっとんねん!随分遅かったやないか!」

 普段は計算高いベルも、つい先程起こった貞操の危機に感情を昂ぶらせているようだ。

「申し訳ありません。そちらの事務所へ伺った時には襲われた状態のままでしたので、着替えだけでもさせて頂こうと…」

「あんたが新しい服を着ている時に、ウチ等は服をベリベリ脱がされてたんやで!?」

 興奮が冷めないベルを見かねたネイが、腰を下ろしていたソファーから身を起こすと、彼女の羽をまるでトンボを捕まえるようにして摘まみ上げた。

「いたたた…痛いって!そういう持ち方はするな言うてるやろ!」

 宙吊りになってじたばたともがくが、ベルにはどうすることも出来ない。

「まあ落ち着きなさいよ、ベル。
確かに勝手に行動したあたし達にも非があるのは事実よね?…それにラムのお陰でみんな最悪の事態は避けられたんだし、ここはこれで解決ってことでいいんじゃない?
 美沙さんの依頼の方も、要はアレを何とかして欲しいって事だったんでしょう?」

 ぎゃあぎゃあわめいているベルをつまんだまま、ネイが問いかける。

「え?…ええ。まあ…」

「じゃあ仕事は終わりね…みんな、帰りましょうか。」

 そう言ってネイが立ち上がると、皆もそれに続く。
ベルはまだぶつぶつと何か呟いていたが、ネイにつままれたままでどうすることも出来ない。
 その時、玄関の方でドアの開く音がした。

「あ、夫が帰ったようです。」

 廊下を歩く音が近付き、やがてジン達のいるリビングへと男が入ってくる。
 天然パーマなのか、ボサボサというよりどこかの音楽家が髪を振り乱したような頭髪をした、中肉中背の男は見知らぬ客人に一瞥を向けたが、何かを大事そうに抱え、そのまま奥へと歩みを進めようとする。

「お帰りなさい、あなた。こちらは探偵さんで、今日は大変な…」

うるさい!家の事はお前に一切任せてあるだろう!?
もうすぐ今までの研究が上手く行きそうなんだ!何があったか知らないが、お前が処理しておけ!」


 男は一方的にまくし立てると、そのまま奥の部屋へと消えて行った。

「何あれ。感じ悪~い。」

 シェリーが口を尖らせて呟く。

「すみません…夫は研究の方が煮詰まっているようで、最近はずっとああなんです。」

「…まあ二つの世界が繋がって、医学も科学も異世界の研究に躍起になってるようやし、技術の飽和した世界で今まで大した成果を得られなかった科学者も、こっちじゃチャンスがぎょうさん転がってるってこっちゃ…ほな、帰るで!」

 先程よりは落ち着いたようだが、まだベルのセリフには少々棘があった。
美沙が玄関まで見送りに出る。
そこでふとネイが口を開いた。

「そう言えばお庭に咲いているお花の趣味が良いわね?」

 それまでベルとのやりとりで少々曇り気味だった美沙の顔がぱあっと明るくなる。

「ありがとうございます。ガーデニングは始めたばかりですし、こちらの世界の植物はよく分からないんですが、みんなきれいなお花でしょう?」

 その返答に、ネイは僅かに驚きの表情を見せる。
彼女はネイの質問の真意には気付いてない様子だった。

「…じゃあ、あの花々がどんなものかは…」

「ええ…良くは知りません。何かあるのですか?」

 美沙の屈託の無い笑顔に、ネイは目を伏せ軽く頭を振った。

「いえ…それじゃあ失礼します。」
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Humming from Pandora’s box ~008

「お姉ちゃん!」

 庭の方から聞き覚えのある声がしたかと思うと、建物の影から慌てた様子でシェリーとラムが飛び出して来た。

「シェリー!どうしてここへ…」

「前の依頼主(スポンサー)の治療が終わったから、ラムに頼んで臭いを追って来たの…そうしたら、お姉ちゃんの叫び声が…そんなことより、今すぐ助けるからね!?」

 言い終えるより早くシェリーはネイに向かって駆け出した。
くノ一としてはまだまだだが、小柄で細身の彼女の敏捷性はネイにも引けをとらず、蔓も彼女を捕らえることは出来なかった。
 あっという間にネイの下までたどり着いたシェリーだが、なかなか蔓を引き剥がすことは出来なかった。

「シェリー、離れて!あなたまで捕まってしまう!」

 自分に今降りかかろうとしている最大の危機を差し置いても妹を気遣うネイ…しかし時既に遅かった。
姉に絡みついた蔓を引き剥がすことに夢中になっていたシェリーに、足元から別の蔓が襲い掛かる!

「・・・だめだよ…お姉ちゃん。
解けそうに無い…それに私も捕まっちゃったみたい…」

 見るとシェリーはネイの蔓を解こうとした状態のまま…四つん這いに近い姿で、両手両足を蔓に絡め取られてしまっていた。
そうして再び、蔓は彼女の姉に行った行動を妹のシェリーにも繰り返す。

「きゃぁ!お姉ちゃ~ん!」

 まだ成長し切れていない素肌を露にされ、瞳に涙を浮かべて頭上で宙吊りにされている姉を呼ぶ。

「うっく…はぁはぁ…シェリー、今から私のクナイを落とすから、それを受け取れる?」

 その声にシェリーが姉を見上げると、はだけた胸の隙間から、キラリとクナイが光るのが見えた。

「ふうっ…あっ!…私にはこれを取ることが出来ないけど…うっ…何とか下へ落とすから、それで脱出して頂戴…あぁっ!」

 捕らえられて間もないシェリーの腕は、比較的蔓が少なく、まだ多少なら動かせそうに見える。

「分かった。やってみる!」

 シェリーの返事に、ネイは体をゆさゆさと揺らし、何とかクナイを衣服からだそうと試みる。

「うんっ…くうっ!」

 自らの動きにネイの豊満な胸はぷるぷると揺らされ、それにつられてクナイも少しずつ衣服から出てくる…しかしその動きはまた、自らあらぬ場所を刺激する結果となった。

「…うぅあぁぁっ!!」

「大丈夫!?お姉ちゃん!」

 シェリーが上を見上げる…まだ幼い彼女にはとても正視出来る光景ではなかったが、顔をそむけるわけには行かず、また彼女自身も体を這いずり回る蔓に必死で耐えながら、姉からの希望のバトンを待っている。

(…スルッ)

 ネイの胸元から一本のクナイがするりと出て、胸の谷間から腹へと滑る。

「シェリー!
お…お願い!あぁぁ~!」


 顔を上気させたネイが最後の力を振り絞り、体をねじらせる…すると腹の上に乗っていたクナイがわき腹から落ちる…瞬間、横から延びた蔓がクナイに当たり、軌道を逸らしてしまった。

「ああっ…と、届かない!」

 縛られた腕を出来る限り伸ばし、クナイを受け取ろうとするシェリーだが、無情にもクナイは伸ばされた手の僅か数センチ先を落下する。

「あぁ~…万事窮すやぁ…」

 それを見ていたベルがうなだれた…が、気付くと眼前に新たな蔓が迫っており、先程とは別側の腿の隙間を探していた。
今までは片足から胸元にかけて衣服を切り裂かれただけだったので、被害は少なかったのだが、もう一方から裂かれてしまうとほぼ全裸の状態になってしまうのは明らかだった。

「ちょっ…ちょっと、待ちぃや!そないな事したらあかんって!!
ウチ、素っ裸になってまうやんかぁ!」


 ベルが狂ったように暴れる。そして蔓は、シェリーにも同じ行動を始めた。

「いやぁ!お姉ちゃん、お姉ちゃ~ん!」

 とうとうシェリーは泣き出してしまった。
例えようの無い恐怖から逃れようと体を大きく揺するが、大の男が身動き出来ずにいるのだ…彼女に逃れる術は無い。

「ベル!…ベル!!あの呪文ちょうだい!」

 そう叫んだのはラムだった。
それまでも何とかジンを助けようとしていた彼女だったが、やはり蔓に捕まり今にも服を切り裂かれようとしている所だった。

「そ…そや!幸い今日は満月やし、ラムなら何とかできるかも知れん…けどラム、あの呪文は…」

 ベルは蔓に舐られながらも、唇をギュっと噛み締め…新たに訪れた一縷の望みには縋りきれずにいる。

(ビリビリィィ…)

 ラムの衣服が切り裂かれた。

「ベル、早く!私なら大丈夫だよ。みんなが助かるなら…大丈夫だよ!?」

 ラムの訴えに、眉間にしわを寄せるほど強く瞳を閉じ、大きく頭を振ったベル…しかし確かにこうなってしまっては、他に助かる方法は思い浮かばなかった。
ベルは血が滲むほど強く唇を噛み締め、意を決したように叫ぶ。

「ラムぅ…ほんま、堪忍な?・・・獣化(ガルフォーゼ)!!」

 途端にラムの体が淡い光に包まれたかと思うと、それまで半獣半人だった彼女は、みしみしと音を立てて犬の姿へと変わって行く…しかし変化は更に進み、牙を剥いた狼に変化して行った。

「くうぉぉぉ~~~ん!」

 ラムは夜空に浮かんだ二つの満月に向かい、どこまでも響きそうな遠吠えをし、姿を獣そのものに変えたかと思うと、辺りの蔓を片っ端から噛み切って行く。
 ベルの使った魔法【獣化】は、本来人間の野生的な部分を強く引き出す、所謂「強化」の呪文で、見た目に大きな変化をもたらすことはないのだが、合成獣(キメラ)であるラムに使うと、人としての性質を打ち消し…その容姿さえも「ケモノ」そのものにしてしまうのである。
 そして月の満ち欠けによって、その影響は更に加速する。
 ベルはミシミシと音を立てて変わりゆくラムを直視できず、俯いたまま硬く瞳を閉じていた。

(ブチッ…ブチチッ!)

 蔓はどんどん食いちぎられ、一人…また一人と蔓から解放され、どさりと力なくその場にへたりこむ。やがてジンの体も解き放たれた。

「よし、こうなりゃこっちのもんだ。少々弱まっちまったが…みんな、離れてろよ・・・火玉(ファイアボール)!!」

(ボウッ!)

 ジンの手のひらで燃え続けていた火の玉は随分と小さくなってしまっていたが、周りの蔓を焼き払うには充分な威力が残されていたようだ。
 炎から少し離れて、三人の女性達は地面へ座り込んだまま肩で息をしている・・・

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Humming from Pandora’s box ~007

「う…くっ!」

 蔓は足元から体を這い上がり、一瞬にしてネイの自由を奪う。

「な、何やこれ…ネイ!大丈夫か!?」

 ベルがネイに絡み付く蔓を解こうと、彼女の方へ飛んで行ったが、壁に生えていた蔓がそれを待っていたかのようにベル目掛けて覆いかぶさる。

「きゃ!?何すんねん!」

 蔓はベルとネイを縛り上げると一瞬その動きを止めたが、すぐに次の行動へと移った。

(ビリビリィッ!)

 数本の蔓がネイの胸元に滑り込んだかと思うと、一気に上着が引き裂かれる。
 ベルは普段、装飾のある水着のような服装をしており衣服は肌に密着しているのだが、蔓は器用に僅かな隙間を探り当て、腿の付け根から胸元まで潜り込んで、それを難なく切り裂いた。

(ビリィィッ!)

「いややぁ!ジン、ただで見たらあかん!…って言うか、何ぼおっと見蕩れてるねん!?はよ助けんかぁ!」

 先程吸った花の蜜が効いて来たのか、ジンは鼻の下を伸ばして二人のあられもない姿を凝視していたが、ベルの言葉にはっと我に返り、背中の剣を抜こうとする。
…が、先程までは足に絡み付いていただけの蔓が足を伝い、剣とそれを抜こうとしたジンの腕に絡み付く。

「ぐっ!…一本や二本ならともかく、これだけ絡み付くと身動きが取れねぇ…」

 何とか剣を抜こうともがくが、がっちりと絡んだ蔓がそうはさせてくれない。
 三人がもがいているうちに、森側の樹上や壁の上方から新たな蔓が伸び、ネイの足を捕らえると両足をぐいっと持ち上げ、体を宙に浮かせる。

「きゃあ!?なんて格好させるのよ!?ジン、何とかしてぇ!」

 衣服が切り裂かれ、豊満な胸の大部分が露になっているネイ…さすがのくノ一も両手両足を雁字搦めにされては為す術もない。

「ちょっと待ってろ、剣がダメなら…火玉(ファイアボール)!!」

(…ボッ!)

 ジンは比較的呪縛のゆるい左手のひらに炎の玉を生み出した。
 ブレスレットにはスペルチップがセットされておらず、初歩中の初歩の魔法しか使えないが、植物を燃やすには充分な炎である。

「そや、相手は植物や!炎で焼いてまえ!!」

・・・しかし手のひらの炎はメラメラと燃えるだけで、一向に蔓を焼き払おうとはしなかった。

「何しとんねん、はよ助けんか~い!」

 ベルが叫ぶ。
彼女もいつの間にか足を抱えられ、ものすごい格好になっている。

「…い、いや…手が動かせないんだって!」

「アホかぁ!?そんなん、ただの松明と一緒やないか!」

 蔓は危険を察知したのか、炎を避けながらジンの腕を器用に固定している。
火玉(ファイアボール)は炎掌(パームボム)と違い、遠距離の相手に投じることも出来るのだが、手首までガッチリと固定されたジンにはそれをどうすることも出来なかった。

「何!?…や、やめ…」

 突然ネイが声を上げた。
 皆が彼女の方に視線を動かすと、それまで何かを探すように彼女の肢体をうねっていた蔦が下半身の方へ移動したかと思うと、するりと彼女の下着の中へ滑り込んだ。

い・・・ぃ嫌ぁぁぁ~!!

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Humming from Pandora’s box ~006

 一行が最後の丘を越える頃には彼らが落とすその影もかなり長くなり、赤く染まった空にうっすらと大小の2つの月が浮かんでいる。

「ふぅ、疲れた…スピリッツ・マウンテンもかなり近付いたけど、まだ着かねぇの?」

 少々だるそうな声でジンが呟く。

「あら、ジン。疲れたのならそう言ってくれれば良いのに…さ、どうぞ。」

 今まで組んでいた腕を解くと、ネイはジンの前で跪き、背中を向ける。

「え!?おぶってくれるってのか?
恥ずかしいじゃんか、勘弁してくれよ…それより歩きながらベタベタくっつかないでくれたらこれくらいの距離は何ともないんだけど…」

 そう言うとジンはネイの横を素通りし、スタスタと歩き始める。

「んもう…全く、恥ずかしがりやさんなんだからぁ…」

 立ち上がったネイがジンに追いつくと、再びこれでもかというくらい腕を絡め、体を摺り寄せる。

「またかよ…勘弁してくれって…ちょ、ちょっと…胸を押し付けるなってば!」

うふふ…どう?

「どどど…どうって、何がだよ!?」

くおら!エロ魔法使いと色ボケくノ一!!何をさらしとんねん…着いたで!」

 その声に二人がふと前を見ると、スピリッツ山麓の森の中に平屋だが割と大きな住宅が目に入ってきた。

「私が襲われたのは、あの研究室の裏手なのですが…日も落ちてきたので、明かりを点けて来ますね?ここでお待ち下さい。」

 美沙は建物の南側の広い庭に一行を残し、建物の中へと入って行った。

「ガーデニングって…こりゃ趣味の域を超えてるんちゃうか…」

 ベルがため息混じりに呟く。
 奥は森となり、鬱蒼と木々が茂っているのだが、その手前のスペースにはありとあらゆる植物が整然と植えられている。

「あら、この花…ほらジン。この花の蜜を裏から吸ってみて…甘いでしょう?」

 ネイはラッパ状に咲いたピンク色の花びらを【がく】からすっと抜き取ると、ジンの口元へ差し出し、それを吸わせた。

「こらネイ。そんなん勝手に取ったらあかんやろ。はよ戻し!」

 慌ててベルがネイを止めるが、彼女はお構い無しに二つ三つと花びらを抜き取り、ジンへと差し出している。

「あら、これ位大丈夫よ。
それにこれから咲く花には手をつけてないし、むしろ剪定のお手伝いをしているようなものよ。」

「そうなんか?…ほな自分も…」

 元々ベルも興味があったのか、ネイの妙な言い訳に乗り、ぱたぱたと花壇の方へと飛んで行くと、自分の顔程もありそうな花びらをむしってトロンボーンでも吹くかのような格好でそれを咥えようとした。

「さっきのお茶の件もそうだけど、あなたは余程自殺願望があるのかしら?
…それは【フランシーヌ】よ?野良犬なんかがそれを食べると内臓から腐って死んで行くのよね?」

「でぇっ!?…ぺっぺっ!…はよ言わんかい!ちょっと舐めてもうたやんか。」

 慌ててベルは唾を吐き出し、口を拭っている。

「…うげ!まさかこっちも毒のある花じゃないだろうな?」

 ベルとのやり取りを見ていたジンは、不安になりそれまで吸っていた花びらを口から離し、ネイに問いかける。

「勿論、ジンにそんなもの吸わせるわけないでしょう?…それは【マカツァーヴァ】と言って、強壮剤や媚薬を作る時に使うの…本当は球根にその成分が多く含まれているんだけど、さすがに人の家の庭を荒らすわけにはいかないでしょう?ふふ…」

「ふふふじゃないだろ!もう5~6本吸っちゃったじゃん!?」

 それを聞いたジンも、慌てて持っていた花びらを投げ捨てる。

「大丈夫よ。もう少ししたら体が火照ってくると思うけど、私に言ってくれれば…あら?照明が点いたようね。」

 見ると、先程美沙が襲われたと言っていた辺りが明るく照らされている。

「さ、じゃあジンがその気にならないうちに仕事を済ませて、早く帰りましょう。
ふふ♪

 ネイはそう言ってジンに艶かしい笑みを浮かべると、建物の裏へと歩みを進める。

待たんか、ネイ。お前ジンに何するつもりや!?

 ベルとジンもネイの後に続く。

   ・
   ・
   ・

「別に誰もいねぇじゃん…」

 3人は家の裏手に回り、周りを見回したが暴漢らしき者の姿は見当たらない。
 そこは庭と裏口を繋ぐ通路のようで、建物の壁には排気口があるだけで窓は無く、上方に照明と防犯カメラらしきものが設置してあるだけだった。

「表に比べると、こっちの手入れはほとんどこれからって感じだな…」

 歩く度に足に絡み付いてくる蔓を蹴るように掃いながらジンが呟いた。
 確かに森から生えてきているのか、地面を伝って建物の壁にもびっしりと蔓で覆われている。

(…さわっ…)

「あら?ジンったら、もうその気になっちゃったの?」

 ネイが色っぽい声で腰をくねらせる。

「うん?呼んだか?」

 数メートル離れた場所でジンが振り向く。

「え?今私のお尻を触らなかった?」

「いや…この距離で?」

 ネイは先程の確かな感触に、いぶかしげに辺りを見回す。

「…あ、これだったのかしら。」

 後ろの壁から垂れ下がっていた蔓をお尻で弾きながら、ネイは微笑んだ。

「全く、お前もさっきの花びら吸ってたんちゃうか…しっかりせいや!?」

 何事かと近付いてきたベルだが、原因が分かると再び辺りを捜索し始める。

(…カサッ…)

「ん!?…あそこで何か動いたで?」

 森の方を見ていたベルが、何か葉の擦れるような音を聞き、その方を指差す。

「どこだ?モンスターか!?」

 ジンとネイは身構えながらベルの指差す方向を凝視した。
…と、突然背後や足元からシュルシュルッと奇妙な音がしたかと思うと、ネイの体に蔓が巻き付いて来た!

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Humming from Pandora’s box ~005

「…お待たせしました。」

 固まった空気をものともせず、メアリーが2度目のコーヒーをテーブルに置き、そのまますぅっと消えて行った。
 勿論トレイは消えないので、見た目にはトレイが自分でゆらゆらと飛びながら給湯室へ戻って行くように見える。

   ・
   ・
   ・

「あ…あぁ。え~…と、確認させてな?
依頼内容は、美沙さん…やな?あんたを襲った暴漢を捕まえてくれって事やないんか?
…あ!暴漢は取り押さえてんけど、怖くなって逃げて来たってわけか?」

 混乱した頭を何とか働かせながら、ベルが美沙に問いかける。

「い、いえ…そうじゃないんです。え~と…確かに襲われたのは襲われたのですが…どう説明してよいやら…必要な料金はお支払い致しますので、来ていただいた方が早いかと…慌てていたので持ち合わせがないのですが、とりあえずは前金としてこれだけ…」

 そう言って美沙がサイドバッグから出した金額は、現時点で推測される仕事内容には充分なものであるように見えた。

「えぇ!?…これは前金にしちゃ…もごっ!!

 テーブルに積まれた金貨を見て、驚きの声を上げるジンの口を素早くベルが塞ぐ。

「あははは…ま…まあ、確かに見に行った方が早いかも知れんな。
襲われたばかりでまだ気が動転して、上手く言葉にできへんようやし、解決しないことには怖くてウチへも帰れへんやろしな?
 ただ、依頼内容によっちゃ、追加料金を頂くで?」

「それは勿論です。ではご案内いたしますので…」

 そう言って美沙が席を立つ。

よしゃ!行くで、ジン。

「お…おう。」

 立ち上がったジンの肩にベルがぱたぱたと飛んできて、ふわっと腰掛けた。
そこで、美沙が少々顔を曇らせ、ベルに問いかける。

「あ、あの…お二人で?」

「そやけど、何か?暴漢なら男手も必要やろ?こいつ頼りなさそうな顔してるけど、初歩の魔法ぐらいは使うし、その辺の暴漢なら充分役に立つはずやで?」

 美沙は困惑気味な顔で、ベルに手招きすると、小声で話しかける。

「あの…内容が内容なので、出来れば状況説明をするのは女性の方が…」

「それなら自分が聞いたるから大丈夫や。他に女もおるにはおるけど、シェリーもラムもまだ手が離せんし…ラムはどっちみちそういうのに向いてへんしな?」

 ベルは美沙の前でぱたぱたと飛びながら、前回の依頼主(スポンサー)の治療を続けているシェリーとラムを親指で指差した。

「そ…そうですか。…では…」

「なら、あたしが行こうか?」

 何処からともなく声がしたかと思うと、突然ジンの横に女性が現れていた。
それはメアリーの様にすぅっと現れたのではなく、正にいつの間にかそこにいたといった感じである。
 やや深い色の藤色をしたくノ一装束を纏った背の高い女性…そう、シェリーの姉である《ネイ・ラスティール》である。
細い脚はどこまでもすらっと伸び、体型はやや細めだが、そのしなやかな曲線には【成人女性の色香】を漂わせてあり余る程のメリハリがあった。

「ネイ!いるならはよ出て来んかい!おかげでウチは、またメアリーに…」

 お茶を頼んだ時には出てこなかったネイに、ベルは怒りを露にした。

「あら。くノ一が淹れたお茶を飲もうって言うの?…勇気があるのね?
丁度新しく調合した毒薬があるけど、それでも良ければ今から淹れましょうか…勿論ジンには別の薬を入れてあげるけど…」

 そう言ってネイはジンに擦り寄る。

「もうええわ。行きたいならついてきぃ!」

 ベルはそう言い放つと、ドアの方へとぱたぱた飛んで行った。
 ネイはドアを出て行くベルと美沙を静かに見つめていたが、ジンの腕に自分の腕を絡めると、猫なで声で促す。

「ベルったら、嫉妬してるのよ…さ、私達も行きましょっ!?」

「あ!お姉ちゃんが行くなら、ボクも…」

 シェリーは慌ててネイを追おうとしたが、意識を取り戻し悲痛なうめき声を上げる前回の依頼主(スポンサー)に足を止めざるを得なかった。

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Humming from Pandora’s box ~004

 女性はジンに抱きとめられたまま、一層すがるように懇願する。
それまで事務所の奥で熱心に回復魔法(ヒーリング)をかけていたラムが、垂れていた耳をぴくりと立てると女性に振り向き低く唸る。

「ラム!お客さんにそんな態度したらあかんやろ!?
…ジン、お前もいつまでお客さんを抱きしめとんねん!はよお客さんを中へ通さんかい!」

 口調はまだジンに対しての怒りが収まっていないようだが、仕事(金?)の臭いを嗅ぎつけたベルはジンへの攻撃を中断し、パタパタと応接テーブルへ向かう。

「大丈夫か?…そこのソファーへ座って。
今飲み物を出させるから…お~い、誰か!?」

 疲れ切った様子で、今にも倒れそうな女性を支えながらソファーへと移動したジンは、女性を支えるように彼女と一緒に腰を下ろすと、飲み物を頼むために事務所を見回したが、前回の依頼主(スポンサー)を治療しているラムとシェリーしか見当たらない。

「…他には…そうだ!メアリー、いるんだろメアリー!何か飲み物を出してくれないか?」

「えぇ!?…メ…メアリーがいてるんか?
また心臓に悪い登場の仕方するんちゃうやろな!?
そ…そや、ネイがいるんちゃうか?…ネイ!…ネ~イ!?」

 ジンが口にしたメアリーという名前に、ベルの表情は突然引き攣り、別の名を叫ぶ。
 ちなみにベルが呼んでいるのは、前述したシェリーの姉《ネイ・ラスティール》である。

「・・・・・ご主人様・・・お呼びですか・・・?」

「うっきゃぁ~!その出方はやめい言うたやろぉ!?」

 ベルは、背後に音もなく現れた…胸を強調するようなメイドスタイルに小さな丸眼鏡をかけた薄いピンクのセミロングの小柄な少女《メアリー》にハリセンを振り下ろす。

(スカッ…)

 ハリセンの真芯で捕らえられたはずのメアリーは微動だにしていない…が、振り下ろされたハリセンの勢いにつられたベルは、メアリーの体をすり抜け、勢いよく床に突っ伏した。
 そう、メアリーは所謂(いわゆる)幽霊であり、ベルは自分が妖精であるにもかかわらず幽霊が大の苦手なのだ。

「あら、大丈夫ですか?ベルさん…うふ♪

 透き通るほどの(実際透けているのだが)色白のメアリーは、床に転がったままあとずさるベルの方へしゃがみこむと、手を差し伸べる。

「っぎゃぁ!!お化…おばオバおば…」

「…おばさん?」

「誰がおばさんやぁ!!」

(すかっ)

 またもやベルのハリセンはメアリーをすり抜け、床の埃を舞わせるだけに終わる。

「…もういややぁ~何でこんなんがウチにおるんや?ツっこみすらでけへんやんかぁ…もうやってられへんわ…」

 ぺたりと床に座り込み、ベルは半べそ状態になってしまった。

「メアリー、お茶を淹れてくれないか?」

「あ、はい。すぐに…うふ♪

 先程ベルから受けた仕打ちの腹癒せか、ジンは彼女が玩ばれているのを一通り眺めてからメアリーにお茶を頼んだ。

「はっ!?そや、お客さんがいたんやった!」

 我に返ったベルがぱたぱたと応接テーブルへと飛ぶ。

「…で、助けてくれってどういうことや?
物取りや暴漢の類なら、街中にも兵士が見回っとるやんか?
何故わざわざこんな町外れの事務所まで…」

 女性ははだけた胸元に手をやり、呼吸を落ち着かせるとゆっくり話を始めた。

「はぁ…はぁ…え…と、何から話してよいのか…まず、私は街中ではなく、【スピリッツ・マウンテン】の麓に住む増田雅広の妻で《美沙》と申します…」

「スピリッツ?…ストーン・ゴーレムなんかを作る時に必要な鉱石が多く採れる、所謂【魂の山】っちゅうトコやな?
 しかも増田って、今話題のディジェネの科学者やないか…さっきもTVのニュースで取り上げられてたで?」

 ベルがメモ帳を取り出し、ちびた鉛筆(といっても、それすら彼女には大きすぎるのだが…)で走り書きをしながら呟く。

「ええ…夫は一日のほとんどが山へ採掘に行くか研究室にこもるかで、最近は私と顔を会わせない日もある位で…先程も私一人でしたので、町よりも近くにあるこちらへ駆け込んだ次第です…」

(ガッシャァ~ン!)

 美沙の話が途切れたと同時に奥から大きな物音がした。

「…まぁただよ。メアリー、キチンとドアを使えって言ってるじゃんか!?」

 奥の給湯室へと繋がるドアの前に、今まで何かを持っていたような体勢で立ち尽くすメアリーがいた。

「す…すみません。すぐに淹れ直してきますので。」

 幽霊であるメアリーには壁をすり抜ける能力があるのだが、メアリーの持っていたトレイはそうもいかなかったようだ…恐らく壁の向こうでコーヒーカップは無残な姿を晒しているのであろう。
 きびすを返したメアリーは、閉じたドアに向かい、すうっと消え…なかった。

(ガツッ!!)

「い痛っ!…あ、あれ?ききき…消えるの忘れてましたぁ…てへっ♪

 取り繕うように振り返ったメアリーの顔面からは鮮血が滴っている。

「幽霊が血ぃどばどば流すなや!!」

 思わず【+1ハリセン】を手に立ち上がったベルだが、唇を噛み締めハリセンを持った手をわなわなと震わせながら依頼主(スポンサー)に向き直る。
 一つも二つも抜けている彼女は、この事務所で雇われているメイドというわけではない。
以前、依頼で訪れたリドルランドの隣国にある洋館を調査している最中、廃屋のはずの屋敷内で彼女と出会ったのだが、メアリーは何故かジンを気に入ってしまい【ご主人様】と呼んで、そのまま事務所までついて(憑いて?)来てしまったのである。
 その姿で分かるように、生前はメイドをしていたらしく、どんな頼まれ事にも従順かつ献身的に働くのだが、大抵はどこかで失敗し常に生傷が絶えない…そんな彼女はいつしか皆から【ブラディー・メアリー】と呼ばれるようになった。

「だからキチンとドアを使えってば。
ほら、早く鼻血を拭いて、代わりを持ってきてくれよ?」

「は、はい…てへっ♪

 照れ隠しに肩をすくめて笑顔を作るメアリー…しかしその顔は血まみれである。

「あの…話を続けても…!?」

 一向に話を進めることのできない美沙は作り笑いで問いかけるが、額に浮かんだ血管は隠せなかった。

「あ…ああ、ゴメンゴメン。それで、一体どうしたって?」

 思うようなツっこみが出来ずに歯軋りをしているベルに代わって、ジンが聞いた。

「ええ…先程も申しましたとおり、普段は私一人でいることが多いもので、最近《ガーデニング》を始めまして、それで気を紛らわせるようにしているんです。
 今日もいつものように、お庭で雑草を取ったりお水をあげたりしていたのですが…倉庫の裏のお花にお水をあげようとしたら…」

 そこまで話すと、美沙は何かを思い出したように下を向いてしまった。

「…誰かに襲われたんやな?
よっしゃ、ウチらに任せとき!きっと犯人は捕まえたる!!
 ほなら、犯人の特徴から教えてくれんか?」

 依頼内容から儲かると判断したのか、ベルは俄然やる気を出し、美沙に詰め寄る。

「は…はぁ。え…と、突然細くて長い物が後ろから私を羽交い絞めにして…」

 鼻息を荒げているベルに気押されながらも美沙は少しずつ話を続ける。

「後ろからロープでってことは、犯人の顔を見てないっちゅうこっちゃな?…そうすると犯人探しは難航するかも知れへんな…」

 ベルが腕組みをして天井を見上げる。

「あ…いえ。犯人というか…それはまだあそこにいると思います。」

「はぁ~!?」

・・・と、ベル。

「…そ、それ?」

・・・と、ジン。

 思いもかけない美沙の言葉に、ジンとベルは顔を見合わせて固まる。

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Humming from Pandora’s box ~003

「いいか、まずは誰にも気付かれないようにラムを外へ呼び出して、回復魔法(ヒーリング)をかけさせる…そうすれば、後は何とか誤魔化せるはずだ。」

「そうだね。静かに…静かに…そ~っとね?」

 ジンとシェリーは、ベルに気付かれる前にラムの持つ回復魔法(ヒーリング)で依頼主(スポンサー)を治してしまおうと考えたようだ。

(…カラカラカラ…)

 静かに事務所のスライドドアが開き、音を立てずに二つの影が室内へと入ってきた。

「うぎゃん!?」

 突然足元から悲鳴が上がり、二つの影は慌てて外に逃げようとする。

「お?ジンとシェリーやないか、お帰り。
またラムのシッポ踏んづけたんか?」

 二つの影はビクンと硬直すると、ゆっくりと振り返った。

「…た、ただいまぁ…ラム、ごめんね?」

「きゅ~ん…シェリー、気を付けてよぉ…」

 ラムは体をくねらせて尻尾をさすり、文句を言いながら奥へと移動し、今度は人の通りそうも無いところを選んで再び眠りについた。

(バカ…お前、静かにって言ったろ!)
 ジンが小声でシェリーを責める。

「簡単な浮気調査の割には二人とも遅かったやないか…何かあったんか?」

ベルは応接セットのテーブルの上で飲んでいた紅茶の入ったコーヒーカップ型のミルクピッチャーを置き、ジン達へと視線を移す。

「ちょ、調査してたら、尾行がバレて…な?」

 ジンは口ごもりながら説明をし、シェリーに同意を求める。

「そそそ…そうそう、見つかっちゃったのはボクのせいとかそういうのじゃなくて…って言うか、すっごい光景を見たボクがびっくりして声を出したり出さなかったり…」

「…いやワケ分からんわ…ちゃんと説明せい!浮気現場は押さえられたんか!?」

 二人の態度を不信に思ったベルが少々言葉を荒げて問い詰める。

「ででで…でもでも、浮気は浮気じゃなくて…ね?ね?ジン。」

「あ、いや…そうそう、何て言うか色んな種族を集めた…人身売買って言うか…」

 二人は一層怯えながら、何とかベルの怒りを買わないような表現で事態を伝えようと言葉を探す。

「どういうことや?今回は【ノーム】の奥さんの浮気調査っちゅう、簡単な仕事だったんちゃうんか?」

「え…と、あのあの、洞窟の中で大勢の女性が監禁されていて…その、オークがお金を取って女性を…それで、奥の方で何だか変な声がし始めて、それを見たボクが声を上げちゃったら…」

「見つかって、戦闘になったんやな?」

 ベルはぼろぼろになった二人の服を見て、全てを理解したようだ。
 そうして一呼吸おくと、突然ベルは右手でこぶしを握り、やおら立ち上がる。

「よっしゃ!それならがっぽり追加料金取れるでぇ!…最初はチンケな依頼だと思うてたけど…ほんま、どんな仕事も何があるか分からへんなぁ!?」

 ベルは【子供銀行】と書かれたプラスチックで出来たそろばんを取り出すと、パチパチと鳴らし始める。彼女にとっては、そのおもちゃのそろばんですら大きく…少々もてあまし気味だ。

「…あ、いや…追加料金は難しいと思う…って言うか、元の料金も…」

 ジンが口ごもりながらベルに話しかけるが、ベルは既に【商人(あきんど)モード】に入っており、聞く耳を持っていない。

「…ほな、追加がこれ位取れるやろ?…で、戦闘があったっちゅう事は3割増しとして…あ!そうや、ジン。怪我とかはないんか?どんな小さな傷でも一応治療費は請求しとかなあかんからな?」

「…お、俺は大して怪我してないけど…い、一番重傷なのは・・・」

 ジンは背後に何かを隠したまま、そろそろと逃げるように出口へと後ずさる。

「そか。後は…うん?そういや依頼主(スポンサー)も浮気現場を押さえたい言うて、一緒に行ったんやなかったか?
…ん?どこ行くねん…ってか、さっきから後ろに背負ってるのは何や?」

 そのセリフにジンは今までにもまして、まるで石化の呪文をかけられたように身を硬直させた。

「コ…コレハ…」

 顔面も蒼白し、声も上ずっている。

「あ~ん?…さっきから何をコソコソしとんねん!その背中のもん見せてみぃ!!」

 ジンとシェリーは顔を見合わせ、互いに泣きそうな顔で小さく頷くと、二人でジンの背中に背負っていたモノをそっとソファーへと下ろす。

「ん?…何やコレ…ん~…こらまた不思議な動物を捕まえてきたな~…って、こら依頼主(スポンサー)やないかい!!
お前ら何しとったんや!いくら予想外の戦闘があっても、依頼主(スポンサー)はキチンと守ったらんかい!」

「きゃあ!ごめんなさいぃ!」

 二人は頭を抱え、その場にうずくまる。

「それにこんな状態なら、ぐずぐずせんと治療せなあかんやろ!全くほんまにアホやな!
ラム…ラム!ちょっと来てぇな!悪いけど急いで回復魔法(ヒーリング)したってくれんか?」

 自分を呼ぶ声にぴくりと反応したラムは大きなあくびをすると、ゆっくりと立ち上がった。

「はぁ~ぁふぅ…やっとごはん?」

「…んどんな耳しとんじゃい!
全くどいつもこいつも…ほらシェリー。会議テーブルに毛布を敷いて!ジンは依頼主(スポンサー)をそこへ運ぶ!…ほなラム、頼んだで!?」

 ジンとシェリーは弾かれたようにベルに言われた通りの行動を始める。
 やがて依頼主(スポンサー)がテーブルに寝かされると、それを寝ぼけ眼のラムが覗き込む。

「ラム、人間は食べられないよ~…生だし、それにまだ生きてるみたい…」

「ご飯ちゃう言うてるやろ!! 螺旋昇(スパイラルアッパー)!!」

 応接テーブルから飛び降りたベルは床ギリギリの所で透明な羽根をぶるんと唸らせると一転して上昇を始め、くるくると回転しながら加速をつけ、ジンのみぞおちを目掛けて勢い良く飛び込んだ。

「ぐはぁっ!?何で俺が…」

「一番近くに立ってるからや…って言うかこの始末どうつけてくれんねん!?
折角の収入をフイにしてもうて、このままやと今月はもうやって行けへんで!?」

 うずくまったジンのやや上を、仁王立ちの状態でぱたぱたとベルが飛んでいる。

「うぐぅ…今回は簡単な仕事だって言ったのはベルじゃんか…なのにあんな事になって…」

「んなに言ってんねん!?どんな仕事も何があるか分からへん。せやから、いつも手ぇ抜かずに気張らんとあかんやろ!」

「えぇ~!?言ってる事が最初とちが…」

 文句を言いかけたジンだが【+1ハリセン】を構えたベルに気付き、凍りつく。
 通常のハリセンとは異なり、魔力が封じ込められているそれは、音が半分で威力が2倍という、通常の芸人なら決して使う事の無い代物である。

「ちょっちょっちょっ…ちょっと待っ…シェリー!ラム!何とか言ってくれよ!」

 助けを求め振り返ったジンだが、彼女らは矛先がジンに集中したのをいいことに、依頼主(スポンサー)の治療に専念している。

「汚ねぇ!何いい子ちゃんになってるんだよ!?…シェリー。お前は回復魔法(ヒーリング)なんか出来ないじゃんか!?」

「ななな…何言ってるの、ジン!話をこっちに振らないでよ!?
それに、ボクは傷口の洗浄や包帯を巻いたりしてるんだから!」

 矛先が自分に向けられるのを恐れ、慌ててシェリーはガーゼを見せて自分が手を離せないことをアピールする。
 舌打ちをしてジンが振り返ると、そこには自分の体の倍はあろうかというハリセンを振りかぶったベルがいた。

「う…うわぁっ!!」

 ジンはアメコミのキャラクターのように、その場で床を数回掻くと勢い良く出口のドアへと駆け出した。

(ガラッ…ドサッ)

 事務所から逃げ出そうとドアを開けたジンの体に何かがぶつかってくる。

「うわっ!?…な、なん…お、おん…な?」

 丁度ドアで鉢合わせの状態になったジンは、思わずその女性を抱きとめていた。
 彼女は、長く艶のある黒髪を荒く束ねたポニーテールをしていたがその髪も一層乱れ、何よりも衣服が汚れ所々が破かれて衣服はその用途を成していない。

「た…助けてください!」

 女性はジンに抱きとめられたまま目の前の男にすがりついた・・・

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Humming from Pandora’s box ~002

時は少々進み、ここは日本のK市と、剣と魔法の世界【リドルランド】を結ぶ時空ゲートのリドルランド側に建つ、木造平屋建ての一室である。
 そこは事務所のようになっており、数台のデスクや椅子…壁際には無数のファイルが並べられている棚がある。
 出入り口付近には、かつては高級の部類に入ったであろう…今ではボロとしか言いようのない応接セットがあり、そこから見やすい位置には、これも少々年代物ではあるが…以前、依頼で日本へ行った帰りに購入した、中古のテレビデオが置いてある。
 本来リドルランドは【電気】ではなく、【魔法】を生活基盤としているのだが、時空ゲートから程近いこの事務所に限っては、時空が繋がった当時、ゲートの警備に貢献していた功績もあり、特別にゲートから電気を引くことを許されているのだ。
 そして今、そのTVからは日本側から引かれたケーブルテレビによって、ニュースが流れている。

<…大学の地質学者である増田助教授は、リドルランドで発見した鉱石を持ち帰り研究を重ねた結果、ある加工をしてマウスに与えると脳や筋肉に様々な変化をもたらすことを発見しました。また、この鉱石自体がまるで意思を持ったような変化をすることも発見され、これにより…>

「全くディジェネは研究熱心やなぁ…魔法を科学で解明しようっちゅーんやから…きっとあれやろ?その鉱石っちゅうのは、ストーン・ゴーレムやゾンビを作る時の石やろ?
 しまいにはディジェネも合成獣(キメラ)でも作るんちゃうか……あ!!

 独り言のようにテレビに向かい話しかけていたのは《ベルモット》…普段はベルと呼ばれている彼女の身長はおよそ30センチ程度しかない。
 彼女は妖精の一種だと思われるが、日本は勿論、リドルランドでも見られない種族で、背中から透き通ったトンボの様な羽が生えている。
 その彼女がはっと思い出したように両手で口を押さえバツ悪そうに振り向いた先には、ノースリーブのシャツにミニスカートを穿いた、金色のふさふさの毛皮を持つ【犬】がいた。

「ごめんな、ラム。そんなつもりちゃうねんけど…テレビ見てたら、つい…」

 ベルが話しかけている、《ラム》と呼ばれた犬…いや、正確には犬ではなく犬とエルフの合成獣(キメラ)は、ベルの声に気付き顔を上げた。

「くうん…なに?ベル。…ごはん?」

 そう言ってラムはまるで犬のような両手を床に押し付けると、大きく背中をそり返して伸びをした。

「あ…あは…いや、何でもないねん。聞いてへんかったらいいのや。」

 ベルは小さな手をパタパタと、これまた小さな顔の前で振る。

「そう?ご飯の時間になったら起こしてね?…はふぅ…おやすみ(mー_ー)m.。o○ zZZZ」

 ラムはそう言うと、再び体を丸めて入り口前に敷かれたふかふかの足拭き用マットの上に丸まった。

(ラム…ほんま、かんにんな?)

 再び静かな吐息を立て始めたラムの金色に輝く艶のある毛並みを見つめ、声にならないくらい小さな声で呟いたベルは視線を遠く窓の外へと移す…

   ・
   ・
   ・

 ラム=バリオン…彼女は生まれつきこのような半分犬で半分人間のような奇異な姿ではなかった…
 まだこの事務所をジンとベルの二人で営んでいた頃、リドルの森の奥深くに住むダークエルフの夫婦が依頼に訪れた。
 それがラムの両親である。
夫妻はダークエルフの森でも位の高い地位におり、魔力の強いダークエルフ族でも群を抜く魔力を代々持ち備えていた。

「どうか私達の娘を取り戻してください。」

 夫婦はジンにすがりつき懇願した…そう、強い魔力を持ちながら、まだそれを開花させていない彼らの娘が、当時【魔王】と呼ばれリドルを賑せていた《ミスティー》に誘拐されたというのだ。
 詳細は長くなるので別の機会にさせて頂くが、ジンたちの捜索は間一髪間に合わず、ミスティーの実験材料にされてしまった気高いダークエルフ族の娘は、無残にもゴールデンレトリバーとの合成獣(キメラ)にされてしまったのだ。
 その後、何とかラムを連れ戻したジン達だったが、変わり果てた姿を見た両親は怒り、悩み、涙した…その結果、己の立場を優先させた両親はダークエルフの森へ娘を連れ帰る事はなかった。

   ・
   ・
   ・

 ベルは視線をラムへ戻すと、事務所の入り口のドアから漏れる暖かな光に包まれて幸せそうに寝息を立てているラムを、いつまでも見つめていた。

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つぶやき ~002

何かの縁でこちらへいらして頂いた方、ありがとうございます<(_ _)>

この小説(と言うには稚拙な内容ですが)、結構長いので…もしちょっぴりでも興味をもたれた方がいましたら、どうか暇つぶしにでもゆっくりとお付き合い願います^^;

ちなみにここでのID名【ラムバリオン】も、この小説の中の登場人物から付けた名前で、意味は「乱痴気騒ぎ」という…ラム酒の語源になった言葉のようです(間違ってたらすみません(;^_^A アセアセ

P.S. 言い忘れていましたが、この小説…ところどころに多少hな表現が出てくるかもしれません。まぁ、ジャンルをアダルトにする程ではないと思うのですが(hをメインに書いたワケではないですし)、良い子はその部分は読み飛ばして下さい><
ま・・・万一指摘や指導があればジャンルを変えなくてはならなくなるかも知れませんが^^;


 それでは、ごゆっくり続きをお楽しみください<(_ _)>
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Humming from Pandora’s box ~001~

(グリッ…)

 真紅(あか)く燃えた瞳が獲物を捕らえる…それには既に理性や、まして知性などは微塵も感じられず、正に【オーク】の本性を剥き出しにしている。
 赤茶けた筋肉質の巨体がホール状になっている洞窟内でよろめきながらゆっくりと立ち上がる…2mをゆうに越すであろう、その巨体が獲物目掛け突進する。

「やっべぇ!本気にさせちゃった?」

 オークと対峙した、年齢に比べ少々小柄な少年は、名を《ジン・ジュニパー》と言い、赤みがかった髪はあまり手入れをしていないのか、ボサボサに逆立っており、その体格に似合わぬ大きな剣を背中の鞘に戻しながら、後悔の表情を浮かべる。

「あ~あ…今回の仕事は楽だって言ってたのに…ベルの嘘つき!
 って言っててもしょうがないか…よ~し、スペルチップ【炎(ファイア)】!インストール!!」

 そう叫んだジンは、懐から取り出した小さなチップを左腕のブレスレットにあるスロットに差し込む…すると今まで透明だったリングが赤く輝いた。

「行っけぇ!炎掌(パーム・ボム)!!」

 ジンの左手のひらに30センチ程の球状をした炎が生まれる…そして彼は向かってくるオークの懐に飛び込むとそれを叩きつけた。

(ヴォムッ!)

 球状の炎がオークの体に接した瞬間、それは轟音と共に破裂する。
 ジンはそのまま動きを止めず、流れるような動作で再び背中の剣を抜き、それを振り下ろす。
 爆発に一瞬ひるんだオークだったが、ダメージは小さく、振り下ろされた剣も手のひらで受け止められてしまった。

「マジかよ!?キレる前とは大違いじゃん。
剣も炎掌(パーム・ボム)も効かないとなると、もうこれ以上の攻撃魔法は…う、うわっ!?」
「グルルルワァァ・・・」

 巨体は地響きのような雄叫びを上げ、眼前の男目掛け丸太のような腕を振り下ろす。

(ドガッ!!)

 濛々と立ち込めた砂埃は視界を遮り、戦闘中の二人を覆う。

「ジン、大丈夫ぅ!?…援護するよ!!」

 そう叫んで岩陰から勢い良く飛び出した細身の影は《シェリー》…やや幼さの残る少々ボーイッシュな少女は、明るいブルーのショート・ヘアを揺らし、立ち込める土煙の手前に音も無く着地した。
 首にかけられた細いチェーンの先には、淡い光を放つ青い石が揺れている。
その出で立ちは、本人はくノ一をイメージしているようだが、むしろ日本の祭りなどで良く見かけるもののように思える。
少々胸元が開いた袖の無い着物で、下半身には黒のぴったりとした膝上までのパンツを履き、手には一応手甲らしき物を着けている。

「ボクだってお姉ちゃんみたいに強くなるんだモン!
…ジン、伏せててね!?…石礫繚乱(ロックストーム)!!」

 それは、リドルランド屈指のくノ一【紫薔薇(パープル・ローズ)】の異名をとった彼女の姉の技苦無繚乱(ローズストーム)を模倣したものであったが、まるで癇癪を起こした駄々っ子が手当たり次第石を投げているようにしか見えない。

(ボゴッ!)
「ぐぎゃっ!」

 立ち込める砂埃でよく見えないが、シェリーは自分の放った技(?)がヒットした感触を得た…が、その断末魔の声は彼女に聞き覚えのあるものであった。

「え?…ま、まさか…ジン?…ねえ、ジン!?」

 シェリーはいまだ収まらぬ砂埃に目を細め呼びかけるが、返事は無い…代わりに怒りに満ちたモンスターの唸り声が響く。

「グルワァァァ!!」

 身の危険を感じたシェリーが咄嗟に身構える…と、突然砂埃の中で何かが燃えるように赤々とした光が揺らぐ。
 オークの攻撃かと思い、シェリーはいつでも跳べるように前傾姿勢をとり、両足の親指に重心を込める。

「グォ…グゴァァァ~…」

 何故かオークの悲鳴が聞こえる。
シェリーは身構えながら砂埃が納まるのを待った。
 やがて視界が開けてくると、仰向けに倒れ炎に包まれて動かなくなったオーク、そしてその手前には後頭部にひと目でそれと分かる程のコブを腫らせてうつぶせに倒れているジンが見えた。

「ジン!大丈夫?…ジン!!」
「う…ん…シェ、シェリー?はっ!?…オークは?」

 シェリーの膝の上で揺り動かされ、虚ろに瞳を開いたジンだが、すぐに戦闘中だった事を思い出す。

「大丈夫…ほら!」
「そうか…サンキュ!シェリー…助かった。」

 ほとんど炭となったオークに一瞥を向けたジンは、安堵の表情で振り返るとシェリーに礼を言う。

「え!?ジンの魔法で倒したんじゃないの?」
「えぇ!?だって俺は突然後頭部を攻撃されてそのまま気を失って…そうだ!背後から攻撃されたってことは、まだ他にも敵が!?」

 すかさず立ち上がり、周囲に注意を向けるジン…それをシェリーが慌てて止める。

「あ!あのあのあの…もう大丈夫だと思うよ?え…と、その…逃げて行ったから…」

 さすがに彼女も、アレが自分の放った物だとは言えなかった。

「そうか…それなら良かった。…あ痛ぅ…やっぱり頭が痛てぇ…けど、そうすると誰がオークを倒したんだ?」

 緊張を解いたジンは、痛みがよみがえったのか、思い出したように後頭部をさする。

(ズキュ~~ン!!)

 突然、岩陰から銃声が聞こえる。

「ジン!危ない!! 銃弾白刃取りぃ!!!!!」

 銃声も鳴り止まぬ内に、ジンの背後に跳んだシェリーが眉間の前で両手を合わせている。
 彼女の手の間からはぶすぶすと少量の煙が上がっていた。

「まだ仲間がいたの? …よ~し!」

 銃弾が発せられたであろう場所から、人の形をした影が慌てた様子で踵を返して洞窟の奥へと消えて行くのが見える。
シェリーが影を追って再び跳ぼうとするが、ジンが呼び止める。

「もう間に合わないって…深追いはしない方がいい。」
「だけどジン…ボクの足なら、きっとまだ間に合うよ!?
 …きっとあいつがボスだよ!?」

 跳ぶ体制のまま、顔だけをジンに向けて、シェリーがもどかしそうに言うが、ジンは瞳を閉じゆっくりと首を数回振った。
しかしその行為で頭の痛みを思い出し、後頭部をさすりながら彼女を諭す。

「痛てて…確かにあいつが黒幕だと思うが、もうとっくに依頼の範疇を超えてる…
 拳銃を持ってるって事は、ありゃあきっとディジェネの奴だな…全く異世界とリドルが繋がって、互いに新たな文化の交流が生まれたのはいいが、犯罪までは持ち込んで欲しくないよな?
…しっかし、【銃弾白刃取り】て…無茶なワザ使うなよ。」

「てへへ…だってボク、お姉ちゃんみたいに強いくノ一になりたいんだもん!
それよりジン…怪我は大丈夫?」

 戦闘態勢を解いたシェリーがジンに駈け寄り、後頭部をさする。

「あぁ…この位ならどうってことない。
 けど、あいつがディジェネだとすると、恐らく魔法は使えねぇだろうし…とすると、オークを倒したのは奴以外にいるって事か?」

 それを聞きながら、シェリーは少し考えると、ジンの体を起こしながら言う。

「オークが燃えたってことは、炎系の魔法でしょう?
ボクは魔法自体ほとんど使えないし、本当にジンじゃないの?」

 ジンは腕を組み、先程の戦闘を頭の中で思い返す…が、戦闘中に気絶した彼には当然、自分が倒したとの結論には至るはずもない。
しかし状況から見ても他の可能性もまた限りなく低かった。

「ん~…けどここには敵以外は俺とシェリーしかいなかったんだし、さっきの奴って可能性も無いだろうからな。
…やっぱり俺の炎掌(パーム・ボム)が後から効いたのかな…うん。」
「そ、そうだね。どっちにしろ仕事は済んだんだから、早く帰ろうよ。」

 炎掌(パーム・ボム)は火種を相手に接触させ、大きな爆発を生み出す魔法で、「燃える」というよりはダイナマイトのように「爆発・破壊する」魔法であり、先程のように燃やすという効果は低い…それは二人とも知っていたのだが、それ以外の可能性を見出すことは二人にはできなかった。

「そ、そうだな。こんな所、早く出よう…って、依頼主(スポンサー)は?」
「あ…あれ?戦闘が始まった時にはボクの後ろに隠れてたんだけど…」

 二人はきょろきょろと辺りを見回すが、先程炭になったばかりのオークや、それ以前の戦闘で倒した無数の敵が転がるばかりで、目的の人物は見当たらない。

「ん?…ま、まさか…コレ…」

 ジンが折り重なって倒れている敵の下敷きになっている【何か】を見つけた。

「え?…何ソレ…って、ま…まさか…きゃあ!?アレクさん!

 どうやらジンの見つけた【何か】が、依頼主(スポンサー)である《アレク》であったようだ。
 しかしソレは、ノームという種族にしてもあまりに血の気が無く、関節は通常ではあり得ない方向に曲がっていた。

「シェ~リ~!俺が戦ってる間、依頼主(スポンサー)を見てろって言ったろ!?」
「だ…だって、敵が多すぎてボクだって大変だったんだよぉ!?」

 二人は額を擦り付けんばかりに怒りを露にして互いを責め合う。

「だったらこっちに敵が回らないように、全部相手にしててよ!!」
「ナニ無茶言ってんだ!こっちで手に負えない一匹や二匹はそっちで何とかしろよ!」

     ・
     ・
     ・

 二人がアレクにまだ微かだが息があるのに気付くのは数分後であった…

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つぶやき~001

偶然ここへいらしていただいた方…ありがとうございますペコリ(o_ _)o))

私が以前書いた小説を何らかの形で発表してみたくなり…ついブログでアップしてしまいました(〃∇〃) てれっ☆

改めて自分でタイトルとプロローグを読み返してみると、何だかシリアスなイメージになっていますが、私としては「呼んでて笑える小説」を目標に書いてみた作品(作品と言うほどではないか^^;)なのです。
また、世界観も【私が今まで読んだ漫画や小説など】を参考にした、あくまで独自の世界観で作成していますので、D&Dなどの決まりなどを持ち出されても困ってしまうのでご了承を(;^_^A

今後も、遅くとも週に1回以上は更新して行きたいと思っていますので、偶然ここへ立ち寄って…私の稚拙な物語で「くすっ♪」っとでも笑って頂けたら嬉しいです。

コメントもお気軽に残して行ってくださいね♪
特に感想を残していただけると小躍りして喜びます。…ただ、私は小説家でもなんでもないので、あまり辛辣なツッコミをされると、号泣しながら更新を辞めてしまうかもしれませんので…お手柔らかに^^;
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Humming from Pandora’s box ~序章

                  ~ プロローグ ~

 街は眠り、影となった民家の上方に赤く大きく燃える満月が揺らいでいる…
 建設残土が小高く盛られた丘の上で突如として音もなく生まれた光の玉は、みるみるうちに膨れ上がったかと思うと、発生と同様に瞬く間に消滅していった。
 虫達は短い寿命を全うすべく再び鳴き始め、何事もなかったかのように月明かりが丘を照らしていたが、そこにはつい先程までは存在していなかったはずの時空の狭間がぽっかりと口を開けていた。
「ギギィ!…ギャ~ギャ~!!」
 昨日までは我々の想像の中にしか存在しなかった爬虫類のような肌の人間や口が耳まで裂けた小人達が我先にと時空の狭間からなだれ込む。
 様々な形の妖しく蠢く影は、裂けた口から滴る唾液を拭おうともせず、鼻をヒクつかせ、獲物の臭いを探している…そして月明かりに照らされて赤く燃える瞳に、あまりに残酷な笑みを浮かべる…
(パリンッ!!)
 無遠慮に割られた窓ガラス…その音に飛び起きて素振り用の7番アイアンを片手にリビングへ降りてゆく男性…そこにいたのが強盗の類なら、まだ救いがあったのかも知れない。
 その家族が日常生活において一度でも【死】を意識した事があっただろうか…日曜のコンペを予定していた夫、パート先の上司に気に入られようと最近化粧を濃くした妻、つい今しがたメールで約束した放課後のカラオケ…だれもが、まさか明日が来ないなど、微塵も思わなかったであろう。
 際限なく続く殺戮…それを見下ろし、鉄塔を繋ぐ電線に腰掛けたハーピーが、一層赤く燃える満月を背に絶望の歌を唄い続ける…
   ★ ★ ★
 この物語は、後に【異次元戦争】と呼ばれたこの事件から更に数年後…戦争に終止符が打たれ、我々の科学の世界と【リドルランド】と呼ばれる魔法の世界に交流がもたれる様になってからの話である…

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